社会人大学院制度のご案内

概要と事前問い合わせについて

東京科学大学 (Science Tokyo)・総合研究院M&Dデータ科学センター・AIシステム医科学分野では、2024年度より社会人大学院生 (博士課程) を若干名募集します。若干名ですのでご希望に添えない可能性もあることご了承ください。大学院生としてではなく、企業所属の方を研究員として受け入れる受託研究員制度もあります (詳細はこちら)。

以下、社会人大学院制度のコースの説明です。

  • お仕事をしながら生命科学・薬学・医療領域のデータサイエンティストを目指したい方
  • 製薬・検査・バイオ系の会社員の方で、高度なデータサイエンスを学び事業に活用したい方
  • ライフサイエンスや医療を学んで今のプロジェクトに活かしたいIT系エンジニア、起業家の方
  • バイオインフォマティクス、メディカルAI等の研究を系統的に学び、博士号(医学)を取得したいと考えている医師・歯科医師、薬剤師、看護師、検査技師等の医療従事者、医薬品・医療機器開発企業、CRO、ヘルスケアサービス開発企業等に勤務されている方

などを募集します。出身学部・学科は問いませんが、「データサイエンスで未来の医療を創る」ことに情熱があり、まずは下記3点を同時に満たす必要があります。

  • 医歯薬学の6年制学部卒業か、学校教育における 18 年の課程 (小中高12年を含む、外国における教育を含む) を受け分野は不問ですが理系の修士号 (あるいは2年以上の学術研究歴と研究実績)をお持ちの方。なお、修士号がない場合、あるいは正規の大学院生として2年間の研究をしなくてもとれる修士号をお持ちの場合には、本学出願前に「出願資格審査」という書類審査+本学教授陣による口頭試問がございます。
  • 社会人として培った何らかの領域で高度な専門性や経歴, 実績をお持ちの方
  • 博士課程において学術研究のトレーニングを開始する前段階としての基礎的な英語力のある方 (こちらにお示しするようにTOEIC 750相当程度。英語は大学院入試にあるので、現時点では自己申告で可)
  • 「社会人」大学院生とはいえ「大学院生」でもあるので、学業のためにお仕事の調整をつけられる方。具体的には週あたり数時間は平日日中に当研究室のmeetingやdiscussionに参加でき、かつ研究経験がない方の場合は1,2年生の間は対面 (東京) での大学院生勉強会に参加できる方。週に2回ほど (スケジュールは後述)。仕事が忙しいので参加できないなどは、「大学院生」としての適切な教育を受けていただくことができませんのでお引き受けできません。これにはその時間帯に穴埋めをしてくださる職場の上司や同僚の方のご理解も不可欠です。

バイオインフォマティクスや関連領域は初学者でも構いません。基礎から学べるプログラムを用意しています。また、スーパーコンピューターSHIROKANE、TSUBAME 4.0をご自由に使って研究をしていただけます

博士(医学)、博士(数理医科学)、博士(学術)等を取得できます。本学の博士課程の標準修業年限は4年間です。高いレベルの学術的成果が認められれば3年で早期卒業することも可能です。ただし例えば医師でこれまで全く研究経験がない方がいきなり社会人大学院生で時間も限られる中、4年で学位をとろうというのは難しいでしょう。ここで掲げている標準年限というのはこれまでに研究経験がある方の話です。

私達のところで社会人大学院生として受け入れの可能性があるかどうか、まずは上記4点について確認させていただくために「事前問い合わせ」をお願いいたします

  • 履歴書 (様式自由だが、学歴は高校卒から、学位については正式名をしっかりと明記)
  • 職歴書 (様式自由だが、取り組んできたお仕事の概要や自己PRを明記) 

の2点を添付し、「2026年度社会人博士課程について事前問い合わせ (東京科学大・清水秀幸)」のように入学希望年度、社会人博士課程課程の事前問い合わせであること、所属とお名前を件名につけて、清水宛 (h_shimizu.dsc@tmd.ac.jp) にメールでお送りください。事前問い合わせの結果、受け入れできる可能性があるという返事だった場合には以下の項目もお読みいただいた上で、Research Proposalをください。

