東京医科歯科大学・研究実践プログラム・AIシステム医科学分野

東京医科歯科大学医学部医学科にある「研究実践プログラム」は、大学院生に準じた教育や研究指導を学部生の頃から受けられる制度です。2022年に新設された当分野は2023年度から参画しています。「世界に通用する医学者の卵を養成する」をキーワードに、学生教育に非常に力を入れており、君たちの熱意に応じて学部生のうちに筆頭著者として国際学術誌に論文を複数発表することを目指した指導を行います。

事実、(他大学の学生に対するオンライン研究で) 論文発表した人もいます (感想文はこちら)。本学の学生さんは物理的に用意にラボに来ることができるわけですから、より有利であることは間違いありません。現在所属している学部生にも、筆頭演者として学会発表した人や、国際学術誌に論文発表予定の方が複数います。ほんの一例を挙げれば、

  • 医学科新5年の青葉さんはすでに共著の学術論文を国際学術誌に投稿しています
  • 医学科新5年の伊東さんは筆頭著者論文を国際学術誌に投稿間近ですし、すでに全国規模の1万人近い人達が参加する学会で筆頭演者として発表しました

みなさんが所属している部活/サークルはたくさんの人が所属しているけど実際に熱心に活動しているのはそのごく一部ということはありませんか? 当然ながら活動しないと上達もないですよね。

研究も近いものがあり、単にラボに所属しているだけでは何も成果はでないでしょう。しかし君たちの熱意に応じてこちらはいくらでもサポートする用意があるので、そういう人は学部生でありながら得られるものが青天井でしょう。大学院に準じた経験ができるということは、裏を返せば大学院生に準じて取り組む必要があるという意味でもあります。学部の授業やテスト、それにサークル活動やアルバイト等を行いながら大学院生に準じた研究活動というのは並のバイタリティーの人にはできません。大学院生に準じて本気で研究に打ち込みたい方を募集します。

当分野のプログラムのもう1つの特徴はこのページの中ほどに記載している「グランドマスター制度」で、50もの多様なスキル習得を支援しており、医学はもちろん、生命科学にも数理情報科学にも精通することができます。私たちの研究室はM&Dデータ科学センターにあり、理論やコンピューター解析がメインであるのは間違いないのですが、実験もできます (し、清水は実験系の基礎医学領域でも筆頭著者として複数の学術論文を発表しています)。

なお、医学科5年6年生には月10万円の奨励金を支給して研究者を本気で目指していただくコースである「研究者養成コース」で当分野に所属していただくこともできますし、これらの制度以外にも随時本学の学部生 (所属学科と学年は問わない) を受け入れしています。また、他大学の学生さんにはオンライン研究制度を用意しています。

以下「研究実践プログラム」の詳細です。

私たちの強み

広い意味でのデータサイエンスをやっている先生は何人もいらっしゃいますが、清水は多くの先生と異なりみなさんとバックグランドが同じであり、またバイオ実験系の研究実績、海外での研究経験もあります。かつ医学よりも前から情報科学に触れており数々の賞もいただいてきました。このように医学・生命科学・情報科学のトリプルメジャーである先生は日本国内にはほぼいらっしゃいません。他の先生方と比べみなさんと比較的年が近いこともあり、国際的な視座も含め多様な見地からより広範な学びを提供できるでしょう。

私たちは医療・バイオ・データ科学の融合分野を研究しています。AI創薬や数理/物理モデル・分子生物学といった基礎的な研究から、がん・感染症・生活習慣病・免疫疾患など幅広い疾患の研究まで手掛けていますし、いずれも海外の専門家集団による厳しい査読に合格して論文発表をしておりますので、科学的妥当性を満たしそれぞれの領域における新たな1ページを切り開いてきました。これはそのまま強みにもなり、清水研に所属することで1年次の延長である教養科目・基礎医学・臨床医学・データサイエンスの多様な領域を学ぶことができるということです。「耳学問」という言葉はご存知ですよね。たくさんのトピックスに見聞きするからこそ、本学を卒業後に専門分野が決まった時に、他の医師にはない独自の視点が築けるのです。私たちの分野はデータ科学センターにありますが、データ科学はもちろんのことそれだけにとどまらない広範な武器を授けたい、そう考えています。

