バイオメディカルAI「春の学校2025」のご案内

データサイエンスやAIに関する言葉を聞かない日はないほど今日のデジタル社会にこれらは大きく浸透しています。現代の「読み・書き・そろばん」と言っても過言ではないでしょう。このような背景を受け、文部科学省も大学等が数理・データサイエンス・AI教育に取組むことを後押しする制度 (右図) を創設しました。書店にいけばたくさんの書籍があり、YouTubeやブログなどインターネットにもさまざまなコンテンツが共有されています。

しかし、それらの教材の多くは一般的なビジネス向けか、あるいはより理論的な側面を重視した専門家向けのどちらかであり、その両者の間が少ないように感じています。特に医療や生命科学領域のAIについては、独自の専門知識 (ドメイン知識) も必要になるためか、残念ながら学びたくてもそれほどは機会が多くないかと思います。

そこで、微力ながら少しでもそういった開かれた機会を提供させていただくため、夏の短期セミナーとして応用基礎レベルに相当する「バイオメディカルAI 夏の学校」を開催しております。さらにその一歩上のエキスパートレベルのための土台づくりとして、「バイオメディカルAI春の学校2025」を開講いたします。普段から第一線でAIを駆使している方には物足りない内容かと思いますが、「夏の学校」の修了程度、および生命科学・医学領域の研究等にAIを多少使っているという方にとってさらに上のレベルを勉強する絶好の機会の1つかと思います。実験系・医療系を専門にしていて、AI・データサイエンスをさらに取り込んでいきたい方、あるいはこれから情報系の研究室で本格的に修行を始めるがその前段階の訓練をしたい方、にとって絶好の機会かと思います  (すでに情報を武器にしている方がさらに伸ばしていくための専門家向けコースではございませんのでご留意ください)。

初年度の2025年度はオンライン+対面合わせておよそ30名の方が受講しました。学部生・大学院生など学生さんが半分程度、残り半分程度の方は社会人の方 (企業にお勤めの方・医療専門職・アカデミア研究者などさまざま)でした。修了後に「春の学校2025は勉強になりましたか?」というアンケートをとったところ「とても勉強になった」が92%、「ある程度勉強になった」と合わせて参加者みなさんが「勉強になった」とお答えいただいています (右図)。

また、下にお示しするのは「参加者の声」の一部です。

まず、この春の学校を最大限楽しむためにはある程度の機械学習に対する基礎力が必要になります。ある程度機械学習に馴染みのある人であればとても楽しく、勉強になるイベントだと思います。特に印象に残ったのは、SAM(segment anything model) を使って医療画像の学習をしたプロジェクトです。学習過程を可視化し、かなり精度よくモデルが医療画像を学習していることをコードを実際に実行しながら確認できたのはとても面白かったです。また、最後のLectureにて最新のAIに関する論文を紹介して下さり、ここまでAIの研究開発が進んでいるとは思わず、とても驚いたとともに刺激を受けました。また個人的には、量子コンピュータについても講義やプロジェクトで触れることが出来、量子コンピュータとはなんぞや?の状態から少し解像度が上がり、かなり勉強になりました。最後になりますが、全てのプロジェクト、講義がレベルが高く、とても面白い内容になっていたので、医療とAIについて興味のある人は参加する価値のあるイベントだと思いました。by 大学院生 (修士課程)
清水先生をはじめとするラボのメンバーの皆様、ご多忙の中オープンな勉強会を開いていただき、誠にありがとうございました。私はこれまで夏の学校、バイオメディカルDXにも参加させていただき、本当にお世話になっております。今回はエキスパートレベルということで、かなり難易度の高い内容でした。しかし、知的好奇心をくすぐる興味深い話ばかりで、大変勉強になりました。 AI創薬の話を聞いて、簡単ではないですが自分の興味のある、自己免疫疾患の治療などに応用できたら素晴らしいな、と感じました。 量子コンピュータについては正直かなり難解であると感じましたが、数年後、数十年後には当たり前の技術になっている可能性もあるので、学んでおく価値があると思いました。 short talksでは実際の研究の話を興味深く伺えました。最新の話題についてでは、virtual labの話に衝撃を受けました。AIを利用しつつも、AIに負けないように勉強し、アイデアを出せるようにならなければと感じました。 この度は本当にありがとうございました。また勉強会があれば、参加させていただけると嬉しいです。今後ともよろしくお願い申し上げます。by 社会人 (医療専門職)

こちらのページ参加者全員のメッセージをお読みいただけますが、非常に有意義な企画だったとご評価いただきました。

今年度は初回なので至らぬ点も多々あるかと存じますが、ぜひ終了後にフィードバックをいただき次年度以降の改善につなげていきたいと考えております。以下、詳細です。

日時:  メインは2025年 3月20日(木祝、春分の日)(実施時間帯:9:00~18:00)。希望者は2025年 3月7日(金) 17:30からのオンライン論文輪読会Biomedical Data Science Clubもゲスト参加可能です。

開催形式: 基本的にオンライン開催 (動画配信はZoom、質疑応答・資料共有はslack) ですが、希望者は当研究室 (最寄りは東京のJR 御茶ノ水駅) にて対面も可能です。対面はスペースの関係から少人数になりますので、学生さんを優先させていただきます。

定員: 多くの質問をいただくことが予想されますが、それらの質問に対応させていただくための我々のマンパワーの確保という観点から、初回である今回はオンライン参加22名、現地参加8名とさせていただきます。より多くの方が応募された場合、抽選となりますことあらかじめご了承ください (「夏の学校2024」は抽選をさせていただきました)。本イベントは夏の学校・BDSC・Biomedical DX for All・Open Labなど当研究室の他のイベントを修了されている方を優先させていただきます。

