私達の研究室に興味を持ってくださりありがとうございます。私達は研究教育制度に絶対の自信を持っていますが、東京科学大 AIシステム医科学分野へようこそのページもご覧いただきご自身が学びたいことを学べる環境かをいま一度ご確認ください。

このページには教育のページにまとめた東京科学大・清水研の大学院制度についてこれまでいただいたご質問とその回答をまとめています。百聞は一見に如かずともいいますから、お気軽に面談のページをお読みになってコンタクトしてください。私達の研究室は学部とは一切つながっておりませんので、学部3年で仮配属され4年で卒研生として本格配属して、そのまま大学院にあがってくるいわゆる内部生は一人もおりません。出身大学も出身学部も不問ですし、むしろ私達のチームに多様な見識をもたらしてくださる学外出身者、あるいは医療系以外の学部出身者の方を歓迎しております。

大学統合に関するご質問

私たちの研究室は旧東京医科歯科大学 (駿河台キャンパス、最寄りはJR御茶ノ水駅)にありました。東工大との大学統合により東京科学大学Science Tokyoが誕生しましたが、当研究室は前と同じ駿河台キャンパスにございます

所属は、部局としては新大学の研究の中枢として新設される総合研究院で、学位に関わる大学院としては医科歯科時代と同じ医歯学総合研究科の所属です。

ですので、学生さんとしては医歯学総合研究科の院試を受けて総合研究院M&Dデータ科学センターAIシステム医科学分野の当研究室で研究をしつつ、医歯学総合研究科の講義等をとって単位をとり、学位取得を目指すということになります。

大学院に関しては旧医科歯科のものがScience Tokyoにおいてもそのまま適用されます。

修士課程については2年間で、これはよほどのことがない限り (つまり欠席が多いなどがない限り) 2年で修士を取得できます (逆にいくら優秀でも2年かかってしまいます)。

修士課程を卒業すると修士 (医科学) 、または副指導教官をお願いする必要がありますが、修士 (歯科学) ・修士 (口腔保健学) ・修士 (理学) ・修士 (工学)・修士 (保健学) のいずれか1つ希望するもの取得できます。

博士課程については医学系ですので原則4年間ですが、こちらは絶対に4年でというわけではありません。優秀な上に研究にひたむきに打ち込み論文がアクセプトされれば1年短縮して3年で博士号を取得 (早期修了) できますし、逆に論文成果が出なければ4年で取得できず論文が出るまで留年になります。一般的にはどれくらいの年数がかかっているのかは文部科学省発行の「博士課程の専攻分野別 入学年度別 卒業者数」等々で調べることができますし、例えばこちらのブログにも書かれています。

特に博士課程については、自分のキャリアは自分で切り開く必要があります。

博士号は、次の3つのものの中から自分で希望する1つを選んで取得できます。

博士(医学)、博士(学術)、博士(数理医科学)

また、複雑な事務手続き等が必要ですが博士(歯学)をとることも可能です。

ラボ全般についてのご質問

私でも大丈夫かという問い合わせは最も多い質問です。これに対する答えはいつも同じで、「全て自分の努力次第」です。

1万時間の法則は聞いたことありますね?何事もプロになるには1万時間の下積みが必要だということです。大学院時代は下積み期間ですので、1日10時間研究+家で2時間の勉強をしたとしましょう。週あたり5.5日、そして年50週その生活をすれば、年間で3300時間を確保できます。大学院博士課程は4年制ですし成果を出せば3年で卒業できますが、このペースで努力を継続すれば博士をとるまでには1万時間の下積みをすることになります。ここまでやって論文をいくつか発表していれば次の研究ポストも遠からず見つかるでしょう。人生100年時代、大学院生の数年間は他のことを多少犠牲にしてでも全力投球すれば長い目で見れば大きなリターンが見込めます。それだけの覚悟があるなら大丈夫です。