清水は自分自身が学部生だった頃に筆頭著者として論文発表 (Shimizu H. et al., 2011) させていただいたり他にもさまざまな学びの機会があった (学部生時代のエピソードはこちら)ため、学部生時代における研究教育の重要性を誰よりも深く理解しており、これまでもBiomedical Data Science Clubオンライン研究指導、あるいはAI実践道場U-Net、医療AI夏の学校等を通じて医科歯科大学だけでなく多様な学部生らに教育をしてきましたし、他大学の医学生に筆頭著者として論文発表をさせたことも複数あります。研究実践プログラムはオフラインも併用できるので、さらに大きな学びがあるでしょう。

私達は教育を非常に重視しています。全くの知識ゼロからでも構いませんし、5月および11月開講の事前勉強会入門編を用意していますのでみんなで一緒に基礎から学ぶことができます。

先輩の声

とても熱心に研究に取り組んだ先輩が感想文を書いてくれました。ご本人のご厚意に甘えて原文のままご紹介します。

この1年間を振り返っての感想文を書くにあたって2023年度を思い返してみると、実に多くのことがありながらもあっという間に過ぎたというのが率直な感想です。そして清水研での活動がその中心と言っても過言ではないほど多くのことをラボで勉強・経験させていただきました。

4月になるとそれまで1人で学ぶことが主だったのが、1期生の方々とラボ内の勉強会やJournal Clubで一緒に勉強するようになりました。皆で何時間も教え合っても読めているのかよくわからないような状態だった初回のJournal Clubの準備会と比べるとこの1年間で随分と多分野の論文読解力が身に付いたと感じます。平均して毎週2回の勉強会は大変ながらも大学院生の方々と何とかコンプリートし、バイオロジーや実験のプロトコルなどの生命科学から数学、情報学、機械学習の深い理論など多彩な分野に触れることが出来ました。来年度は今年学んだ内容を必要に応じて復習しつつ2年次の勉強会も引き続き参加しながら、自分が幹事を務める学部生の勉強会も頑張っていきたいと思います。

そして5月末からのプロジェクトセメスターが始まると勉強会に加えて研究も本格的に行っていくこととなりました。目の前の作業・実験に没頭するだけでなく行っている研究はどのようなインパクトがあるのか・あるべきなのかを考えることや、それを適切にアピールするための発表の仕方・論文の書き方に試行錯誤しながらも、それらについての手厚いご指導のおかげで12月の分子生物学会での発表も無事行うことが出来、基本的なサイエンスのリテラシーを身に着けながら研究を進めることが出来たと感じています。来年度は今行っている研究の成果をより形にしながら新しいテーマやウェット実験等に挑戦していきます。

清水先生をはじめとするスタッフの方々や大学院生には勉強会や研究をはじめとしてそれ以外の部分でも非常にお世話になりました。清水研の皆さんとの交流があったからこそ清水研の一番ハードな時期や学部との両立が難しい時期も続けられたと思っています。来年度は2期生の方々や他の学部生にとって自分がその様な存在になれる様心がけていきます。

清水研は研究を軸としながらもそれ以外にも非常に多くのことが勉強でき身に付くあまり他にないであろう環境だと思います。本文を寄せるにあたり、清水研での今後も楽しみつつ自分がよりよい場所に出来る様尽力することを決意するに至りました。

受け入れにあたって注意事項 (必ずお読みください)

