東京医科歯科大学・研究実践プログラム・AIシステム医科学分野

東京医科歯科大学医学部医学科にある「研究実践プログラム」は、学部生のうちから研究活動を行うプログラムであり、2022年に新設された当分野は2023年度から参画します。「世界に通用する医学者の卵を養成する」をキーワードに、学生教育に非常に力を入れており、学部生のうちに筆頭著者として国際学術誌に論文を複数発表することを目指した指導を行います。

さらに、当分野のプログラムのもう1つの特徴はこのページの中ほどに記載している「グランドマスター制度」で、50もの多様なスキル習得を支援しており、医学はもちろん、生命科学にも数理情報科学にも精通することができます。

なお、医学科5年6年生には月10万円の奨励金を支給して研究者を本気で目指していただくコースである「研究者養成コース」で当分野に所属していただくこともできますし、これらの制度以外にも随時本学の学部生 (所属学科と学年は問わない) を受け入れしています。また、他大学の学生さんにはオンライン研究制度を用意しています。

以下「研究実践プログラム」の詳細です。

私たちの強み

医科歯科の中にも広い意味でのデータサイエンスをやっている先生は何人もいらっしゃいますが、それらの先生方は医師免許やその他医療系の診療現場での経験、バイオ実験系の研究実績、海外での研究経験がない方がほとんどです。私は医学よりも前から情報科学に触れており数々の賞もいただいてきました。医師免許をとって研修医も修了し、その後も非常勤ですが内科医として診療に携わってきたので医療現場のことは理解しています。また大学院時代はいくつかのデータサイエンス論文を出していますが、それとは別に実験系の論文で博士号をとりました。さらに、アメリカHarvard Medical Schoolへの研究留学もしており国際的な視点も身につけています。このように医学・生命科学・情報科学のトリプルメジャーである先生は日本国内にはほぼいらっしゃいません。他の先生方と比べみなさんとバックグランドが近いこともあり、国際的な視座も含め多様な見地からより広範な学びを提供できるでしょう。

私たちは医療・バイオ・データ科学の融合分野を研究しています。AI創薬や数理/物理モデル・分子生物学といった基礎的な研究から、がん・感染症・生活習慣病・免疫疾患など幅広い疾患の研究まで手掛けていますし、いずれも海外の専門家集団による厳しい査読に合格して論文発表をしておりますので、科学的妥当性を満たしそれぞれの領域における新たな1ページを切り開いてきました。これはそのまま強みにもなり、清水研に所属することで1年次の延長である教養科目・基礎医学・臨床医学・データサイエンスの多様な領域を学ぶことができるということです。「耳学問」という言葉はご存知ですよね。たくさんのトピックスに見聞きするからこそ、本学を卒業後に専門分野が決まった時に、他の医師にはない独自の視点が築けるのです。私たちの分野はデータ科学センターにありますが、データ科学はもちろんのことそれだけにとどまらない広範な武器を授けたい、そう考えています。

清水は自分自身が学部生だった頃に筆頭著者として論文発表 (Shimizu H. et al., 2011) させていただいたり他にもさまざまな学びの機会があった (学部生時代のエピソードはこちら)ため、学部生時代における研究教育の重要性を誰よりも深く理解しており、これまでもBiomedical Data Science Clubオンライン研究指導を通じて医科歯科大学だけでなく多様な学部生らに教育をしてきましたし、他大学の医学生に筆頭著者として論文発表をさせたことも複数あります。研究実践プログラムはオフラインも併用できるので、さらに大きな学びがあるでしょう。

めざせグランドマスター! 一生使えるポータブルスキルを身につけよう!

次世代を担う意欲的な学生さんたちに広範な武器をさずけたいと書きましたが、具体的なスキルリスト・到達目標を下記に列挙します。全部で50ありますので、毎月1つずつこなしていったとしても新たな学びがたくさんあります。他のラボでいうところの博士課程相当にあたる経験を多数できます。いわば飛び級して一足先に大学院に入っているかのようなプログラムになっています。

何か特定のスキルや分野に特化して極めたいという学生さんには清水研のプログラムは向かないかもしれませんが、まだ将来の方向性・研究分野が確定していない方 (学部生ならむしろそれが普通です!) には広く学んでおくのはとても大事です。みなさんが将来どの診療科に行っても、あるいは基礎系研究者になっても保健所・企業に勤めても、このようなポータブルスキルは一生役立ちます

データサイエンスの国際的なcompetition (大会) にKaggleというものがあり、Kaggleの称号に準じて次のように認定します。

  • Novice: 1項目達成 (千里の道も1歩から)
  • Contributor: 10項目達成 (研究のイロハが分かってきた)
  • Expert: 20項目達成 (普通のラボの修士号レベル)
  • Master: 30項目達成 (並の医学生にはない大きな武器を身につけた。将来大学院に進学したとき1年生レギュラー間違いなし)
  • Grand Master: 40項目達成 (全国どこの医学生にも負けない異次元の研究力。医学博士号レベル。うちの特任助教で来てほしい (笑) )

めざせグランドマスター!