反対に、9時5時で土日祝はお休み、という学部生の延長のような生ぬるい考えの場合はどうなるでしょうか? 昼食休憩を1時間として1日7時間、土日祝は年間120日あるので年間では7x (365-120) = 1715時間ですね。1万時間到達まで6年かかります。修士から入学して博士4年まで合わせればギリギリ学生の間に1万時間に到達しますが、はっきりいって6年もかけて1万時間しか研究に時間を割けないなら研究職に進むのはまず無理です。私はこの20年ほどさまざまな方を見てきましたが、最初の修行期間である大学院時代に週に40時間しか研究していないのに卒業後に研究を主な仕事にした方を存じ上げません。下積みだからこそストイックに打ち込んで少しでも早く一人前になろうという強い向上心が不可欠です。

要するに、研究を本気で仕事にしたい人に必要なのは、科学や技術に対する強い興味関心と、そして少なくとも下積みの修行期間は猛烈に努力し続けること、ただそれだけです。特別な才能は要りませんが、世間から見ればストイックな生活を数年間も行うわけですからそういうことをできるということそのものが素質なのかもしれません。最も、本人は学問が好きでかつ自己研鑽でやっていますから長時間の仕事と違って全く苦ではありませんよ。

当分野では本気で研究に打ち込みたいという学生さんはバックグラウンドによらず全力でサポートをします先輩の声もお読みください。

趣味などもっと優先順位が高いことが他にある学生さんは当分野では責任をもって博士号をもつプロ研究者のスタート地点にできないので受け入れできません。あまり努力しなくても学位をとれるような素晴らしいラボを他で探してください。

集中的な自己投資はいつの時代も非常に重要です。

関連して、医療系出身ではないけど研究できるかというご質問もしばしばいただくのですが、基礎医学研究のすゝめに書いていますのでご覧ください。

2番目に多い質問は、どれくらいの事前知識が必要かというものです。

これは持論なのですが、「希少価値の高い人」になることが極めて重要です。言い換えれば、代わりが効く人になってはいけません。

希少価値の高い人というのは、例えばあることを極めていて、1000人に1人くらいのレベルにいるというのがあるでしょう。しかし1000人に1人のレベルになるのはどんな分野でも大変です。それよりも10人に1人のレベルでいいから、それを3つの分野で達成すると、あわせ技で1000人に1人の希少価値の高い人になれます。スキルは掛け算なのです。

私たちのグループはまさに異分野融合型の研究をしていますので、お願いしたいのは今やっていることに全力で取り組んでほしいということです。それがスキルの1つとしてアピールできますし、それを1つの強みとした研究を展開することも将来的にできるでしょう。

それにプラスして、11月までは次のことを勉強しておくといいでしょう。

【生命科学・医学系の方】

【数理・情報系の方】

【AI創薬研究をしたい方】

  • ケモインフォマティクスの基礎
  • 量子化学の基礎

また、12月からは合格者を対象とした勉強会を行いますし、たくさんの教材をリソースとして提供します。それらを4月の入学までにしっかり勉強しておくと、良いスタートダッシュを切れそうです。

当研究室では他の研究室ではあまり見かけないさまざまな取り組みをしておりますが、研究と教育、それぞれから強いて1つずつ選ぶならこのようになります。

まず研究については、大学院を卒業した後に研究者のポジションなりグラントなりを獲得するためには研究実績としての論文数が必要です。当研究室では博士卒業までに10本を超える1st論文を執筆できるよう超速intensiveコースを体系的に行っております。ショートスパンで研究をまとめ論文をたくさん書く訓練は、数年単位で挑戦するより大きなプロジェクトと並行することでよりいっそう研究者として羽ばたいていただけるものと自負しています。

教育については内部勉強会です。2年間にも及ぶ体系的なML特論・CS特論はじめ、バックグランド別にさまざまな機会が用意されており、これまでどのような学問領域を専攻にしてきた方であっても生命医科学・情報科学の融合という一生ものの知識やスキルを身につけていただけるよう配慮しています。

