東京医科歯科大学の医学科4年プロジェクトセメスター (プロセメ)および歯学科4年研究実習受け入れについてご案内します。

世界に通用する医歯学者の卵を養成します

当分野は医療・バイオ・データサイエンスにまたがる広い範囲の研究をしています。そのため各自の興味関心に近いテーマを遂行していただける可能性も高いと思います。AI創薬や数理モデル、バイオ/クリニカルインフォマティクスといったいわゆる「ドライ系」が主体ですが、希望する学生さんには「ウェット系」(実験系) との融合が必要になるプロジェクトも提供できるでしょう。

過去には、筆頭著者として学会発表した人や、(他大学の学生に対するオンライン版のプロセメで) 論文発表した人もいます (感想文はこちら)。また、2023年度に受け入れた2名はいずれも2024年中に国際学術誌に論文発表予定です。熱意があれば学部生ながら世界初の成果を得られるでしょう。

当研究室では研究実践プログラムにおいてグランドマスター制度として50項目のスキルセットを提示していますが、もちろんプロセメ配属学生もこれらの修得を目指すことができます。

募集定員および求める学生像

募集定員は原則として医学科が最大3名まで、歯学科が最大1名まで、両学科合わせて最大4名までです。募集するのは、「自ら貪欲に学び続け、また学んだことを仲間同士でシェアしさらに高め合っていけるような向上心と協調性のある方」というのが受け入れの必須条件になります。数理や情報科学領域の事前のスキルは不問ですが「情熱に勝る能力なし」という言葉もあるようにしかるべき情熱を求めます。

また「世界に通用する」というのが当研究室における実習の到達基準ですので、学生さんには筆頭著者として国際学術誌に成果を発表し世界中の方に読んでいただくところまでを目指していただきます。この点からもお分かりいただけるかと思いますが、当研究室への配属は「ガチ研究」を意味しますので、初日と最後の日だけ行けば残りの期間はフリータイムみたいなものをご希望であればよその研究室にアプライしてください。受け入れる以上はこちらも責任を持って「世界に通用する医歯学者の卵」を養成しますので、みなさんもそれに応える責務があります。当研究室にマッチしない方を受け入れるdutyは医学科・歯学科の基幹分野ではない我々にはありませんので、そのような方は医学科なり歯学科なりに専属している先生の研究室にご相談ください。

必ず事前に面談にお越しください。医学科は制度上それが必須になっていますが、歯学部の学生さんは事前に研究室訪問をすることなく希望を出すことができるようです。しかし当研究室は事前訪問がない学生は受け入れないことを歯学部の研究実習責任者の教授に承認されていますので、事前面談なしで希望を出した学生さんは他のラボに配属になりますのでご注意ください。以前はそういう学生も受け入れたことがあったのですが、歯学部の科目責任者の先生ですら「そのような学生はこの10年ではじめて」とおっしゃるほど大きなトラブルを引き起こした学生がいたからです。歯学科の先輩のことは後輩のみなさんには何も関係がないとはいえ、我々のマンパワーも有限ですのでご理解いただけますと幸いです。

当分野の求める学生像にマッチしない方をプロセメで受け入れることはありません。ちょっとデータサイエンスを勉強したいだけの方は、学内の「データサイエンス」を標榜する他の研究室にコンタクトしてください。学外に行くために、書類上の学内受け入れ研究室になってくれという依頼にも原則的には応じられません (当分野に以前から所属しているとか、そうでなくても研究実績がもうあるとかの方は応相談)。逆に、清水は学部生のエピソードにも書いた通り研究室配属期間は朝7時半から夜は22時まで研究に取り組んでいましたが、意欲的な学生さんには他のラボよりずっと多くのことを教えたり機会を提供できるでしょう。私達は「選択と集中」、つまり全員に薄くではなく、ごく一部の方だけで良いからその代わり非常に濃密な教育を提供したいと考えています。事実、昨年配属された医学科4年生はプロセメ発表会において学生同士の互選で1位になっています。ある意味当然の結果です。

このように清水研に配属というのは、スーパーハードモードであるとご理解ください。ストイックに自己投資をしたいと考えていない方や、人前でのプレゼン・討論等に強いストレスを感じる等のメンタルが弱い方は不向きです。情熱のある方には自信を持ってオススメできますし昨年の配属生も楽しんでやっていましたが、勉学よりもやりたいことがある方はそのような研究室を選択したほうがハッピーでしょう。

