学生のみなさん、オンライン勉強会に参加しませんか?
バイオメディカル領域のデータサイエンス (バイオインフォマティクス、医療/メディカルAIや数理生物学・システム生物学・生物医療統計など) を学びたいという意欲的な学部生さん・修士課程の学生さんを主な対象にしたオンライン勉強会を立ち上げました (博士課程の学生さんにはダブルメンター制度を用意していますし、個人・法人様がサポーターとして最新のバイオメディカルデータサイエンスを学んでいただくこともできます)。現在の専攻も所属大学も問わないので、そのような垣根を超えて一緒に勉強しましょう。
広い意味のデータサイエンスへの期待から、書店にもネット上にもさまざまなデータサイエンスの情報があふれるようになりましたが、広義のバイオ系 (生命科学・医歯薬学など) ではどのようなことが行われているのかを学べるリソースは、(私たちの本である)「実験医学別冊 Pythonで実践 生命科学データの機械学習」を除いてほぼないように感じています。そこで国立東京医科歯科大学・AIシステム医科学分野の勉強会、Biomedical Data Science Clubでは、CNS (Cell, Nature, Science) はじめ一流雑誌に掲載されたばかりの新しい論文を題材にしてどのような研究が最先端では行われていて、そこにデータサイエンスがどのように絡んでいるのか、データサイエンスを勉強するとどのようなことができるのか、を一緒に勉強します。
具体的には、参加学生の中から持ち回り (担当はおよそ年に1回程度です) で決まるその会の担当者が論文を選定し事前に勉強会のslackでメンバーに周知します。メンバーはその論文を読んだ上で勉強会に参加し、そこで担当者から最初20-30分ほどの論文紹介プレゼン (研究の背景・方法・主な結果の解説) をしてもらった後、30分ほどフリー討論としてさまざまなことを質問したり答えられる人が答えたり補足したりします。1時間の勉強会が終わった後、担当者はプレゼンで使ったスライドをslackでみんなに共有します。この勉強会で一番勉強できるのは、論文の担当者自身です。論文を読み込み、自分が知らないことをしっかり調べ、資料にまとめ、自分の言葉で人に説明するという経験をすることで、単に読むだけでは得られない深い理解が可能になります。
例えばNatureブランドの医学系学術誌の最高峰であるNature Medicine誌に掲載された、急性骨髄性白血病 (AML) の患者データ等の解析から新規治療薬を見つけその実験検証まで行ったという論文をみんなで読んだときの担当学生のスライドの一部を右に共有しています (クリックでスライドショー開始、escキーで終了)。
担当学生さんがこのスライドを使って30分ほど説明し、次の30分間で学生同士による質疑応答 & フリー討論 (+その後20分間私が補足解説) を行いました。
自分ひとりで難解な論文を読むのは大変ですし定期的に勉強するのも強い意志が必要ですが、この勉強会は一種のゆるいサークル感覚で他大学に所属する興味も年も近いメンバーと交流しながらバイオメディカルデータサイエンスを勉強することができます。slackには勉強会の資料だけでなく他にもさまざまな資料が流れてきますし、もちろんそういうのをシェアしてくれるのはとてもwelcomeです。次世代の医療や生命科学研究を担う若い世代のメンバーみんながwin-winでデータサイエンスを武器にしていけたらと思っています。
また、データサイエンスが関わっていれば論文は問わないので、勉強する対象はオミクス解析だったり、機械学習だったり、システム生物学だったり、数理生物学だったり、生物物理シュミレーションだったり、イメージングだったり、疫学研究だったりします。「耳学問」という言葉もありますが、多様な大学&バックグランドの方が集まって勉強するというのは、自分だけではなかなか難しい幅広い領域に触れることができるという大きなメリットもあります。
Biomedical Data Science Club (BDSC) の卒業生の方々から、これから参加しようか検討中の学生さんに向けた「未来の後輩」へのメッセージもいただいております。
BDSCでは生命科学や医学に情報学を適応した論文を勉強することができる。毎回違うメンバーが発表を担当するため、幅広い分野の研究を知ることができるのと共に、他のメンバーとのディスカッションを通して、知らない分野への理解も深めることができる。何よりも、同じ興味関心を持った学生や自分よりも深い知識を持った学生が、他大学にいることに刺激を受けることがこの会の一番の醍醐味である。医学・生物系の学生で情報学について勉強したい学生、情報学に詳しく医学・生物系への応用について知りたい学生、そのどちらであっても、この会を通じて仲間と新しい知識を得ることができるだろう。