このような点が、当研究室ならではの取り組みの代表例かと思います。

一昔前の研究では、研究者が経験やひらめき等に基づいて仮説を形成し実験で確かめていました。

時代は変わり、昨今はさまざまな情報を容易に網羅的に取得できるようになりました。このビッグデータから何かを見出すには統計・数理的方法、情報学的手法が不可欠であり、これら広義のデータサイエンスを駆使して仮説形成を行う時代になりました。この仮説を生命科学実験で検証し、次のデータ取得のネタを得るのです。

このように「大規模データ取得」「データサイエンスによる仮説形成」「検証実験」の3つからなるサイクルを回し続けることが未来の医療を創るようなインパクトのある研究を行う上で非常に大事であり、清水はこれを「三位一体研究」と呼んでいます。

もちろん、これだけ学問領域が多様化している現代ではこれら全てに精通することはできません。当分野ではデータサイエンスを主分野とし、その他の2つについても一定の知識・技術を持ち、専門的なことはこれら2分野を専門に行なっている研究チームと共同研究をすることで、グループとして三位一体研究の推進を目指しています

大学院生には、データサイエンスは極めた上で、他の2分野についても理解のある稀有な人材になってほしいと願っています。

もちろんです。情報系を主体としながら、それでいてライフサイエンスの実験できる研究室はかなり少ないと思います。また、清水は医師であり、医学科の座学で習う程度の医学知識を1年間で身につけていただくための「朝活」も実施しています。情熱さえあれば、どんな学問領域をこれまでやってきた方でも大丈夫です。

東京科学大学 Science Tokyoは指定国立大学法人であり国内トップの研究大学の1つとして文科省に指定されております。そのため、本学の大学院は研究者になるための武者修行期間と私は捉えておりますので、教員は進捗を聞いてさまざまな助言をするものの、そのテーマに主体的に取り組むのは学生さん本人です。
 
アカデミア研究者を目指したいという方には最初からかなりの裁量を持って研究活動ができるとおすすめできますが、反対に手取り足取り型の細やかな指導を期待している方には当研究室は合わないと思います。
 
また、大学院生の勉強会はみっちりします2年で研究者としての即戦力にすることを目指しています。何も理論を知らなくても機械学習等が簡単にできる時代になりましたが、背景の数理を知らないというのはNGです。大学院1年生は平日はほぼ毎日のように何らかのゼミをします。私が教えるわけではなく、大学院生が主体的に教え合う会です。一応私が予習のポイントのようなメモは用意していますが、特にバイオ系の人にとって数理はかなりヘビーだと思いますし、私のメモがあっても特に最初の1年はとてもたくさんの勉強が必要です。ゼミについてはこちらもご覧ください。また研究室には350冊の本を常備しておりメンバーは自由に閲覧できるようになっていますし、その他webリソースも取り揃えています。
 
研究は何もないところから生まれるわけではなく、どんな研究も既存の研究の上に行われています。そのため研究は基礎知識 (数理含む) がないと全くできません。清水研の指導方針は、知識についてはみっちりと身につける手助けをしますが、その知識を前提とした研究活動については (研究者になるためには試行錯誤が不可欠と考えているので) 学生が自ら主体的に取り組み教員は定例ミーティングでアドバイスや助言をするに留めるという方針をとっています。
 
本学のような世界に伍する研究機関の大学院はプロ研究者養成機関です。もちろん教員がお膳立てをする「魚を与える」方式の方が私達としても楽なのですが、自分で魚を釣れないと卒業してからプロ研究者として生き残れません知識やその他の道具は用意するから、学生さんには「魚の釣り方」を苦労しつつも主体的に身につけてもらう、それがアカデミア研究者としてやっていくための最良の教育だと考えています。
 

