基礎医学研究のすゝめ

医学は大きく「基礎医学」「社会医学」「臨床医学」の3つに分かれますが、私達はそのうちで主に基礎医学と呼ばれる分野とデータサイエンスの融合研究をしています。 臨床医学はいわゆる「お医者さん」で、内科・外科をはじめさまざまな診療科がありますが、いずれも基本的には既存のガイドライン等に沿って目の前の患者さんの診療を行う領域です。診療所の医師であれば1000人程度、病院勤務医であれば10万人程度の方を対象にしていますし、大学病院での医師であれば1000万人くらいの医療圏内から患者さんが来る可能性があります。

一方で、より「大きな医療」をしたければ社会医学、あるいは基礎医学にコミットする必要があります。これらはいずれも目の前の患者を直ちに救うことはできませんが、研究者達の努力によって未来の医療を創ることで、より大きなインパクトにつながります。現在の検査法も治療薬も手術方法も、いずれも先人の医学研究者達の努力の結果として確立しました。また、医療政策を決定し社会を変革するには社会医学者の研究や提言が不可欠です。

私は、医療系の学生さんのうちトップ数%の方々には基礎医学や社会医学のような本当に優れた頭脳が必要とされる領域に携わり未来の医療を創ってほしいと願っています。また、患者さんに診療行為をするわけではない基礎医学や社会医学領域には医療系の国家資格が不要ですので、数理や情報や生命科学など医療系以外のご出身だが卓越した思考力等をお持ちの方々にもぜひ未来の医療を目指していただきたいと思っています。

東京医科歯科大学病院 元病院長・大川淳 教授の最終講義スライドから