博士課程を希望する医療従事者の方へのお願い 博士課程への進学を希望する医療従事者の方へ3つのお願いをします。あらかじめ承知の上で問い合わせをしてください。 1) 本当に研究がしたいのか、覚悟があるのかをもう一度自問してください 情熱をお持ちですか? 今はそれぞれの医療現場でご活躍中かと思いますが、ご自身の夢や自己実現のためならば、研究の世界に飛び込みもう一度1年生からやり直す覚悟はあるのか、という質問でもあります。私達の研究室を辞めてしまった臨床出身の元大学院生の方が後輩のみなさんにメッセージを書いてくれたので、こちらのページを必ずお読みになり、自分の胸に問いかけてください。 2) 自分の臨床医としての専門などいったん全部捨ててください 自分で研究費を獲得し自分が主導してプロジェクトをすすめられるようになれば、いただいた研究費の範囲で自由に研究をすることができるでしょう。でも大学院博士課程はその前段階としての下積み時代です。好きなことのみを研究することはできません。しっかりとした研究の経験がある方は違うのですが、特に長いこと臨床をやってから博士に進みたいという方ですと、特定の診療科や疾患に興味関心が偏っています。はっきりいって、そんな医療者が考えるテーマが大きな雑誌にのる可能性はまずないので清水研ではできません。研究の経験がない (あるいは症例報告クラスしかない)のであれば、そもそもどんな研究領域があるのかも何も知らないでしょう。知っているのは専門的に取り組んでいる疾患の臨床だけです。もしそれをとことん突き詰めたいのであれば、清水研ではなくよその専門的な研究室に行ってください。二言目には「〜科では〜」と自分の専門診療科のことを考える人が多すぎですが、下積みを始める前からすでに視野狭窄に陥っている人なんかうちでは要りません。清水研では、かなり広範な生命医科学と数理情報科学の融合領域に取り組んでいただきます。診療科specificな課題に取り組むのは科学者としての幅広い思考法やスキルを身につけ博士号をとった後にしてください。また、最近はちょっとしたコンピューター解析なら便利なツールが自動でやってくれます。そんな「エセデータサイエンティスト」を養成するつもりはありません。うちに来るからには、本気の数理科学・情報科学の教育を行います。大学の教養で数学をサボっていた方はついていくのが大変かもしれません。ご覚悟願います。もしそれが無理という方は、ちょっとツールが使えるだけの大衆人材を養成するラボは他にたくさんありますのでそっちに行ってください。清水研ではマイプロジェクトを奨励しますが、もし診療データを使った解析が必要になるプロジェクトであればこちらのclinical informaticsに関する注意事項もお読みください。博士課程においては広範な生命医科学 x 数理情報科学で実績を出していただき、その後はご自身が本当に取り組みたい専門領域で輝いていただく、それが清水研の方針です。ある特定の領域しか分からないと、インパクトの大きい研究ができません。清水研の博士課程は、そのための基礎体力づくりとお考えください。 3) 自分の臨床医としてのプライドなどいったん全部捨ててください 経験年数によってヒエラルキーがある医師の世界からやってきた人にあるあるなのですが、1番下っ端なのにうちのスタッフや先輩になるかもしれない学生たちに高圧的な人が多すぎます。いや、ご本人には自覚がないでしょうが、スタッフ・学生たちからは「今日来た人が高圧的に感じた」という意見が全員から出るのはいつも決まって臨床を長くやってきた医師が見学に来た時です。うちではそのようなコメントが出た瞬間、チームプレイができないダメな方としてお断りしております。プライドが邪魔をしているのでしょうが、あなたが「先生」と言ってもらえるのは病院の中だけです。あなたは全く文化の異なる研究の世界に入って全てを捨てることができますか? もし臨床経験の長さが邪魔をしてプライドを捨てることが難しいのであれば、何もできなくても「先生」と甘やかしてくれる研究室に行ってください。うちは年齢も臨床経験も関係ありません。1年目は1年目。うちに来るということは、もう1回1年目研修医からやり直すという覚悟で来てください。また、診療現場と違ってうちには「看護師さん」はいませんので自分が全ての準備から後片付けまで行う必要があります。病院では看護師さんが優秀なのでなんとかできていても、研究ではそういったこともきちんとできる方でないと務まらないでしょう。将来先輩になるであろう面談時に話をしていただく学生たちから「高圧的」と言われるようでは全然ダメです。うちでは複数のメンバーが同時に面談していますが、そのメンバーみんなから指摘されるのは見学者側に問題があります。確かに彼らは22-3くらいの年下かもしれませんが、年下であっても先輩であることは忘れてはなりません。伊能忠敬は晩年に20才以上も年下の先生に弟子入りして測量術を1から学び、今日の教科書に残る日本地図を作り上げる偉業を成し遂げたわけですが、10才程度しか離れていない年下相手に気が付かない間に高圧的になってしまうような器の小さな医療従事者は受け入れしません。また、臨床を長くやっている医師にありがちなのはnon-MDを下に見たりすることです。態度に出やすいですが、もちろんNGです。研究の世界ではMDもnon-MDも全く関係ありません。医学生時代に、緊張しながら、でもワクワクしながら希望する病院を見学にいったときを思い出してください。必要なのはそのマインドです。