社会人大学院制度と限界、学べること

博士課程は規定年数の勉強をして単位を取れば卒業できる修士までと違い、世界初の研究成果を挙げてそれが海外の専門家集団による厳しい査読に合格し国際学術誌に自分が研究のほとんどを担当した筆頭著者として論文掲載されないといけませんし、それだけでなく本学の教授3名による予備審査 (通称defense、1時間のプレゼン・口頭試問および質疑応答) に合格しさらにその上で教授会 (本学の教授およそ70名) で審議され博士号を授与するにふさわしいかという投票で過半数の支持をいただく必要があります。このように博士課程は学びというより研究の場ですのでご注意ください。修士までと違い、博士号に努力賞はありません。お仕事がお忙しくて海外の専門家集団の審査に通るような研究業績が出せなければ規定年数がたっても博士号は授与されません。そもそも社会人大学院生は正規の学生に比べ研究・勉強時間が圧倒的に足りないことを十二分に理解していただくのが受け入れの大前提ですので、ご自身の力不足 (研究・勉強時間不足)で学位をとれなくても or 取るまでに時間がかかっても自己責任になります

社会人大学院生はどうしてもそうでない大学院生に比べて学びの機会は少なくなりますが、当研究室で提供できる機会・リソースはこのようなものになります。

  1. スーパーコンピューターSHIROKANE最上級モード(D9モード) およびデータストレージサーバーSHIRAUMEアクセス権 (家からでも利用可)
  2. 配属前に学習するオンライン予習教材 (200時間分の演習教材)
  3. 生命科学や医学を未履修者を対象にした集中勉強会 (2ヶ月、駿河台キャンパス開催のみ)
  4. ライフサイエンス系学術論文に頻用される図表の読み方を集中的に学ぶ勉強会 (1ヶ月、駿河台キャンパス開催のみ)
  5. 米国マサチューセッツ工科大 (MIT) ・人工知能研究所 (CSAIL) で使われているのと同じ教材を使ったML特論 (2年コース、駿河台キャンパス開催のみ)
  6. システム生物学, 数理生物学, 合成生物学, 量子情報科学等の多様な周辺領域を学ぶCS (convergence science) 特論 (2年コース、駿河台キャンパス開催のみ)
  7. バイオメディカルデータサイエンスとその関連領域における人脈ネットワーク (清水研は30年続くので今後同門の方がたくさん輩出されるでしょう)
  8. ラボメンバーからの建設的な批判によるプロジェクトの軌道修正
  9. ほぼ毎月ある研究に関する個別ミーティングを通じた論理的思考回路の構築
  10. 多様な研究プロジェクトを見聞きする中で広範な科学領域に対する理解の提供
  11. 主体的に貪欲に学び続ける習慣と、それを人にシェアすることで自らのさらなる学びとする機会の提供
  12. マイプロジェクトとして自らの興味に応じてプロジェクトを0から立ち上げる経験
  13. 最先端の学術論文やテクノロジーを毎週学ぶ機会 (オンライン)
  14. 発表プレゼンや書類等の手直しを通じた、研究者として生き残るための「聴衆への上手な見せ方」指南
  15. 倍率5倍, 10倍, 20倍の競争率に勝ち採択された過去の学振DCやグラントの申請書をシェアすることで、近い将来不可欠になる採択される申請書を書く秘訣を学ぶ機会の提供
  16. 最初は促されつつも、いずれは自主的に全国規模のセミナー等でみなの前で発言できるだけのセンスと度胸の養成
  17. 書籍、各種記事等を執筆する機会
  18. (研究成果に特許性がある場合は) 特許出願経験 + 特許収入
  19. (研究成果に社会的インパクトがある場合は) プレスリリース、記者会見経験
  20. (希望者のみ) 年に1回以上の国内学会発表機会の提供
  21. (希望者のみ) 本学が実施する「データサイエンス人材育成プログラム」無料受講 (本来は受講料25万円)