研究実践プログラムは正規の授業や実習ではなく、あくまで課外活動として学生さんが主体的に研究活動に加わる制度になっております。機械学習に関するコーディングや理論、バイオインフォマティクスなどに関する週に1回程度の学部生のためだけのAI実践道場U-Net (先輩がtutorをしますから、みなさんも1年後にはぜひ指導側になってください)、学生さんのためだけのオンライン論文輪読会Biomedical Data Science Clubは提供しますが、それ以外の研究実践プログラムの学生のためだけの特別なものはございません 。過去の学生さんからは「なぜ医学生がAIを学ぶのか事例を事あるごとに出してモチベーションを維持してほしい」「部活やバイトなどがあるのでそれらが終わった夜11時以降にレクチャーをしてほしい」等々の要望をいただきましたが、我々が個別のご要望に合わせることはできません。授業は受け身のものが多いですが、研究実践プログラムは君たちの主体性とリーダーシップが求められるということです。みなさんの先輩にも、プログラムをとっていないけど試験をうまくやりくりして毎日のように来て学会発表・論文発表をしている先輩も複数います。我々は情熱のある学生さんにはさまざまな機会を提供しますしどこまででも指導を行いますが、そうではない学生さんに提供してあげられるものは申し訳ございませんがありません。この点をご理解いただいた上でお問い合わせください。

よくある質問

基本的には個人で取り組む時間が多いとは思いますが、週に1回程度を目処に機械学習のコーディングや理論、バイオインフォマティクスを勉強する学部生のためだけの勉強会を対面で開催予定です。講師は上級生で、一緒にいろいろ学ぶチャンスです。

これまでのご経験は不問ですし、現在は10名以上の学生が所属しています。本気で取り組みたい方には、様々な教育もしています。このページの下部にある「スケジュール」もご覧ください。

研究実践プログラムでなくても研究室に通うことができます。研究実践プログラムをとる場合ととらない場合で、当研究室での違いはありません。研究実践プログラムは医学部医学科のみの制度ですが、それ以外の学科の学生さんも同じように教育研究の機会を提供しているので。

研究実践プログラムをとることのメリットは、研究室外にあると承知しています。つまり、プログラムをとっている学生さんたち (同級生も先輩も) が集まり進捗発表会などがあったりして、いろいろなフィードバックや縦横のつながりが得られるわけです。

研究は「しなければならない」ものではありません、本来は「したくてたまらない」から研究をするものです。ですので当研究室では学生さんの自主的な活動に全ておまかせしています。大学生にバイトやサークルより「研究部」をオススメする理由に書いたように、私は本気で取り組んだらどうかと思っていますが、課外活動を強制するつもりはありません。今の研究実践プログラム参加者の中には、かなり入り浸っている方もいますが、逆に最初の挨拶1回しか来ていない方もいます。

私達は熱意のある方にはどこまででもさまざまなものを提供する用意がありますし、実際、論文発表した、本を書いた、学会発表した、プロセメ発表会で賞をとったなど複数の先輩がいろいろ活躍していますが、逆にラボに来ない人にはマンパワーの関係で残念ながら何もしてあげることがございません。

「毎週〇〇曜日に来なさい」などというラボと違って「いつ来ても良い」わけですので本気で取り組みたい方には柔軟性がかなり高いです。

ただ、もし研究をしたいということであればしっかりと論文を読まなければいけません。そのための基礎体力づくりをするために隔週の金曜日17:30から行われているBiomedical Data Science Club、または隔週の月曜日16時から行われているJournal Club、または隔週の金曜日で時間はその都度調整しているpre-JCの少なくともいずれかへの主体的かつ継続的な参加を求めます。これらのいずれかに継続して参加する熱意と時間を捻出できる学生でないと、研究で何か形を残すというのは難しいです。隔週のイベントですし、BDSCやJCはzoom開催ですし、pre-JCは日程調整もできます。私達はやる気に満ち溢れる春先だけでなく継続的に熱意のある方に絞ってどこのラボよりも濃密な研究の機会を提供したいと考えておりますのでご理解ください。清水研に定着して研究をしている人達に限れば、学部生で学会発表・論文発表はみんな当たり前のようにできています。

研究室の活動はもちろん研究がメインですが、さまざまな勉強会があります。

例えば金曜日の午後にはpre-JC, 月曜日の16時にはJCといった論文輪読会がありますし、それだけでものたりない方はラボ内の大学院生向けの勉強会にご参加いただくこともできます。