名古屋大学医学部医学科 卒
BDSC在籍期間: 2022.4~2023.3
医学に情報学の知見を応用したい(あるいはその逆)と考える人は近年増えていますが、実際に現場でどのような研究が行われているかを知る機会は少ないと思います。BDSCは、医学とデータサイエンスの融合分野に興味がある全国の学生が集まって、隔週で最新の論文を読んで議論する会です。
BDSCでは、ゲノムなどの基礎研究から臨床データを扱った疫学まで、さまざまな論文が俎上に上がります。論文解説の後の質疑応答では、実際に研究をしている学生も多いため非常にリアルな議論が交わされ、聞いているだけでもとても勉強になりました。逆に自分が発表する際には、論文のfigureを一つずつ細かく吟味し、使われているソフトウェア一つ一つまで遡って嚙み砕いて説明するという得がたい体験ができました。また、清水先生が毎日のようにグループに流してくださる、最新の論文リストも非常にためになり、全てをPDFで保存するにはクラウドが全く足りないという嬉しい悲鳴が上がるほどの情報量を共有していただきました。
ぜひ、BDSCで皆さんも医学×データサイエンスの最前線に触れてみてください。特に関西勢が少ないので、関西の皆さん、首を長くしてお待ちしております(笑)。
大阪大学医学部医学科 卒
BDSC在籍期間: 2022.8~2023.3
他のOB・OGからのメッセージも原文のままこちらのページで公開しておりますのでご覧ください。
発足してまだ2年目の新しい会ですが、現在は五十音順に旭川医科大学・鹿児島大学・北里大学・九州大学・群馬大学・慶応大学・神戸大学・島根大学・順天堂大学・東京大学・東京医科歯科大学・東京医科大学・東京工業大学・東京農業大学・東京農工大学・東京理科大学・東北大学・名古屋大学・福井大学・北海道大学・明治大学・早稲田大学の、北は北海道から南は鹿児島在住まで、ほぼ全国から医歯薬学・生命科学・数理・統計・情報系など多様な専攻の学生さん39名が所属しています。勉強会はおよそ2週間に1回のペースで行われていて、ゲスト参加募集中の直近の勉強会は
- 2023年度第5回:6/9 (金) 17:30-18:30 (Zoom開催), 東京農業大学バイオサイエンス学科4年生担当
- 2023年度第6回:6/23 (金) 17:30-18:30 (Zoom開催), 東京大学大学院農学研究科修士2年生担当
です。参考までに前回第4回の新規ゲスト参加は2名いらっしゃいました。ゲスト参加は現在も募集中ですのでお気軽にどうぞ。各回は完全に独立している(読む論文が違うだけ) ので、1回目から順番に参加できなくても (途中の回から参加しても、参加できない回があっても) 問題ありません。実習等で途中参加になってしまう時があっても、あるいは早く抜けても、あるいはお休みしても、(自分の担当回でなければ) 大丈夫です。
Biomedical Data Science Clubの補足情報として、これまでの勉強会で取り上げた論文や内容についてはこちらのページで公開しているので合わせてご覧ください。
さらに、Biomedical Data Science Club参加者のもう一つの特典として、論文を「読む」だけでなく実際に研究をして論文を「書く」ことがしたくなったらオンライン研究制度で始めることができます。実際、Biomedical Data Science Club参加者の中には清水とともにすでにデータサイエンスの英文論文を国際誌に発表した学生さんもいます。
本学とか他大学とか関係なく、意欲的な学生さんにはどんどん高みを目指してもらえるよう最大限のサポートをしています。全くはじめてという方にも、相応の知識やスキルを持つ方にも、得るものがとても大きい勉強会です。論文だけでなく、Pythonで実践 生命科学データの機械学習という本もこの勉強会メンバーの何名かの学部生さんに分担執筆していただきましたが、大学の授業を受けるだけでは得られない経験もできるかもしれません。
学部1年生相当 (大学入学手続き後の高校生、高専4年生、医学科の学士編入試験に合格したがまだ入学前の方も含む) から学部6年生相当 (修士課程、MD/PhDコース学生等も含む) の方であれば、年齢や所属、これまでの専門性に関係なく随時募集しています (勉強会は日本語開催ですので、留学生の方はあらかじめご了承ください)。
全国から集う同世代の仲間達から大きな刺激を受けながら、新しい分野・考え方をみんなで学び、将来の飛躍への一助としませんか?