正直なところ、社会人大学院生がここまでたくさんのことを学べるラボは他にないと自負しています。

指導方針・テーマ

社会人大学院の場合は当研究室内に個人研究スペースを用意できません。研究は原則的にご自宅で行っていただくことになります。自宅環境ですので、セキュリティーの問題等もあり未公開の診療データなどをこちらから提供することはできません。もしそのようなデータが必要ならばご自身で用意していただきます。

研究テーマは、社会人大学院生を希望されるということは何かしらの課題がおありだと思いますので、テーマを主体的に決定するのはご本人であり教員の役割は研究プロジェクトへの建設的アドバイスにとどまります。病院なり企業なりでお持ちのデータ、あるいはすでに論文等で公開されているデータを使った解析および学術論文化が主要なテーマとなるでしょう。それ以外に、新規解析手法の開発もご希望があれば可能です。博士課程は独立研究者としてのトレーニング期間ですが、社会人大学院生はさらに踏み込んで自らが直面しているquestionに主体的に取り組んでいただきます

社会人大学院生を受け入れるにあたって、職場の上司や同僚の方などのご理解があり、必要なmeetingにはお仕事を抜けていらしていただく必要があります。具体的には下記について仕事の調整をつけて参加できる方

  • 隔週月曜日16時-18時: Journal Club (論文輪読会、オンライン)
  • 月1  (4年で卒業を目指す方は隔週) 水曜日午後: Group Meeting (研究discussion、オンラインまたは対面)
  • 毎週金曜日13時-15時: Progress Report (研究進捗報告, オンライン)
  • 1年目のみ 隔週 木曜日11-12時: 大学院必修授業 (オンライン)
  • 1年目のみ 隔週 金曜日15時以降2時間: pre-JC (論文輪読会の前の勉強会、オンラインまたは対面)

また、AI・バイオインフォマティクス・ケモインフォマティクスのいずれかで研究実績がない方の場合には最初の2年間は大学院生勉強会にも出ていただきます (すでにこれらのフィールドで研究実績がある方は任意です)。

  • 最初の2年間 平日9-19時の範囲で日程調整 (1回2時間、週2回程度、対面)

ということで、当研究室の関連領域ですでに研究実績をお持ちの方であれば完全オンラインで遠隔から博士課程というのも可能ですが、現時点でこれらの領域について実績がない方がオンラインでというのはお引き受けできません。最初の2年は対面の勉強会にお越しいただく必要があります。

学業とお仕事の都合が同じ時間帯に重なったときには、学業を優先していただく必要があります。そのためには上司や同僚の方の理解が必須です。平日夜間や土日だけしか都合をつけられない方は受け入れできません。

本学の学生ですので、大学図書館へのアクセスといったbenefitは社会人制度ではない学生と同等です。

先に書きましたが、社会人大学院生は研究トレーニング時間が圧倒的に少ないので、博士号を標準年限である4年で取るという保証はできかねます。全てご自身次第です。また博士号を取得後に大学等ですぐに研究者のポストをとるというのは、研究実績の観点から社会人でない大学院修了者との競争に勝つのは現実的ではありません。当然ですが、卒業後のキャリアパスについてはご自身で責任を持っていただく必要があります。大学院入試の面接では、学位取得後の進路を聞かれる可能性が高いでしょう。

受け入れ条件および入試について

1万時間の法則というのはご存知ですか? 何事もその世界のプロになるには1万時間の訓練が必要だというようなものです。清水研の社会人ではない大学院生は4年間かけて1万時間に到達します。