2023年度のプロセメ配属生である伊東さんから後輩へのメッセージをいただきました。伊東さんは非常に熱心に取り組み、期間内にバイオインフォマティクス学会認定技術者試験に合格 (感想文はこちら) し、また研究成果を12月の日本分子生物学会 (生命科学・基礎医学系で最も大きな学会) で筆頭演者として発表します。

東京医科歯科大学医学科4年 (2023年10月時点) の伊東巧と申します。AIシステム医科学分野でプロジェクトセメスターを過ごさせていただいたのでその実態や感想を共有させていただきます。私の主観が多分に含まれていること、活動の内容については今後変更の可能性があることをご承知おきください。本分野は私達が初めてのプロセメ生ですので、ホームページなどご覧になり戦々恐々としながらもプロセメでの所属を考えている方々の参考になれば幸いです。 (長いです。すみません。)

結論から申し上げると、AIシステム医科学分野 (以下清水研) はプロセメ期間中に研究室の活動にしっかりコミットし、研究のみならず幅広いサイエンスについて学びたいと考えている方には恐らくこの上なくおすすめ出来る環境です。一方で合わないであろう方もおりますし、mandatoryなeffort量が少なくないですので、上記に該当すると感じた方も所属を検討する際にはよく考えることをおすすめします。

清水研はM&Dデータ科学センター (難治研・生材研のようなものです) に属する研究室でドライ系の基礎研究を主として行っています。 (ウェットの研究設備を現在整備中で今後はウェット実験も多少は行えるようになると思いますが、私はプロセメ期間中にはウェット実験は行えませんでした。) 清水教授が医学部出身という事もあり医学に関する研究を中心に行っていますが、工学部や薬学部など幅広い出身のスタッフの先生方が在籍していることもありベーシックなバイオロジーの研究もあります。 (実際私がプロセメ期間中に取り組んでいた研究は手法開発寄りで医学にすごく近い内容ではありませんでした。)

清水研 (でのプロセメ) の最も特筆するべき点は勉強会及びラボ内でのミーティング (以下まとめて勉強会とします) の豊富さです。自分のカレンダーを見返して確認すると最初の1か月である6月には清水研の勉強会が30回ありました (平日25日) 。各勉強会は平均して1時間半強ほどですが、双方向性のものがほとんどで学生が説明しながら進んでいくものが多いので事前準備にかなり時間が取られます。例えば、毎週生命情報科学の雑誌から1つ論文を選んでパワーポイント資料を作成の上発表するという勉強会があります。またそれとは別に隔週で論文の輪読会があり、1年目の学生は論文に出てくる図の説明を行う必要があるので、事前に読み込んだうえで輪読会の前にディスカッションをして理解を深める必要があります。6月が1番忙しい月ですが、7月以降も平均で月20回程あります (8月はno meeting monthなので基本的には研究に集中できます) 。このような事情から結構な時間をメインの研究以外の部分に割くことが求められますが、その代わりに専門分野以外のライフサイエンスの論文を比較的短時間で読む力がつきますし、ドライのラボであるのにも関わらず遺伝子工学や合成生物学・ウェット実験の手順について基本的な知識が身につきます。さらに数学 (解析学) や情報学・アドバンスな統計学等普通のバイオロジーの研究室では勉強しないようなことも学ぶことが出来ます。これらの勉強会のおかげで、前日と当日の軽い勉強だけでバイオインフォマティクス技術者認定試験に合格することが出来ました。いずれは忘れてしまうものもあるかと思いますが、広汎な学問領域に触れ・勉強した経験は貴重な財産であると思います。