博士課程レベルのドライ解析スキル

学部卒の段階でここまでできたらどこにいっても大スターです。

  1. Linuxの修得 (Linuxは分厚い書籍が多いが、バイオメディカルに必要なのはごく一部のみ)
  2. バイオメディカル研究に向けたPythonの修得
  3. スーパーコンピューターを縦横無尽に使いこなす (少しずつステップする教材あり)
  4. 数理モデルを自在に組み数値計算ができるようになる 
  5. 統計学の基本に習熟しRを用いてどんな解析もできるようになる (オンライン教材あり)
  6. ベイズ階層モデリングや時空間統計モデリングといったadvancedな統計学の概要を理解し実践する
  7. 傾向スコアマッチングやメタアナリシス、不連続回帰分析等の臨床統計解析の基礎を習得する
  8. RNA-seq, ChIP-seq, シングルセルRNA-seq等のNGSデータ解析技術
  9. その他のバイオインフォマティクスデータ解析技術 (GWAS, メタゲノム解析等)
  10. 実践的機械学習を用いた生命医科学データ解析
  11. 畳み込み/再帰型ニューラルネットワークを用いた生命医科学データ解析
  12. より発展的な深層学習 (advancedレベルのPyTorchコーディングスキル)
  13. 基本的な物理化学シミュレーション、特に分子動力学シミュレーションの修得
  14. ケモインフォマティクス (化学情報学) の初歩の修得
  15. AI創薬の実践 (病気の治療薬、自分の手で発見したくないですか?)
博士課程のレベルを超えるconvergence scienceの理解

大学院生向けの、非常に高度な学びの機会を提供します。

  1. システム生物学・数理生物学・合成生物学等の教科書の輪読 (毎週火曜日17:30)
  2. 清水がハーバード研究留学時代に通っていたMITの人工知能研究センターが作製した教材を使ったadvancedな機械学習勉強会 (隔週土曜日午前、5月開始)
  3. 量子コンピューターの初歩を理解し動かしてみる
  4. 量子化学、量子機械学習等の量子情報科学にふれる
修士課程レベルの基礎医学実験手技の修得

データ科学しか分からない人になってはいけません。仮説検証の基本は、昔も今も実験です。

  1. DNAの単離・精製
  2. DNAの解析 (PCR)
  3. 遺伝子クローニング・ベクター作成
  4. 大腸菌株への形質転換および大腸菌培養
  5. DNAの塩基配列決定 (シークエンス)
  6. アガロースゲルの作製およびDNA電気泳動
  7. RNAの単離・精製
  8. mRNAの解析 (qRT-PCR)
  9. ゲノム編集技術 (CRISPR等)
  10. 哺乳類の細胞培養・遺伝子導入 (トランスフェクション)
  11. 細胞増殖能の評価
  12. 遺伝子ノックダウン
  13. 人工タンパクのデザイン、発現、精製
  14. タンパク質発現の解析 (Western blot等)
  15. 蛍光顕微鏡による細胞内局在の解析
  16. 次世代シークエンサー (NGS)による大規模データ取得
博士課程レベルの文献検索・読解スキル

文献検索・読解は研究の基本。基本だけどよそのラボではほぼ教えてくれません。

  1. 実践的文献検索の方法を身につける (Pubmedの多様な機能)
  2. 文献を大量にインプットする仕組みを習得する (1日10本を片道の通学時間で読む秘訣とは)
  3. 代表的な論文図表の読み方を身につける (6月に集中勉強会)
  4. バイオメディカル領域のデータベースやウェブツールの使い方を身につける (オンラインで勉強できる20時間の動画講座を準備済み)
医療界のリーダーとなる素質の養成

リーダーに求められるソフトスキルも学部生の頃から磨き込むことができます。

  1. 科学討論の仕方を身につける
  2. プレゼンテーションスキルを身につける (Adobe社のIllustratorを使った分かりやすいイラスト作成も含む)
  3. 後輩の指導を通してコーチングスキルを身につける
  4. 論文を継続的に精読する習慣を身につける (学部生の間に100本!)
  5. 論文紹介スキルを身につける (卒業までにプレゼン経験10回!)
  6. 情報発信スキルを身につける
医学博士号授与に匹敵する研究成果の創出

本学の博士号の基準は査読付き学術誌に筆頭著者として1本発表することですが、その水準を学部生時代に余裕でクリアします。研究成果があれば、将来的に学振DC (研究成果がある大学院生に20万円の給料を毎月支給する国の制度) にほぼ当確など経済的なメリットもあります。

  1. 筆頭演者として日本分子生物学会、バイオインフォマティクス学会、またはメディカルAI学会で学会デビューする
  2. 共著者として国際学術誌に1本論文発表する
  3. 筆頭著者として国際学術誌に1本論文発表する
  4. 筆頭著者として国際学術誌に複数論文発表する
  5. プレスリリースまたは特許出願を経験する

求める学生像と清水研で得られること

新2年生から新6年生まで応募可能です。他の研究室に所属している学生さんも、年度毎の履修登録の際に変更ができます。定員はありません。

事前の数理や情報科学のスキルは不問です。学部生時代に自分自身に大きな投資をして将来の大飛躍への糧としたいという学生さんを募集しています。具体的な受け入れ条件は次の2つです。