もちろん社会人ということで学業に専念できるわけではないことは承知していますが、それでも時間を捻出していただかないと研究になりません。目安として、平日は1日2時間、土曜日は1日10時間 (週20時間) を1年 (50週) 行えば、totalで年間1000時間になりますが、このような生活を少なくとも4年継続していただく必要があります。実際にはこれまでにたくさんの下積みをされていると思いますので0からスタートしての4000時間ではないわけですが、研究歴が1万時間に満たないということが博士号取得時点の力の差につながりうることはあらかじめお含みおきください。 医療系の方で学部や修士等での研究経験が全くない方は、週20時間の研究というのはフルタイムの人の半分ですから、少なくとも6年 (それでも一般的な理系学生における学部4年~修士2年の3年研究して修士号相当にしかなりませんが)はかかると思います。上述の勉強会に参加するためには研究時間とは別に勉強時間の捻出も不可欠です。

社会人大学院生受け入れ条件を列挙します。

【必須条件 (上記以外のもの)】
  1. 社会人大学院制度は特例であることを十分に自覚し、その限界 (特に太字部分)も理解した上で、仕事と学業の両立ができる人並み外れた意欲と計画性およびバイタリティをお持ちの方
  2. 社会人大学院生は共同研究の一形態であるという自覚を持ち、あくまで自分が主体性を持って研究テーマや研究計画を立てられる方。私達の研究もご覧になった上で、共同研究としてふさわしいproposalを求めます。
  3. 本学大学院入試に合格できる一定の基礎学力を持ち、少なくとも4年間学業に取り組むことに支障のない程度に心身ともに健康な方
  4. 家族・上司・同僚等の理解が得られる方 (上司からの誓約書は本学出願時に必須です)
  5. 広い意味の「データサイエンスで未来の医療を創る」ことに強い興味関心があり、博士号取得後のキャリアは自分で責任をもって切り開き、各自のアプローチからこれまでのキャリアで培ったことをもとに社会に還元したいという強い意気込みのある方
  6. 清水研の教育ポリシー研究ポリシーに賛同いただける方
  7. 入学までの間、統計検定準1級統計検定 データサイエンスエキスパート、または応用情報処理技術者 いずれか取得に向けてデータ科学関連領域を継続して自習する意欲のある方。また入学後も自ら貪欲に学び続け、学んだことを仲間同士でシェアしさらに高め合っていけるような向上心と協調性のある方
  8. 教員による指導の機会は社会人ではない大学院生より少なくなるが、だからこそ自ら主体的に考え挑戦できる卓越した思考力・行動力のある方
  9. 少なくとも2年に1回の学会発表をする意気込みがある方 (社会人大学院生にとって学会は学びの機会であり原則自費参加になります)
  10. 少なくとも3年に1報の論文発表をする意気込みがある方
※ 留学生の方は研究討論をする上で必要な日本語または英語のどちらかの力があることを示す必要があります。日本国内の高校・大学・大学院修士課程のいずれかを卒業 (見込み)したという実績があれば大丈夫ですが、そうでない方は日本語or英語の語学力が分かる正式な書類 (日本語能力検定検定、TOEFLスコアなど)を添付してください。

出願願書の提出期間は例年7月下旬で、試験は例年9月下旬に行われます (詳細は本学HPをご自身でご確認ください。似たような名前が多いですが「博士課程医歯学専攻」が該当します)。合格後は11月から2月の土曜日午前〜15時くらいの中で同期全員で日程調整をし、その中から5回程度オンラインでデータサイエンスの勉強会を行います。

上記を理解したうえで、社会人大学院生を希望される方へ

上述の「事前問い合わせ」の後、まずはこちらのページの下部にかかれている「Q&Aおよび面談について」を全てお読みください。社会人ではない大学院生コースを希望する方からこれまでにいただいた質問とその回答です。

社会人大学院生ということですから取り組みたい特定の研究テーマがおありだと思いますのでresearch proposal、つまり背景と目的 (or 仮説)・アプローチ・そしてデータの入手先等をご教示ください。PDFファイルでメールでご送付いただきます。形式自由、ページ数制限はございません。科学的な観点から詳細を拝読させていただき、当研究室でその計画をともに遂行できそうかお返事いたします。

続いて、こちらのページをご覧になり、正式にメールでお問い合わせください。