例えば週1回、1回2時間だと、1年で100時間ほどになりますが、これは1日10時間研究をしている大学院生だとわずか10日分にしかなりません。10日で論文は難しいのは理解できますね。

筆頭著者として論文を書きたいということですと、2000時間くらいかかると見込んでください。例えば、週10時間だと4年かかります。それでも、例えば君たちが受験生だった頃は1日10時間、週6という生活を1年だとして3000時間受験勉強をしているわけですが、それより少ないです。研究という全く違うことにゼロから挑戦したいなら、大学生にバイトやサークルより「研究部」をオススメする理由にも書きましたが、「研究」というように部活に準じて取り組む必要があるでしょう。だからこそ希少価値があり卒業後に他の医師と大きな差別化ができる力と実績が身につくわけです。

ちなみに、実験がメインの研究だと少なくともこの倍はかかるでしょう。実際、ある程度定評のある学術雑誌に発表するには、基礎医学系の大学院生がゼロからスタートしておよそ5年かかると言われています (時間にして1万時間ほど)。

できますが、大腸菌にせよ細胞にせよ生き物が相手ですから時間がかかります。うちの研究室で、実験をしたいという学生は少なくも週5で取り組む必要があります。例えば週3とか週1とかしか来れないのに実験もして筆頭著者として論文を書きたいというのであれば他のラボを探してください。おそらくそのようなちょっとした実験しないのに筆頭著者でというのはどこのラボでも無理だと思いますが。

論文は一生 (いや後世にも) 残りますし、ほんの少しでも医学・生命科学の進展につながるわけですからとてつもなくすごいことです。

メリットとしては、学術研究をする課程でテーマを設定、先行研究を批判的に読む、ロジカル思考、研究に必要なもろもろの修得、英語論文執筆経験など、多様なスキルが身につきます。一言でいうと、この先どこに行っても役立つポータブルスキルを自分にインストールできるということでしょう。論文発表を目指す過程でたくさんの学会や研究会での発表を経験しますので、他大学の研究者・学生ともネットワークが構築できるという点も大きなメリットです。人のつながり、とても大事ですよ。

また、実際にはお金では買えないことの方が遥かに大きいですが経済的なことも書いておきます。学部生時代に論文を筆頭著者として書いていると、例えばどこかの大学院に入るときに給付型のお金を取りやすくなります。最近は博士課程の大学院生を支援する制度がたくさんありますが、もちろん全員に配るほどの余裕はないので、選考があります。例えば国の学術振興会特別研究員は優秀な博士課程大学院生に月20万円を3年にわたって支給するする制度ですが、学部生時代に筆頭著者論文を持っているとかなり高い確率で採択されます。それだけで720万円支援されるということです (これは他のお給料と合わせることができるので純粋にプラスになります)。この制度は倍率が5倍とそれなりに高いので、筆頭著者として論文実績があるかどうかが合否を左右します。申請をするのは博士1年の春なので、事実上は学部生時代が勝負です。

研究に本気で取り組むことでもし卒業後に臨床に行くにしても他の多くの方にはない視座が見についていることでしょう。みなさんも心配していると思いますが、一昔前と違ってこれからの時代、医師免許だけでやっていけるほど甘くはなくなるでしょう。学部生時代に研究に熱心に取り組む医学生は (残念ですが) ほぼいらっしゃいませんので、そういう点で差別化ポイントが得られるというのも大きなメリットです。

論文を筆頭著者として書くには数千時間の自己投資が必要になりますが、長い人生、十分に回収できると思います。

そして最後に伝えたいメッセージは、メリットが何かなんてことを超越して、何より研究ってとても面白いですよ。本気で取り組まずに卒業して医師になったら絶対損します。学部生時代に研究に取り組んで人生変わった人、何人も知っていますし、何を隠そう私がその一人です。

人によってはできるのでしょうが、私は難しい人も多いと思います。例えば6時から23時まで活動しているのであれば、朝7時くらいに研究室に来て授業が始まるまで1時間ちょっと研究に取り組み、授業後は部活に行って、みんなでご飯を食べて、20時くらいからまた研究室に来て1時間くらい研究に取り組み、帰宅してお風呂とかをして22時から1時間ほど大学のレポートやテスト勉強をして就寝という感じになるでしょう。それに加えて例えば土曜日は午前中は研究室に来て午後の時間を部活に使うなどすれば、一応両立はできると思います。

もしこういう生活ができないのであれば、両立は無理ということですね。君はその部活を仕事にするわけではないでしょうから、両立が難しいのならサークル活動は控えめにして夢の実現に時間を使うのがいいのではないかと思いますが、あとは各自の価値観次第です。

めざせグランドマスター! 一生使えるポータブルスキルを身につけよう!

