JAFOE 2023参加レポート

Japan America Frontiers of Engineering (JAFOE, 日米先端工学) シンポジウムに参加させていただいた。

日本工学アカデミーが、全米工学アカデミー(NAE)、科学技術振興機構(JST)との共催で2000年より隔年で実施している分野横断的な国際シンポジウムである。ホームページによれば「日米両国の選抜された若手研究者(30~45歳程度)が30名ずつ、計60名が一堂に会し、3日間にわたり最先端工学分野の4つのテーマ(毎回新規に設定される)について発表・討議を行ないます」と書かれている通り、2023年は材料科学・ロボット・環境学、そして感染症の情報科学の4領域がノミネートされ、普段はまず接点を持つことのない私にとって異分野の方だらけの回でとても刺激的だった。

またこの会合は完全招待制がとられており、アメリカ側のアカデミア関係者はみな若きPI達で、日本側もPIか、あるいはACT-Xなど国の大型予算をとっている新進気鋭の30代前半の助教の先生がほとんどだった。産業界からは中外製薬やエーザイなど大手製薬企業で活躍する40前後の方や、アメリカのスタートアップ企業の若手CEO、あるいは航空機メーカー・ボーイングやAI関連で知られている有名企業の看板研究者など、錚々たる顔ぶれであった。そんな「工学」シンポジウムに唯一の医師として招待をしていただき大変光栄である。

清水 秀幸

60名の参加者は原則として全員ポスター発表をするが、そのうち16名は口頭発表をする機会が与えられる。今回私は口頭発表演者としても機会をいただいた。通常の学会と異なりこの学会は発表25分・質疑20分と1演題の持ち時間が長く、それでいてどの演題も質疑が途切れることなく続きその熱気に驚いた。

どの演題もとても印象に残っているのだが、日本側の口頭発表演者としては金属の第一原理計算で卓越した業績を上げている熊谷 悠 教授 (東北大) 、アメリカ側の演者としては環境学のPIを務めるProf. Yuan Yao (Yale University)氏の発表に圧倒された。

また、日本人参加者だとロボット工学の大谷 拓也 先生 (早稲田大)、実験系の無機化学者である山崎 貴大 先生 (東京理科大)、どんな分子も自在に創り出す有機化学の研究室を運営する成田 明光 先生 (沖縄科学技術大学院大学)、地球環境とエネルギー領域の研究をしている光斎 翔貴 先生 (立命館大) 、海底火山の専門家である中村 龍平 教授 (東工大)らのポスター発表や昼食などで聞いた話は学術的にも業界の内輪話も知らないことばかりでとても勉強になった。近い分野だと、産業界からは中外製薬のデータサイエンティスト丹尾 真理子 氏やエーザイ株式会社のComputational Chemistである小室 靖明 氏とも交流を持った。また、アメリカ側の参加者だとProf. Jamie Spangler (Johns Hopkins University School of Medicine) とタンパク工学およびpotential collaborationについて討論した他、米国ポスドク時代に知り合いになったメンバーが2人もおり、それぞれ米国のPIポジションを獲得して研究室を立ち上げたという近況をきき、また旧交を温めることができた。

この国際学会は産総研の人工知能研究所へのexcursionや種々の交流会も含まれており、ここに書ききれない日米の数多くの方々といろいろなお話をさせていただくこともできた。招待制のこのシンポジウムに機会があったらまたぜひ参加したいと思う。

生命医科学・創薬関係の日本側の招待参加者と。左から丹尾 真理子 氏 (中外製薬)、夏目やよい 氏 (医薬基盤・健康・栄養研究所のPI)、清水、小室 靖明 氏 (エーザイ株式会社)、西田 奈央 氏 (早稲田大学)