次の時代を切り開く若いみなさんのチャレンジをお待ちしております。
現所属メンバーは次の通りです (個人情報保護の目的で大学と学年のみ)。
学部6年生 & 修士2年生: 九州大学2名、神戸大学1名、東京大学2名、東京医科歯科大学2名
学部5年生 & 修士1年生: 東京大学1名、東京医科歯科大学1名、東京農工大学1名、東北大学2名、北海道大学1名、東京医科大学2名、順天堂大学1名
学部4年生: 群馬大学1名、神戸大学1名、東京医科歯科大学1名、福井大学1名、東京農業大学1名、東京理科大学1名、早稲田大学1名
学部3年生: 旭川医科大学1名、群馬大学1名、島根大学1名、東京大学1名、慶應義塾大学1名
学部2年生: 鹿児島大学1名、東京大学1名、九州大学1名、東京医科歯科大学2名、東京工業大学1名
学部1年生: 名古屋大学1名、東京医科歯科大学2名
【よくある質問とその回答】
もちろん将来的にデータサイエンスを専門にしたいという人もごく一部いますが、多くの学生は違います。
大多数の学生は将来的に臨床の医師になりたい、実験系の生命科学研究者になりたい、医療に関わる仕事がしたいといったそれぞれ異なるキャリアプランを持っており、それぞれの領域でデータサイエンスを一種の武器として活用したいと考えています。広い意味の生命科学・医療領域を仕事にしたい学生たちが集まっており、多くの学生の主目的は将来的に専門にはしないが強みとして習得しておきたい領域の勉強であり、いわば将来の自分への先行投資です。
どのようなキャリアパスを希望しているのか分かりませんが、例えば医療関係なり学術関係なりの仕事を目指しているとしましょう。どちらとも多くの人の前で話をしないといけない機会は多々あります。学会や講演会で発表する時には聴衆は数百人規模の初対面の人ですし、かなりのベテラン・大御所の先生も多くいらっしゃるでしょう。学振DCはじめさまざまなお金を支援してほしいときの面接ではかなり専門的でしかも厳しい質問しかされませんし、それから将来的に教授・准教授等のポストをとるためには何十人もの候補者の中で書類・面接選考で1番にならないといけません。
一方でこの勉強会はクラス1つ分の規模でありかつ年齢がかなり近いこともあって、定期的に会っているうちに、そして日々slack内でやりとりするうちに所属は違ってもどんな人かはお互い分かっていますし、あえて博士課程に入る前の方に限定した勉強会なので「こんな質問基礎的すぎて聞けない」というふうに構える必要は全くありません。最初は勇気がいるかもしれませんがこの会でいろいろ発言する中で苦手を克服し、将来的にもっと大きな舞台で活躍していただきたいと思っています。
不安はよくわかります。ただ誰しも初心者からスタートであり、「まだ勉強不足」と言っていたらあっという間に学生期間は終わってしまうのも事実です。行列を高校数学で習っていない人がこの会に加わって3ヶ月で行列をたくさん使った病理画像AIに関する論文を紹介したこともありますし、ちょっと前からやっている人でもせいぜいここ数年で (本業の合間に) 勉強した方ばかりです。データサイエンスと生命科学・医科学領域研究を学べる他の勉強会はほとんどありませんし、学生限定のオンラインの会は2022年4月現在、この会しかないと自負しています。他大学で頑張っていて自分より少し先をいっている他のメンバーから大きな刺激を受けられます。最初は自分に負荷をかけて勉強する必要があると思いますが、初心者でも熱意がある学生さんはぜひ背中を押してあげたいと思っています。
また、勉強会の担当が回ってくるまで1年ほど時間があり、初心者からでもいろいろ勉強してステップアップする準備ができると思います。詳しくは次のQ&Aもご覧ください。
原則としてレギュラーメンバーに加入してから1巡したタイミングで担当をお願いしています。この勉強会は隔週開催ですので月に2名、そして参加メンバーは30名前後いることを考えれば、最初にご担当いただくのは加入から1年後くらいです。その前後で順番の変更は柔軟にできますので、加入後に幹事学生にご相談ください。
この勉強会には学部1年生も複数参加していますし、学部1年生が論文紹介の担当をしたこともありますので意欲があればきっと大丈夫です、というのが結論です。高校卒業してすぐ、まだ大学に入学前の段階で正式メンバーになったとても意欲的な方もいますし。
どの学部にせよ学部1,2年生ではまだ専門科目はほとんどやっていないでしょうし、無理に参加する必要は全くないです。ただ、本来はすごい大きな可能性があるのに自分でブレーキをかけてしまっているのはもったいないなと思います。清水は東北大の医学生だった頃、1年生の頃から (自分も初心者なのに) 勉強会を立ち上げて幹事をしていましたし、熱意のある後輩達も2年生になったら一人で担当をしていました。大学合格後にまだ高校生ながら勉強会のメンバーに加わり、かつ研究室に朝晩出入りして学部1年生で筆頭著者として英文論文を発表した後輩もいます。