  • 自ら貪欲に学び続け、また学んだことを仲間同士でシェアしさらに高め合っていけるような向上心と協調性のある方
  • 研究をして成果として発表するための一定程度のまとまった時間が確保できる方 (目安として1日2時間換算で2~3年前後 + オプションとして希望する勉強会に参加する時間)

時間についてですが、1日2時間平均であれば2年で最初の英語学術論文を投稿するところまでは狙えます。仮に2年から6年まで在籍すれば、筆頭著者として英語学術論文2本、そして共著として他に数本の論文が見込まれます。もちろん国内学会発表も複数できるでしょう。

研究とは別に、多様な学びの機会や独自教材を提供します。

これだけあれば、もちろん武器が身につくというのが一番なのですが、それ以外にも例えば将来的に医局の大学院生になった時に学振DC (研究実績がある大学院生に月20万円を支給する制度、医師の外勤と併給可) がほぼ当確になるので副次的なメリットも大きいです。

指導担当者

研究については、学部生1人につき

  • 大学院学生1名
  • 清水

の2名で指導します。その他の事項については、ラボ内の全スタッフ・大学院生がサポートします。

私たちが提供する研究環境

  • オープンアドレス式の机・椅子 (24時間利用可)
  • 高速Wifi環境
  • ラボ共通図書 (関連書300冊)
  • スーパーコンピューターSHIROKANEアクセス権 (家からでも利用可)
  • 配属前に学習するオンライン予習教材 (200時間分の演習教材)
  • (希望者のみ) 一通りの分子細胞生物学実験環境 (ただし動物実験は不可)

スケジュール

研究実践プログラムで当研究室への配属を希望する方は、メールで清水に面談をお申し込みください 。面談は日程調整の上、駿河台キャンパスにある私の部屋で行います。平日午後に1時間ほどを確保していただきます。学生さんには面談前日までに自己紹介スライドをメールで送付していただき、当日は自己紹介をしていただいたあと、こちらからも分野の概要をスライドを使ってご説明します。そしてちょっとしたツアーをしてどんな場所なのかを見ていただきます。

その上で配属を希望される際には事務の案内に従って登録してください。毎年履修登録が必要ですので忘れずにお願いします。

配属が内定したら、すぐにオンライン予習コンテンツを提供します。また、4月・5月にデータサイエンスに関する書籍の輪読会をオンラインで行います (学生さん方の日程調整の上で全6回)

配属が開始したらスーパーコンピューターを使ったバイオインフォマティクス解析技術の初歩や機械学習手法をまずは身につけていただきます

また、数ヶ月かけて先行文献調査を徹底的に行なっていただき、大学院生・清水と討論の上、研究計画を策定します。

研究が始まったら、slackで常時清水および大学院生とやりとりしつつ、1ヶ月に1回ほど進捗をzoomで発表していただきfeedbackを行います。この報告会は、研究実践プログラムに通う他の学部生と合同で行われます。また、研究論文に触れる機会を増やしていただくために、Biomedical Data Science Club にも加入していただいて全国の意欲的な学部生らと一緒に論文抄読・討論会を隔週で行います

希望者には学生の会だけでなく当分野が行う種々のリサーチミーティングにも参加していただけます。学生主体の会ではなく、リアルな研究討論会に加わり、またそこでデータを発表して厳しい (けど建設的な) コメントをたくさん浴びる中で真のリサーチマインドが育まれます。それ以外に、当研究室が用意している膨大なリソースを在宅で学ぶことも可能です。

テスト期間は無理に研究を進める必要はないですが、最初の2年、遅くとも3年で筆頭著者として英語学術論文が発表できるよう指導を行います。

先ほども書きましたが、継続的に取り組めば学部生時代に筆頭著者として国際学術誌デビューも夢では全然ありません

データ科学を武器にして未来の医療を創ろう

学部生時代の目標として論文発表複数を掲げましたが、真の目標は別のところにあります。それはみなさんが卒業後にそれぞれの領域で他の医師にはない多様な考え方を実践し、未来の医療を創っていくことです。当研究室での学びはその大きな原動力となること間違いないです。

また、研究実践プログラムでAIシステム医科学分野に出入りしている方であれば4年次のプロジェクトセメスターでは優先的に受け入れ可能ですし、さらにその先も希望があれば清水研の研究者養成コース基礎研究医プログラムにも応募することができるようになります。

注1) 研究者養成コースは、ドライにもウェットにも精通する稀有な医師・医学者を目指せる、返済不要の奨学金が支給される、大学院を原則1年短縮で卒業できる、博士号取得後すぐに特任助教の待遇で雇用といった大きなメリットがある人気コースです。

注2) 基礎研究医プログラムは大学病院での初期研修と同時に大学院博士課程に入学し、通常は初期研修2年 + 博士課程4年で少なくとも6年かかるところを、わずか4年で初期研修修了証と博士号の両方を取得できるコースです。

学生時代にこそ自己投資をして大きく飛躍しよう!