博士号の価値について書いていたらとても長くなってしまったのでこのページから切り分けました。こちらのページをご覧ください(パスワードはphdです)。

本学大学院制度についてのご質問

修士課程と博士課程 (社会人大学院生は含まず) 合わせて毎年最大8名まで受け入れが可能です。当研究室は学部とは全くつながっておらず、内部の卒研生がそのまま上がってくるというような研究室とは異なりこの人数の希望者が来たことはこれまでありません。ですので、事実上は制限がないとお考えいただいて大丈夫です。

大学にはそのような制度もあり、特に臨床の教室では社会人大学院生を受け入れている分野は多数あります。しかし当分野では原則として常勤の仕事をしながらスキマ時間に大学院生というのはできません。1万時間ルールは聞いたことありますね? その道のプロになるにはどんな分野も1万時間の練習が必要だということです。常勤の仕事があると、研究できるのは週に1-2日程度、多くて20時間ほどでしょうか? 1万時間に達するには500週、つまり丸10年かかってしまいます。片手間の研究では大学院の数年でプロになるのは無理なのです。

例外的に、この分野にかなり先行投資をしていてすでに経験豊富なら可能かもしれません。例えば先程の例だと4年で4000時間ほどになりますが、すでに6000時間ほど経験がある状態なら合わせて1万時間になるため期限内に学位取得は可能かもしれません。

そうした方のために、社会人大学院制度も若干名ですが募集しています。

すでに十分な経験と知識、そしてそれに見合う実績をお持ちなら論文博士を目指すというルートもありますが、研究がほとんど初めてなのに常勤のお仕事をしながら、という場合は責任をもって学位指導ができないのでお断りさせていただきます。

本学の大学病院は2022年から「基礎研究医プログラム」が始まり、研修医をしながら基礎系の大学院生をできるようになりました。

「基礎研究医プログラム」は将来基礎系の研究者を目指すコースですが、基礎医学系の競争相手は医師ではありません。理工系・農学系など、さまざまな学部出身の優秀な方との熾烈な競争に勝たなければいけません。医学生がのんびりしている間に、彼らは学部4年 (卒業研究)・修士2年間、そして博士課程4年間と、バイトもせず7年間も基礎研究にひたむきに捧げています

そんな彼らと博士号をとる時には対等以上になっていないと基礎研究者としては生き残れません本当に基礎研究者として活躍したいのであれば、大学院には4年間本気で挑戦するべきだと清水は考えています。

そういった厳しいことも理解した上で、それでも自己責任で初期研修と大学院を同時に行いたいという方には、受け入れる制度も用意しています。詳しくはこちらをご覧ください。

いいえ、選択できません。

本学の大学院生がオプションとして選択できるCEPプログラムは、社会医学 (アンケート調査等) を勉強したい人にとっては素晴らしい制度ですが、我々の研究室の方向性とは全く関係ありません。CEPは授業や実習が多いので研究や内部勉強会に支障がでてしまいます。もし本学の大学院生としてCEPプログラムをとりたいのであれば、CEPプログラム担当教授である藤原先生、高橋邦彦先生、平川先生、相田先生の研究室を受験してください。

当分野に興味がある方は遠慮なくメールをお送りください
面談後によく考えた上で当分野を志望したいという場合には、本学の大学院入試へ出願する必要があります。
ただそれに先立ち、東京科学大学 医歯学系 (旧 医科歯科大学) では分野長へ出願許可を事前にとることというのが必須条件になっています。
そのため清水に再び連絡をして、出願したい旨をお知らせください。出願許可は書面・メール等で行う必要があるため、面談の時に口頭で、というのは応じられません。また、例えば前年の秋など早い時期に面談をしていても、出願する年度 (4月以降) にならないとこの出願許可は出しません。素晴らしいラボは他にもたくさんありますので、ぜひそれらの先生のところをいろいろ訪問させてもらってください。