研究の進め方については、テーマを頂いてその領域について先行研究等を勉強する所から始まることは比較的オーソドックスかとは思います。清水研の特徴は、大学院生を対象にしたメジャーな奨学金制度である学振DCに準拠した計画申請書をはじめの1か月で作成し清水教授に提出しOKを頂いてから研究がスタートするということです。当然自分で作った初版は散々なものなので、先生と何度もやり取りをしてブラッシュアップしていきます。研究が始まると基本的には個人で作業をし2週に1度のペースで進捗報告がありグループでディスカッションをし今後の方針を決めていきます。この機会外でも何かしら指導していただいている先生とディスカッションしたいことがあれば基本的にはいつでも対応していただけます。このようにサポートはしっかりとしていますが、手取り足取り教えてもらいながら研究を行ったり、毎日やったことを報告する感じではありません。スパコンなどの環境構築やエラーへの対処は基本自分で行います。研究プロジェクトの数や規模感に違いはありますが、基本的に清水研のプロセメの学生は1年目の大学院生と同じやり方で研究を行うのである程度の自立性が求められます。一方で図の作り方や見せ方、スライドの作り方、研究ノートの書き方など研究室での活動のベースとなる基本的な部分はしっかりと指導されます。私も研究ノートの書き方について何度もご指摘いただきました。

作業は基本パソコンですが、勉強会などもあるのでラボに通う形になるかと思います。 (清水研は湯島キャンパスではなく橋を渡った向こうの駿河台キャンパスにあります。) ラボへは勉強会に間に合う時間であれば比較的好きな時間に行って帰ることが出来ますが、基本的に平日は1日研究室にいることになると思います。土日については私は予定がない時間は居る様にしていましたが、家からでも作業が出来ます。

前述の通り清水研では勉強会とその準備をした上で研究もしっかり進めていく必要があります。要領がよい方でしたら他の活動との両立も十分可能かと思いますが、勉強会などにきちんと取り組んだり自主的に興味を持ったことを勉強したりしたいのであれば清水研での活動に相当の時間と労力がかかります。ですので個人的な意見ですが、プロセメ期間中に研究以外に週二回程度以上の頻度で継続してやりたいことがあるという方は清水研以外で活動した方がトータルで得るものが多いと思うので他のラボをお勧めします。また、最初の1か月を研究計画書の作成に費やし、それ以外の期間も (8月を除き) 勉強会が数多くある中で研究を進めていくので、逆にプロセメ期間中は研究だけに没頭したいという方についても他にベターな選択肢があると思います。

ここまでかなりタフなことを書いてきましたが、ラボの雰囲気は非常に良いですし来年度以降は先輩の大学院生もいらっしゃるので、ある程度自立した上でのサポートは万全だと思います。5か月という短くはない期間に厳しい環境に身を置いて修行することは、基礎研究者を目指す方にとっては非常に魅力的でしょうし、臨床に進む医学生にとってはまたとない機会だと思いますので。この文章をお読み頂いたうえでまだ興味があるという方は是非一度見学に来ることをおすすめします。

最後まで読んでいただきありがとうございました。皆さんがプロセメについてしっかりと考え、納得した決断が出来ることを祈っております。

2023年度プロセメ生・伊東 巧

私たちの強み

医科歯科の中にも広い意味でのデータサイエンスをやっている先生は何人もいらっしゃいますが、それらの先生方は医師免許やその他医療系の診療現場での経験、バイオ実験系の研究実績、海外での研究経験がない方がほとんどです。私は医学よりも前から情報科学に触れており数々の賞もいただいてきました。医師免許をとって研修医も修了しているので、診療の初歩は身につけています。また大学院時代はいくつかのデータサイエンス論文を出していますが、それとは別に実験系の論文で博士号をとりました。さらに、アメリカHarvard Medical Schoolへの研究留学もしており国際的な視点も身につけています。このように医学・生命科学・情報科学のトリプルメジャーである先生は日本国内にはほぼいらっしゃいません。他の先生方と比べみなさんとバックグランドが近いこともあり、国際的な視座も含め多様な見地からより広範な学びを提供できるでしょう。

私たちは医療・バイオ・データ科学の融合分野を研究しています。AI創薬や数理/物理モデル・分子生物学といった基礎的な研究から、がん・感染症・生活習慣病・免疫疾患など幅広い疾患の研究まで手掛けていますし、いずれも海外の専門家集団による厳しい査読に合格して論文発表をしておりますので、科学的妥当性を満たしそれぞれの領域における新たな1ページを切り開いてきました。これはそのまま強みにもなり、清水研に所属することで1年次の延長である教養科目・基礎医学・臨床医学・データサイエンスの多様な領域を学ぶことができるということです。「耳学問」という言葉はご存知ですよね。たくさんのトピックスに見聞きするからこそ、本学を卒業後に専門分野が決まった時に、他の医師にはない独自の視点が築けるのです。私たちの分野はデータ科学センターにありますが、データ科学はもちろんのことそれだけにとどまらない広範な武器を授けたい、そう考えています。