次世代を担う意欲的な学生さんたちに広範な武器をさずけたいと書きましたが、具体的なスキルリスト・到達目標を下記に列挙します。全部で50ありますので、毎月1つずつこなしていったとしても新たな学びがたくさんあります。他のラボでいうところの博士課程相当にあたる経験を多数できます。いわば飛び級して一足先に大学院に入っているかのようなプログラムになっています。

何か特定のスキルや分野に特化して極めたいという学生さんには清水研のプログラムは向かないかもしれませんが、まだ将来の方向性・研究分野が確定していない方 (学部生ならむしろそれが普通です!) には広く学んでおくのはとても大事です。みなさんが将来どの診療科に行っても、あるいは基礎系研究者になっても保健所・企業に勤めても、このようなポータブルスキルは一生役立ちます

データサイエンスの国際的なcompetition (大会) にKaggleというものがあり、Kaggleの称号に準じて次のように認定します。

  • Novice: 1項目達成 (千里の道も1歩から)
  • Contributor: 10項目達成 (研究のイロハが分かってきた)
  • Expert: 20項目達成 (普通のラボの修士号レベル)
  • Master: 30項目達成 (並の医学生にはない大きな武器を身につけた。将来大学院に進学したとき1年生レギュラー間違いなし)
  • Grand Master: 40項目達成 (全国どこの医学生にも負けない異次元の研究力。医学博士号レベル。うちの特任助教で来てほしい (笑) )

めざせグランドマスター!

博士課程レベルのドライ解析スキル

学部卒の段階でここまでできたらどこにいっても大スターです。

  1. Linuxの修得 (Linuxは分厚い書籍が多いが、バイオメディカルに必要なのはごく一部のみ)
  2. バイオメディカル研究に向けたPythonの修得
  3. スーパーコンピューターを縦横無尽に使いこなす (少しずつステップする教材あり)
  4. 数理モデルを自在に組み数値計算ができるようになる 
  5. 統計学の基本に習熟しRを用いてどんな解析もできるようになる (オンライン教材あり)
  6. ベイズ階層モデリングや時空間統計モデリングといったadvancedな統計学の概要を理解し実践する
  7. 傾向スコアマッチングやメタアナリシス、不連続回帰分析等の臨床統計解析の基礎を習得する
  8. RNA-seq, ChIP-seq, シングルセルRNA-seq等のNGSデータ解析技術
  9. その他のバイオインフォマティクスデータ解析技術 (GWAS, メタゲノム解析等)
  10. 実践的機械学習を用いた生命医科学データ解析
  11. 畳み込み/再帰型ニューラルネットワークを用いた生命医科学データ解析
  12. より発展的な深層学習 (advancedレベルのPyTorchコーディングスキル)
  13. 基本的な物理化学シミュレーション、特に分子動力学シミュレーションの修得
  14. ケモインフォマティクス (化学情報学) の初歩の修得
  15. AI創薬の実践 (病気の治療薬、自分の手で発見したくないですか?)
博士課程のレベルを超えるconvergence scienceの理解

大学院生向けの、非常に高度な学びの機会を提供します。

  1. システム生物学・数理生物学・合成生物学等の教科書の輪読 (毎週火曜日17:30)
  2. 清水がハーバード研究留学時代に通っていたMITの人工知能研究センターが作製した教材を使ったadvancedな機械学習勉強会 (隔週土曜日午前、5月開始)
  3. 量子コンピューターの初歩を理解し動かしてみる
  4. 量子化学、量子機械学習等の量子情報科学にふれる
修士課程レベルの基礎医学実験手技の修得