出願許可をもらったら期日に間に合うように願書を本学大学院入試課に郵送します。
当分野の分野コード「4630」と、出願許可をもらった日付を記載する必要があります。
修士課程は例年6月25日頃、博士課程は例年7月25日頃が締め切りです。

修士課程は8月上旬、博士課程は9月下旬頃にある大学院試験を受けていただきます。

なお、出願完了したら書留の控えの写真やPDFとともに清水宛にメールをしてください。以前、願書が期日までに大学に届かないというトラブルがあったので。

入試に関するアドバイスを求められても適切なことは言えませんが、特に英語が一番差がつきがちな科目ですので重点的に勉強するといいのかもしれません。
合格最低点をクリアすれば入学はできますが、在学中、特にまだ論文業績がないうちはどうしても入試の成績がいろいろなところで評価指標として使われてしまうこともあるかと思います。

合格後の入学手続きが終わったあと、同期になるメンバーで初顔合わせを11月にオンラインで行い、プログラミング等の自習教材を提供します。現状の生命科学・医科学・数理情報科学の経験によって必要な時間は変わりますが、習得にはおよそ100-200時間かかりますので時間を確保してください。

それ以外に、12月から2月上旬にかけて定期的に集まり日本語で書かれた医療AIや深層学習の入門書をオンラインで輪読します。詳細は事前勉強会のページをご覧ください。

その他、各自の努力で自分に足りないもの(例として統計検定準1級相当の知識など)を勉強 してください。

合格者の方々には、researchmapの開設と、当分野のホームページteamのところに掲載するプロフィールや写真も入学までにご用意いただきます
詳細は該当者にお知らせいたします。

これは私に聞くより大学の募集要項を見ていただきたいのですが、あくまで参考として記載しておきます (試験制度は変更がありうるので最新版は必ずご自身で確認してください)

修士課程

  • 外国語: TOEFL-ITPを院試会場で受験
  • 専門科目: 「工学」(数学・物理の内容)、「化学」、「生物」、「臨床検査学」、「社会医学」、「口腔保健」の中から1科目選択。詳しい試験範囲はこちら (大学のページにも同じファイルが公開されています)
  • 面接 (面接官によりますが専門知識ではなく、自己PR・志望理由・研究構想・卒業後のキャリアプランなど受験者本人のことを聞かれるでしょう)

このうち専門科目については試験本番で全科目の出題内容を見比べて一番解けそうなものを選ぶことができます。また日本語と英語で問題文が併記されており解答も日本語・英語どちらでもOKですので、日本語による大学教育を受けていない方 (留学生の方、海外大を卒業の方など) が不利となることはありません。

博士課程

  • 外国語: TOEFL-ITPを院試会場で受験
  • 小論文: 2題出題され、 1題を選択する形式
  • 面接 (面接官によりますが専門知識ではなく、自己PR・志望理由・研究構想・卒業後のキャリアプランなど受験者本人のことを聞かれるでしょう)

面接試験は英語で行うこともできますので、日本語を母国語としない方でも不利になることはありません。

入学後の生活についてのご質問

いいえ、ありません。コアタイムというのは何時から何時までいなくてはいけないというものですが、研究というのは「〜ねばならない」ではなくcuriosity drivenで行う楽しいものです。

ただし当研究室では学生さんの健康上の観点から大学院生は遅くとも21時までには帰るように言っていますし、実際に19時, 20時頃に帰る人が多いです。理系の研究室では昼頃まで寝ていて、午後になってから来て0時を超える時間帯まで研究をしているという人も少なくないようですが、当研究室では社会通念と照らし合わせて、大きく逸脱する時間に活動しているというのが常態化しているというのは認めません

学生期間は大学院が最後であり、卒業すると社会人になるわけですよね。我々は教育者として、社会に出た時に困らないよう、朝はそれなりの時間にきちんと出てくるように言っています。

