このページでは当研究室の大学院生新入生に「最初の3ヶ月で成長できたこと」についてまとめてもらっています。大学院を検討している方は、先輩の声をじっくりお読みください。

2023年度 (1期生)

当研究室に出入りして3ヶ月ほど経過して体験したこと、そして半年前から変化したことについてまとめる。当研究室や東京医科歯科大学大学院に進学を考える方々の参考になればと思う。

「研究」と言われて、どのようなものを思い浮かべるだろうか。おそらくプログラミングを書いたり、ピペットを使ったり、そんなことを思い浮かべるだろう。これらを「研究」と定義するのであれば、清水研で研究が始まるのは7月からである。それまでの3ヶ月は大学の授業と当研究室の勉強会が中心になる。清水研の目指す研究に必要な学問領域は複数にわたっている。医学を含めた生命科学、情報学、そしてそれを支える数学が必要になり、それぞれから派生した多数の分野の知識が必要になってくる。他にも、bioinformatics誌に掲載された論文を週1ペースで紹介、論文に出てくる図表の読み方のレクチャー (レクチャーとはいえ説明は学生が全て行う) を受ける。それら研究を始めるのに必要な体力や知識を叩き込まれるのが入学後最初の3ヶ月間ということになる (もちろんその後も続くが)。このような理由により研究を始めるのは7月に入ってからになる。しかしながらこの3ヶ月で一番の変化はこれら勉強会によるものである。論文等を読んでいてわからない箇所を調べて、それを説明する単語がわからなくて、それを調べたら…、という無限ループの経験をした方は多いと思うが、これら勉強会を経た今、このループの回数が明らかに減っていることを実感している。これら勉強会は新たに必要な知識を得るという目的もあるが、個人的にはすでに持っている断片的なぼんやりとした知識を繋ぎ合わせるという目的に近かったと感じている。したがって、全く0からというのは相当ハードになるだろう。私自身バックグラウンドは生命科学で、情報や数学は虫喰い的に勉強しており系統的に学習したことがなかった。それらを、まとめ上げること時間にすることができたのは今後間違いなく自分の武器になって行くと感じている。一つ悔やまれるのはもう少し大学の基礎レベルの数学を勉強しておけばもっと得られるものがあったと感じている。おそらく大学院生として入学を希望している方の多くは全部系統立てて学習してきました。というわけではないだろう。入学前にそれらを完璧にやってくることは必須ではない (もちろん可能なら是非頑張って欲しいですが) より良い学習期間とするためにも「全くわからない」という状態はおすすめしない。幸いにも現在はやる気さえあれば書籍やインターネットである程度の情報にアクセスできるようになっているので、ぜひ色々活用してほしい。基礎となる勉強は概してその有用性に気が付きにくいと思うが、何をやるにしても「いしずえ」となるから基礎であるのだと4-6の3ヶ月間で改めて感じている。もし、もう一度自分が入学前にまとまった時間が得られるのであれば情報・数学分野の基礎をやり直したい。当研究分野を志す方には狭くて尖った領域の勉強ではなくて、是非幅広いベーシックな勉強をしてもらえると、有意義な大学院生生活が送れることを保障する。

2023.7.22掲載

大谷 悠喜 (修士課程1年)

清水研究室に入学してから最初の3か月で成長できたことについてまとめる。当研究室への進学を検討している方々の参考になればと思う。

清水研究室に入って最初の3か月間は、清水研の教育プログラムの一環である集中勉強会を通して研究に必要な基礎知識とスキルを徹底的に身に着けることを目指す。4月は基礎的なバイオインフォマティクスの知識を学ぶ事前勉強会「概論編」に加え、生命科学分野の学部の出身でない大学院生のための、生命科学と解剖学の基礎的な知識を学ぶための集中勉強会が行われる。私自身バックグラウンドは経済学であるため、入学時点では生命科学の知識はほとんどなかったが、これらの勉強会を通して研究に必要な基礎的な知識が身につけることができた。

5月と6月の2か月間は、Bioinformatics誌の最新号に掲載された論文を週に一本選び、内容をスライドにまとめて紹介する事前勉強会「実践編」が行われる。紹介する論文は自由に選べるため、バイオインフォマティクス分野の様々な領域の研究に触れ、最新の研究で使われている手法の知識を深めることができる。短期間で数多くの論文を紹介することによって、論文を読み込む力、建設的に批判する力、そして何より重要な、論文の内容を伝える力を身に着けることができると感じた。論文に書かれていることをただ理解するだけでなく、どの部分がキモなのか、そしてどの部分が最も弱いのかを見極めるスキルは先行研究のサーベイを行う上で必要不可欠となる。また、週一回のプレゼンのフィードバックを通して、スライドの作り方や、難解な論文中の手法の要点を簡潔に、わかりやすく伝える力が徐々に身についたと感じた。いくら素晴らしい研究を行っても、その内容を伝える力がなければ価値が落ちる。事前勉強会「実践編」は研究者に求められる様々なスキルの土台を築いてくれる。

清水研究室に大学院生として入学することを希望している方には、入学までに最低限の数学と統計学の素養を身に着けておくことをおすすめする。具体的には多変数関数の微積分、線形代数、統計検定2級レベルの知識を備えていることが望ましい。これらの知識があれば、集中勉強会やJournal Clubの論文などで目にするバイオインフォマティクスの手法のほとんどを本質的に理解することができ、より効果的な学習期間となるだろう。

最初の3か月で行われる集中勉強会の膨大な内容を大学院の授業や、Journal Clubなどの他の清水研の行事の準備と平行して学ぶことは決して容易ではない。振り返ってみると、清水研での最初の3か月間はこれまでの人生で一番忙しかったと言っても過言ではないと思う。決して楽ではないが、清水研には経済学部出身の私でも、3か月で新しい分野の研究のスタートラインに立てるような教育プログラムが用意されている。本気で研究者を目指すなら、ぜひ当研究室を検討してほしい。

2023.7.31掲載

大田 航平 (修士課程1年)