データ科学しか分からない人になってはいけません。仮説検証の基本は、昔も今も実験です。

  1. DNAの単離・精製
  2. DNAの解析 (PCR)
  3. 遺伝子クローニング・ベクター作成
  4. 大腸菌株への形質転換および大腸菌培養
  5. DNAの塩基配列決定 (シークエンス)
  6. アガロースゲルの作製およびDNA電気泳動
  7. RNAの単離・精製
  8. mRNAの解析 (qRT-PCR)
  9. ゲノム編集技術 (CRISPR等)
  10. 哺乳類の細胞培養・遺伝子導入 (トランスフェクション)
  11. 細胞増殖能の評価
  12. 遺伝子ノックダウン
  13. 人工タンパクのデザイン、発現、精製
  14. タンパク質発現の解析 (Western blot等)
  15. 蛍光顕微鏡による細胞内局在の解析
  16. 次世代シークエンサー (NGS)による大規模データ取得
博士課程レベルの文献検索・読解スキル

文献検索・読解は研究の基本。基本だけどよそのラボではほぼ教えてくれません。

  1. 実践的文献検索の方法を身につける (Pubmedの多様な機能)
  2. 文献を大量にインプットする仕組みを習得する (1日10本を片道の通学時間で読む秘訣とは)
  3. 代表的な論文図表の読み方を身につける (6月に集中勉強会)
  4. バイオメディカル領域のデータベースやウェブツールの使い方を身につける (オンラインで勉強できる20時間の動画講座を準備済み)
医療界のリーダーとなる素質の養成

リーダーに求められるソフトスキルも学部生の頃から磨き込むことができます。

  1. 科学討論の仕方を身につける
  2. プレゼンテーションスキルを身につける (Adobe社のIllustratorを使った分かりやすいイラスト作成も含む)
  3. 後輩の指導を通してコーチングスキルを身につける
  4. 論文を継続的に精読する習慣を身につける (学部生の間に100本!)
  5. 論文紹介スキルを身につける (卒業までにプレゼン経験10回!)
  6. 情報発信スキルを身につける
医学博士号授与に匹敵する研究成果の創出

本学の博士号の基準は査読付き学術誌に筆頭著者として1本発表することですが、その水準を学部生時代に余裕でクリアします。研究成果があれば、将来的に学振DC (研究成果がある大学院生に20万円の給料を毎月支給する国の制度) にほぼ当確など経済的なメリットもあります。

  1. 筆頭演者として日本分子生物学会、バイオインフォマティクス学会、またはメディカルAI学会で学会デビューする
  2. 共著者として国際学術誌に1本論文発表する
  3. 筆頭著者として国際学術誌に1本論文発表する
  4. 筆頭著者として国際学術誌に複数論文発表する
  5. プレスリリースまたは特許出願を経験する

求める学生像と清水研で得られること

新2年生から新6年生まで応募可能です。他の研究室に所属している学生さんも、年度毎の履修登録の際に変更ができます。定員はありません。

事前の数理や情報科学のスキルは不問です。学部生時代に自分自身に大きな投資をして将来の大飛躍への糧としたいという学生さんを募集しています。「情熱にまさる能力なし」という言葉もあるように、ひたむきに研究に取り組みたいという強い意志がある方を優先して受け入れます。具体的な受け入れ条件は次の2つです。

  • 自ら貪欲に学び続け、また学んだことを仲間同士でシェアしさらに高め合っていけるような向上心と協調性のある方
  • 研究をして成果として発表するための一定程度のまとまった時間が確保できる方 (目安として1日2時間換算で2~3年前後 + オプションとして希望する勉強会に参加する時間)

時間についてですが、1日2時間平均であれば2年で最初の英語学術論文を投稿するところまでは狙えます。仮に2年から6年まで在籍すれば、筆頭著者として英語学術論文2本、そして共著として他に数本の論文が見込まれます。もちろん国内学会発表も複数できるでしょう。