また、誰かに教わるときには当然ですが指定された時間に来なければなりません。特に1年生の最初の3ヶ月はいろいろな集中勉強会を行いますので、この時期は午前9時あるいは8時半には研究室にいる必要があると思います。

清水研では土日祝はオフィシャルにはお休みです。週に1回、日曜日は本当に休んでほしいですが、とはいえ土日祝をカレンダー通り休んでも成果が出せるような能力を持つ大学院生は極めて稀でしょう。博士号をとりその後もたくさんの研鑽を積んだあとなら分かりますが、一番頑張らないといけない20代の修行中の時点で土日祝休みなんてやっていたら希望のキャリアプランを実現するなんてまず無理でしょう。土曜日や祝日はオフィシャルには休みですが、ごく一握りの才覚の持ち主は別として、自分は凡人であるという自覚のある人こそ自由の意味を履き違えないでいただきたいと思います。

ちなみに私は凡人の自覚があり、だからこそたくさんの下積みをしたいと思っていました。大学院生の頃は朝は7:30にラボへ到着し、昼食と夕食を学食で食べ、ラボを出るのは21:30以降でした。これを平日・土曜日に行い、日曜日は朝の来る時間は同じですが13時に上がるという生活でした。週80時間はゆうに越えていたと思います。祝日は関係ありませんのでGWとかありませんしお盆だろうが正月だろうがほぼ同じ生活です。大学院の数年間で、研究室に全く行かなかった日は10日もないと思います。20代の下積みの修行時代というのはこういうものだと思っていましたが、長時間修行を強制するつもりは毛頭ありません。私がPIになったのは他の院生たちより圧倒的な修行時間の長さが大いに寄与しているとは思いますが、こういう生活はむしろ体に悪いことだと今は思っています。

ですので、生活パターンは本人の自主性に任せていますが、目安としては概ねこのようなところかと思います。

  • 平日は午前9時半頃までにラボへ 
  • 午後6時半以降、順次帰宅 (実際には20時頃までは滞在している学生が多いです)。研究次第で帰りが遅くなる夜遅くなる日もあるでしょうが、心身の健康維持のため、清水研では21時以降にラボにとどまることができません。必要に応じて朝早く来たりして対応してください。夜は無理しないのが一番です。
  • これ以外に、早朝もしくは帰宅後の時間に自宅で数時間勉強 (特に1年生は清水研のゼミがあるため研究室以外の時間はとりわけ勉強が必要です)
  • 土曜日は各自の考え・都合におまかせです。
  • 日曜日は休養。清水研では実験に必要な場合・時間帯を除いて日曜日にラボに来ることはできません。研究はマラソンのようなもの、走りっぱなしでは疲れてしまいます。週1はラボに来ない日をつくり、残りの週6で全力で打ち込んでください。
  • 医師・歯科医師等の外勤は、事前に大学に届け出を出した上で、週1程度行うことは可能です。1年生はいろいろな勉強会がありますから、バイトは土日のどちらかで調整してください。2年生以上は平日に行ってもよいですが、平日に外勤に行ってかつ土日も休む、つまり研究は週4日しかやらないということですと時間不足ですから学位は保証できません。平日に不在にするならその分を土曜日にカバーしてそれで週5です。
  • 夏季休暇5日、年末年始6日は自己裁量でお休みをとれます。祝日も自己裁量ですが、カレンダー通り忠実に休むというのは科学が他国の研究者との競争でもある以上難しいと思います。同じプロジェクトを他の研究者に先に発表されてしまったら全てが水の泡ですので。日本の祝日数はアメリカの2倍あることを考えれば、GW等の長期休暇は「半分程度」というのが国際標準なのではないかと思います。自己裁量でいいですが、休みを全く取らないのは認めません

これはあくまで一種の目安です。自己実現へのステップとなる1万時間の自己投資に向け、各自で時間を調整してください。

当分野は非常に広範な学問の融合領域研究をしています。したがってどんな学生さんにとっても圧倒的に知らない学問領域の方が多いでしょう。そのため、勉強会は他の研究室と比べて多いと思います。