今の知識は問いませんし、ゼロから学べるよう5月開講の事前勉強会を用意しています。

指導担当者

研究については、学部生1人につき

  • 修士課程学生1名
  • 講師または特任助教1名
  • 清水

の3名で指導します。その他の事項については、ラボ内の全スタッフ・大学院生がサポートします。

当分野が提供する研究環境

  • オープンアドレス式の机・椅子 (24時間利用可)
  • 高速Wifi環境
  • ラボ共通図書 (関連書300冊)
  • スーパーコンピューターSHIROKANEアクセス権 (家からでも利用可)
  • 配属前に学習するオンライン予習教材 (200時間分の演習教材)
  • 実験や情報解析に関わる膨大なオンライン教材・リソース (1万ページ以上)
  • (希望者のみ, 7月以降) 一通りの分子細胞生物学実験環境 (ただし動物実験は不可)

配属・研究の流れ

当研究室を候補の1つと考えている方は、メールで清水に面談をお申し込みください (すでに研究室に通っている学生さんは面談不要です)。面談は日程調整の上、駿河台キャンパスにある私の部屋で行います。平日午後に1時間ほどを確保していただきます。学生さんには面談前日までに自己紹介スライドをメールで送付していただき、当日は自己紹介をしていただいたあと、こちらからも分野の概要をスライドを使ってご説明します。そしてちょっとしたツアーをしてどんな場所なのかを見ていただきます。

その上で配属を希望される際には事務の案内に従って登録してください。

配属が内定したら、すぐにオンライン予習コンテンツを提供します。また、5月・6月にデータサイエンスに関する書籍の輪読会をオンラインで行います (学生さん方の日程調整の上で全5回, 詳しくはこちら)

配属が開始したら最初の1ヶ月はスーパーコンピューターを使ったバイオインフォマティクス解析技術の初歩や機械学習手法を身につけていただきます。また、論文によく出てくる実験結果の図について、どのように読めばいいのかを一緒に勉強します。この1ヶ月目には、並行して先行文献調査を徹底的に行なっていただき、Figure planを考えていただきます。

2ヶ月目からは研究開始で、直属の先輩として修士課程の学生1名、さらに上のアドバイザーとして教員1名の3名チームで研究に携わっていただきます。配属中は修士課程大学院生に準じて研究活動を行います。修士課程1年生は7月および9月に数理モデルの勉強会を行いますが、配属中の学部生も希望があれば一緒に勉強できます。

夏休みは、修士課程学生は1週間だけなのですが学部生には好きなタイミングで最大2週間とっていただけます。

研究発表1ヶ月前になったら、その時点でのデータをまとめはじめます。プレゼンの指導は修士課程学生と清水が行います。プロセメ発表会とは別に、私たちのラボメンバーだけの内輪な会でも発表をお願いします。普段は日本語の発表でいいですが、最後の1回だけは国際学会に準拠し、発表および討論を全て英語で行っていただきます

配属の期間 (医学科は6ヶ月、歯学科は2ヶ月) だけで論文にまでたどりつくのは難しいと思っていて下さい。ただ、骨格は見えているのであとは通いながらでもできますし、家からでもスパコンにアクセスできます。配属終了から1年くらいのスパンでコツコツ取り組めば、学部生時代に筆頭著者として国際学術誌デビューも夢では全然ありません

また、プロジェクトセメスターでAIシステム医科学分野に出入りしている方であれば、希望すれば清水研の研究者養成コースに応募することができます。この制度はドライとウェットの両者に精通する稀有な医師・医学者を目指せる、返済不要の奨学金が支給される、大学院を原則1年短縮で卒業できる、博士号取得後すぐに特任助教の待遇で雇用といった大きなメリットがある人気コースです。また、先に大学院博士課程に入り高度な研究トレーニングを行うMD-PhDコースも提供しています。