研究とは別に、多様な学びの機会や独自教材を提供します。

これだけあれば、もちろん武器が身につくというのが一番なのですが、それ以外にも例えば将来的に医局の大学院生になった時に学振DC (研究実績がある大学院生に月20万円を支給する制度、医師の外勤と併給可) がほぼ当確になるので副次的なメリットも大きいです。

ひたむきに打ち込みたい方には学部生時代の学会発表・論文発表を含めこちらもどこよりもたくさんの機会を提供しますが、逆にそうでない方に無理強いするつもりは毛頭ありません。「清水研で得られること」が何かは、ひとえにみなさんの意欲や主体性次第です。熱意があれば大学院生と同等に教育しますので学べるものは青天井です。

指導担当者

研究については、学部生1人につき

  • 大学院学生1名
  • 清水

の2名で指導します。その他の事項については、ラボ内の全スタッフ・大学院生がサポートします。

私たちが提供する研究環境

  • オープンアドレス式の机・椅子 (24時間利用可)
  • 高速Wifi環境
  • ラボ共通図書 (関連書300冊)
  • スーパーコンピューターSHIROKANEアクセス権 (家からでも利用可)
  • 配属前に学習するオンライン予習教材 (200時間分の演習教材) + 事前勉強会
  • (希望者のみ) 一通りの分子細胞生物学実験環境 (ただし動物実験は不可)

スケジュール

研究実践プログラムで当研究室への配属を希望する方は、メールで清水に面談をお申し込みください 。面談は日程調整の上、駿河台キャンパスにある私の部屋で行います。平日午後に30分ほどを確保していただきます。学生さんには面談前日までに自己紹介スライドをメールで送付していただき、当日は自己紹介をしていただいたあと、こちらからも分野の概要をスライドを使ってご説明します。そしてちょっとしたツアーをしてどんな場所なのかを見ていただきます。私から質問するのは、君たちは何がしたいのか、つまり

  • 勉強をしたいのか
  • 誰かの研究のお手伝いをしたいのか
  • 自分でプロジェクトを持って研究をしたいのか

ということです。もちろん、いきなりは決められないと思うので、最初の1ヶ月は2冊の本を貸出してそれを勉強していただきながら、これらをよく考えてください。

特に、自分でテーマを持って研究をして筆頭著者として論文化を目指すという方の場合、みなさんがいくら優秀でもゼロからのスタートであれば2000時間ほどかかると思います。週に10時間だと、1年で500時間、4年で2000時間くらいです。具体的に、〇〇曜日 (複数) の〇〇時から〇〇時くらいまで研究をしたいということを教えてください

もしそこまでの時間はとれないのであれば、誰かの研究の一部を担当させてもらえるかもしれません。この場合は週に10時間を1年 (合計500時間) くらいでしょう。研究は家でもできることもありますが、特に最初の1年くらいは研究室にいらしていただきます。オンラインでDiscussionはもっと上級者になってからです。

研究室で提供するのは、先輩学生 (昨年の研究実践プログラムやプロセメ履修者など) による週1くらいの学部生のためだけの勉強会やプログラムハンズオンで、これは原則的に参加してください。日時等はtutorの先輩都合次第です。

どちらにせよ研究をしたいのであればしっかりと論文を読まなければいけません。そのための基礎体力づくりをするために隔週の金曜日17:30から行われているBiomedical Data Science Club、または隔週の月曜日16時から行われているJournal Club、または隔週の金曜日で時間はその都度調整しているpre-JCの少なくともいずれかへの主体的かつ継続的な参加を求めます。授業や部活等がある中でこれらに参加するのは大変なことだと承知していますが、これらのいずれかに継続して参加する熱意と時間を捻出できる学生でないと、研究で何か形を残すというのは難しいです。実際、これまで研究で学会発表や論文発表をした学部生はみんなこれらに出ていましたし、逆に継続的に参加できなかった学生さんは残念ながら研究もすぐにやめてしまっています。研究テーマの具体的な話が始まるのはこれらに最初の5回くらい出た後の話です。新年度の時期にやる気に満ち溢れているのはごく普通のことですが、私達は春先だけでなく継続的に熱意のある方に絞ってどこのラボよりも濃密な研究の機会を提供したいと考えておりますのでご理解ください。清水研に定着して研究をしている人達に限れば、学部生で学会発表・論文発表はみんな当たり前のようにできています。