また、私はHarvard大に留学していましたが、米国では大学院の最初の2年間はさまざまな授業や実習 (3ヶ月毎に3箇所の研究室をローテートしてそこの研究室が持つノウハウや考え方を吸収するなど) の期間が大半ですし、2年目の最後に行われるPhD Qualifying Examination (PQE) と呼ばれる広範な科学に関する筆記試験と研究提案書作成、2時間にも及ぶ教授陣の厳しい質疑応答に合格してはじめて大学院3年目で特定の研究室でフルタイムで研究を開始するようになります。私の研究室の方針は日本の他の研究室からすればやや異質だと思いますが、グローバルスタンダードはこちらです。せめてうちの学生さんだけにも世界標準の教育を授けたいと思い、私達スタッフの時間も大いにかかってしまっていますがあえて勉強会をしているのです。

まず1年目の4,5月については研究に割く時間はほとんどありません。さまざまな集中勉強会を通してベースとなる基本的な考え方やノウハウを身につけていただきます。6月は勉強会に並行して研究計画書を執筆していただきますが、その課程においては数多くの文献を読む必要があります。これは研究のための文献サーベイなので「研究時間」の一部ではありますが、それを除けばこの6月までは具体的に何か手を動かして「研究」することはありません

7月以降の1年生は隔週のJournal Club (研究室全体の論文輪読会) とそれに先立つpre-JCでそれぞれ2時間程度 (隔週で4時間ということは週に2時間程度)がラボ全体の勉強の場です。これ以外に、CS特論・ML特論と我々が呼んでいる大学院生のための勉強会があります。1回90分程度のゼミが週に2回ですから、合わせて3時間ほど。そして、修士1年の方にはこれも隔週で90分のBiomedical Data Science Club (BDSC) にも参加してさまざまなバイオメディカルデータサイエンス論文や討論に触れていただきます。まとめると、週に2時間換算のJCと週に3時間換算の大学院生勉強会、週に1時間換算のBDSCで合わせて6時間程度(博士1年はBDSCがないので5時間程度) です。もちろん予習復習にも時間が必要でしょうが、それは例えば通学の電車の中でもできますし、研究室のイベントが入っていない土日に家で勉強することも、平日に朝1時間早く起きるなり帰ってから1時間勉強する時間をつくるなりすることもできますよね。ですから勉強の割合としては多くて30%くらいかと思います。6時間のゼミのために6時間の勉強をして (合計12時間)、かつ週40時間 (平日8時間) しか活動をしない場合で計算 (12/40 = 3割) していますが、実際には1年目から9時5時というのはありえないと思いますので実態としては勉強の割合としては2割を切ってくるくらいにしかならないのでは。いずれにせよ残り8割は研究です。

2年目になると、pre-JCとBDSCがオプションになるので隔週4時間 (週2時間換算) を研究に使えるようになります。また2年で研究室を離れる人 (例として修士をとって就職をする人) はCS, MLもオプションになります。ですので勉強会としては週1時間換算 (2年目の大学院生勉強会コースを希望しない場合) or 週4時間換算 (2年目の大学院生勉強会に出席する場合)です。出席する場合でも、予習復習を含めて勉強の割合としては多くて20% (8/40=2割) くらいかと思います。2年目で40時間というのもありえないと思いますので実態としては1割ちょっとでしょう。また、1年生と同じで通学時間などの細切れ時間や土日をどのように使うのかがとても大事です。

3年目やそれ以上になると、大学院生の勉強会はないので隔週のJournal Clubのみの参加になり、これは週1時間換算しかありませんから自分の時間の95%は研究ということになるでしょう。