熱意があれば学年関係なくいくらでもスキルアップできますし、逆に自分で本格的に勉強しようとしない限り最上級生になっても論文はほとんど何も読めません。清水は同様の会を医科歯科の博士課程1年の科目でもやっていますが、授業として参加している博士1年生ですらほとんど何も分からないところからなのです。
もちろん初めてなら1論文読むのに1週間はかかるでしょう。だからこそこの勉強会は隔週開催で、初めての方でも十分勉強する時間が取れるようにしているのです。研究って大学の学年ほとんど関係ないので、若さ溢れる行動力でいくらでもカバーできると思います。
この勉強会は清水が講義をするスタンスではなく研究室の論文抄読会と同じように参加者が持ち回りで担当することで運営しています。講義では5%しか身につかないが、人に教えることで90%身につくという研究結果は聞いたことがあるかもしれません。受け身姿勢ではほとんど身につかないからこそ、みんなが持ち回りで担当するという制度になっています。そのため、1回だけゲスト参加者として加わっていくのはwelcomeですが、それ以降も参加するということであれば担当もしていただくことになります。現状20名前後で2週間ごとの金曜日 (17:30-18:30) 開催なのでざっくり年に1回くらいのペースで順番が回ってきます。その期間の中で順番は調整できますので、他の予定がないタイミングもあるかと存じます。
Biomedical Data Science Clubにサポーターとしてご参加いただくことは大歓迎です。詳細はこちらをご覧いただきたいのですが、最新の動向にキャッチアップすることができます。
一方で、正規メンバー(学生メンバー) としては、博士課程の学生や社会人の方は一般的には加入いただくことはできません。
博士課程ではそのラボの教員が指導に全責任を持っており、また学生はその指導を受けて世界初の何かを創出して論文化・学位取得を目指すわけです。そういった成果が全ての世界にいるわけですので、自分の研究には直結しない内容を年下の学生とともに勉強する時間はほとんどないかと思います。生命科学や医療系の博士課程の学生で、清水から数理情報科学を学びたい方はBiomedical Data Science Clubではなくダブルメンター制度をご利用ください。例外的に、MD-PhDコースのように学部を休学して博士課程に入るコースの方は、ゲスト参加時に医学部や歯学部の6年生相当までであれば博士課程であってもメンバーに加入いただけます (例, 医学部4年で休学し、先に博士課程に入学して2年生なら医学部6年生相当なので加入可能)。
また、社会人の方は本業はお仕事であり、この会で担当をしていただく時間の捻出は難しいと理解しております。例外的に、学部卒業後に例えば大学院進学のための資金を得るために就職したのであり将来的に研究者を目指したいという方は、ゲスト参加時に医学部・歯学部6年生相当までであれば加入可能です (例として4年生学部卒業後、社会人2年目であれば医学部6 年生相当であり加入可能)。
【参加方法】
この勉強会は幹事学生またはアドバイザーの清水からの招待制です。参加してみたい学部・修士課程の学生さんは、所属・名前・次回あるいは次次回のどちらにゲスト参加したいのか・データサイエンスに関する経験 (もちろんなくても可) ・生命科学や医療領域に関する知識 (もちろんなくても可) などを書いて清水へメール (アドレスはこちらのページにかかれています) を送ってください。このメールアドレスへ勉強会の資料 (10 MBほど) を送付しますので、スマホのメールアドレスの方は10 MB程度の添付ファイルを受け取れるように設定をお願いします。
初回はゲスト参加者として勉強会にご招待します (あくまで直近のzoom勉強会へのゲストであり、この時点では勉強会とは別に毎日シェアされているslackのリソースはご覧になれません)。もしゲスト参加してみて引き続いて一緒に勉強したいという場合は、あらためて清水にメールをお送りください。この勉強会に2回以上参加する方は正規メンバーとしてslackにもご招待しますが、同時に上述の通り勉強会担当のローテーションにも入っていただくことになります。ただこれはとてもチャンスです。自分が勉強したい論文を選び、人前で発表するチャンスをもらえ、さまざまなフィードバックがあり、さらに似たような領域に興味がある年が近い人達とネットワークを作れるわけですから。ぜひ楽しんで一緒に勉強しましょう。
いつの時代も、変革を起こすのは若い世代です。新しいテクノロジーを20代の今勉強して、それぞれの分野で大きなイノベーションを起こしましょう!!