週に10時間よりも少ない時間しか取れない場合は、何かの研究を担当させてもらうというのは実際には難しいと思います。ですので、みなさんが何をしたいのかを私達に提案してください。例えば何かの本を勉強したい、Kaggleに挑戦したいのであれば、当分野に出入りしている学部生たちの中から希望者を募ってグループを作ることもできるでしょう。本学は次世代のリーダーとなる医療者育成を目指しているわけですので、こういう課外のイベントは学部生さんが自ら企画することを期待します。 清水研に来る人達はもともとこのような領域に興味のある人達ですから、君たちが上手にPRすれば仲間も見つかるでしょう。

以上を読んだ上で、配属を希望される際には事務の案内に従って登録してください。毎年履修登録が必要ですので忘れずにお願いします。

配属が内定したら、すぐにオンライン予習コンテンツを提供します。オンラインコンテンツは複数個に分かれていますので、勉強が終わったら随時お知らせください。次をお渡しします。また、5月頃にデータサイエンスに関する書籍の輪読会をオンラインで行います (学生さん方の日程調整の上で全5回, 詳しくはこちら)

研究をしたい方 (週に10時間以上来る方) は、配属が開始したらスーパーコンピューターを使ったバイオインフォマティクス解析技術の初歩や機械学習手法をまずは身につけていただきます

また、数ヶ月かけて先行文献調査を徹底的に行なっていただき、大学院生・清水と討論の上、研究計画を策定します。

研究が始まったら、slackで常時清水および大学院生とやりとりしつつ、1ヶ月に1回ほど進捗をzoomで発表していただきfeedbackを行います。この報告会は、研究実践プログラムに通う他の学部生と合同で行われます。また、研究論文に触れる機会を増やしていただくために、Biomedical Data Science Club にも加入していただいて全国の意欲的な学部生らと一緒に論文抄読・討論会を隔週で行います

希望者には学生の会だけでなく当分野が行う種々のリサーチミーティングにも参加していただけます。学生主体の会ではなく、リアルな研究討論会に加わり、またそこでデータを発表して厳しい (けど建設的な) コメントをたくさん浴びる中で真のリサーチマインドが育まれます。それ以外に、当研究室が用意している膨大なリソースを在宅で学ぶことも可能です。

テスト期間は無理に研究を進める必要はないですが、最初の2年、遅くとも3年で筆頭著者として英語学術論文が発表できるよう指導を行います。

先ほども書きましたが、継続的に取り組めば学部生時代に筆頭著者として国際学術誌デビューも夢では全然ありません

データ科学を武器にして未来の医療を創ろう

学部生時代の目標として論文発表複数を掲げましたが、真の目標は別のところにあります。それはみなさんが卒業後にそれぞれの領域で他の医師にはない多様な考え方を実践し、未来の医療を創っていくことです。当研究室での学びはその大きな原動力となること間違いないです。

また、研究実践プログラムでAIシステム医科学分野に出入りしている方であれば4年次のプロジェクトセメスターでは優先的に受け入れ可能ですし、さらにその先も希望があれば清水研の研究者養成コース基礎研究医プログラムにも応募することができるようになります。

注1) 研究者養成コースは、ドライにもウェットにも精通する稀有な医師・医学者を目指せる、返済不要の奨学金が支給される、大学院を原則1年短縮で卒業できる、博士号取得後すぐに特任助教の待遇で雇用といった大きなメリットがある人気コースです。

注2) 基礎研究医プログラムは大学病院での初期研修と同時に大学院博士課程に入学し、通常は初期研修2年 + 博士課程4年で少なくとも6年かかるところを、わずか4年で初期研修修了証と博士号の両方を取得できるコースです。

学生時代にこそ自己投資をして大きく飛躍しよう!