なお、例えば研究進捗報告会のための資料を作るとかいうのは自分のデータを整理したり、研究に関するフィードバックをもらうためのものですからそれは「研究時間」です。もちろん、自分の研究に関連した文献が出てそれを読むのも「研究時間」です。また、例えば研究環境を整えるための実験室の試薬作成当番や研究のノウハウを誰かと共有するための資料作成なども「研究時間」としての扱いになります。また、例えば学振DC1などの申請書を書くのも研究提案書を用意するわけですから「研究時間」です。

それらをひっくるめて「研究時間」と「勉強時間」の目安をお示ししました。

清水研においては、修士1年・博士1年と学年は違ってもどちらも同じ「ラボ1年生」として扱います。ですので清水研の修士から上がってきた博士1年はラボ3年目になるので1つ上で明記したようにほとんどの時間を研究に使っていただきます。

ここでは、「ラボ1年目」としての修士1年・博士1年の違いについてお話します。

基本的には同じ「ラボ1年目」ですから両者に大きな違いはありません。1つ上に書いたように、しかるべき勉強をしつつ研究多めの生活になります。違いとしては、修士1年生は大学の授業が特に最初の3ヶ月はいろいろ入っていますが、それと比べて博士1年生は大学の授業という授業はありませんので、博士1年の方がそういう意味でのゆとりはあるでしょう。また修士1年には隔週で行われるBiomedical Data Science Clubにも参加していただきますが、博士1年はそれがありません。あとは、大学院生の勉強会 (CS特論 / ML特論) はさまざまな免除規定があります。例えば医師や歯科医師であれば人体の構造や機能に関する勉強会には参加しなくていいですし、統計検定1級保持者であれば統計学の勉強会には参加しなくていいですし、筆頭著者として生命科学系の論文を査読付き学術誌に発表した方であればそのような勉強会は免除です。より経験を重ねた博士1年生の方が修士1年生よりも免除になる項目が多いのかなと思いますので、この点からもベースは同じだが修士1年生よりは博士1年生の方がやや研究に使える時間が多いということになるでしょう。

もし100%のエフォートを研究に使いたいということでしたら、複数年にわたるcomprehensiveな教育を重視する清水研は向きませんので放置系のラボに行ってください。

当分野では大学院生を対象にした独自の生活費援助を用意しており、規定を満たす方は積極的にTA/RA等として採用しています。学費の足しになりますし、何よりTA/RA採用は職歴になるので履歴書の観点からも有利になります。

以下ではそれ以外のものをいくつかご紹介します。

日本学生支援機構は、貸与型の奨学金だけではなく、給付型の奨学金も用意しています。帝人奨学会の修士課程 (月8万), 博士課程 (月10万) の奨学金 (卒業後研究機関に勤めれば返済免除) や、各種団体の奨学金があります。

さらに、東京科学大学独自の奨学金もあります。

  • CS: 年間250万 (+授業料50万) x 4年間
  • SPRING: 年間200万 x 4年間
  • BOOST: 年間360万 x3 年間

清水研はこれらの採択率が本学で最も高い研究室の1つです。

他にも、日本学術振興会の特別研究員 (DC) 制度があります。これは毎月20万円が支給され、博士課程2-4年生の3年間 (DC1の場合) もしくは3-4年生の2年間 (DC2の場合) 支援してもらえるのみならず、DCを獲得したこと自体が受賞歴となり優秀な研究者の卵であることを示す名誉あるものです。私たちは、栄誉あるDCを博士課程の大学院生に獲得してもらえるよう申請書を念入りに添削します。また、修士課程の学生にはDCの審査に有利となるような各種発表を後押ししています。

※ 大型の給付型奨学金がほしいのはみな同じです。そのため受給には選考に通らなければなりません。競争相手がいることですので、相手の方が優秀だと思われれば必ず受給できるわけではないことはご理解ください。ただ、先ほど書いたように清水研はScience Tokyoで最も採択率が高い研究室の1つですので、清水研でしっかりコミットすればどこのラボに行くよりも確率が高まるでしょう。