対象・参加費:  大学学部生以上 (4月から大学1年生も含む) で、下記全て満たす方。参加費は無料。社会人の方も大歓迎です。

  1. 原則的に3/20 (春分の日) 朝から夕方まで全日程とも参加できる方。一部しか参加できない方もご事情を書いていただければ申込みができます。3/7 (金) はオプションですので参加できなくても問題ありません。
  2. 夏の学校修了者 (または「Pythonで実践 生命科学データの機械学習」の読了者)相当以上の生命科学や機械学習の経験がある方
  3. 春の学校ではプログラミング環境としてGoogle Colaboratoryを使うため、Googleアカウントをお持ちの方 (無料で取得できます)
  4. 前半2つのProjectにおいてはKaggleにあるデータセットを使うため、Kaggleアカウントをお持ちの方 (無料で取得できます)

さらに下記3点のお願い事項を誓約いただける方。

  1. 配布資料やコード等について著作権は放棄しておりませんので個人の学習以外の用途 (再配布等) をしないと固くお約束いただける方。
  2. 学生によるShort Talkでは一部に未発表の研究データが含まれますのでConfidentialであることを自覚し他の方に漏らさないと固くお約束いただける方。
  3. 4月末までにアンケートおよび感想文 (次年度の参加者へのメッセージを含む。word 半~1ページ程度) を提出いただける方。感想文は匿名で「春の学校」ページに掲載させていただきます。

当研究室が開催する他の講習会との関係:   

当研究室では社会貢献の一貫として無料の公開講座を定期的に行っております。対応関係は次のようになります。本講座はadvancedな内容を含みますので、まだあまり経験がない方は他の講習会をご検討ください。

日程

2025/3/7 (金、希望者のみ)

  • 17:30-19:00 Biomedical Data Science Club (希望者のみオンライン参加, エキスパートレベル): 全国の優秀な学生さんたちが隔週・オンラインで行っている論文輪読会へのゲスト参加です。詳細はこちら

2025/3/20 (木祝) : いずれも赤Pythonには載っていない新作シリーズでの演習になります。午前中が医療、午後が生命科学 (特に創薬) のトピックス構成です。

  • 9:00-10:00 Project1 ウェアラブルデバイス等のリアルワールドデータから糖尿病患者の未来の血糖予測 (実習、応用基礎レベル):  医療データによくあるテーブルデータの実践的な扱いについて、コンペティション形式で実習します。事前に課題をお出しして、希望者は事前にモデルを作りコンペティション形式で性能を競うこともできます。ここで学ぶのは欠損値の扱い方やアンサンブル学習といったテーブルデータへの定石手順です。
  • 10:10-11:10 Project2 医療画像 (CT画像) のセグメンテーション (実習、エキスパートレベル):  たった4症例だけからCT画像をセグメンテーションできるAIを作るプロジェクトです。ここで学ぶのは医療画像の取り扱い、特に医療によくありがちな少数データからの学習です。
  • 11:20-11:50 Lecture1 現代の生命医科学研究における生成AIについて知っておくべき全てのこと ( エキスパートレベル):  いろいろなAIがある中で全ての生命科学者・医療者にとって不可欠になっている生成AIについて、専門家の講演を聞くうえで「事前に知っておくべき全てのこと」をお伝えします。
  • 12:50-13:50 Project3 創薬を目指した化合物の取り扱いと分子生成 (実習、エキスパートレベル):  Project 3は2つのハンズオンから構成されています。前半で化合物を取り扱う上での基礎事項を学び、後半で強化学習による分子生成AIを作っていきます。ここで学ぶのはケモインフォマティクスの基本、分子記述子や類似化合物検索、代表的な物性計算、そして所望の特性がよくなるような化合物最適化AI構築です。
  • 14:00-15:00 Project4 分子ドッキングとAI創薬 (実習、エキスパートレベル): Project 4も2つのハンズオンから構成されています。前半ではいわゆる分子ドッキング、つまり治療標的タンパク質に対して薬の候補である化合物をドッキングしていきます。そして後半では、我々が開発した立体構造を使わない (アミノ酸文字列のみからドッキングができる) AI創薬手法をシンプルにしたモデルを題材に、創薬AI作成を体験していただきます。事前に結合データをシェアしますので、コンペティション形式でテストデータでの性能を競っていただくこともできます。
  • 15:10-15:40 Lecture2 量子コンピューター超入門古典的なコンピューターとは異なる原理で動作する量子コンピューターを全く知らない方向けに30分でそれがどのようなものかを速習します。
  • 15:45-16:25 Project5 量子コンピューターと機械学習 (実習、エキスパートレベル): 春の学校最後のProjectは、将来的な展望ということで量子アルゴリズムを使った機械学習を体験していただきます。がんの再発に関するRNA-seqデータを使いますが、ライフサイエンスに関するデータを題材に次に来る技術である量子コンピュータを体験できる絶好の機会です。
  • 16:35-17:00 Short Talks: AIの実際の研究への展開として、将来を担う学部生・修士課程大学院生からそれぞれ1名ずつ8分の持ち時間で研究内容を簡単にプレゼンします。その後1つ2つになりますがご質問の時間をとりますし春の学校の間はslackでもご質問を受け付けますので、研究内容のことでも勉強法のことでも、さらに若い学生さんたちはキャリアのことでも何でもご質問ください。未発表データを含みますのでご配慮お願い申し上げます (& 学生のshort talkスライドは配布しません)。
  • 17:00-18:00 Final Lecture 情報科学的な観点から見た2024年度の振り返りと2025年度の展望: 学生さん達の発表の後に当研究室の教育のやり方について簡単にご紹介した後、2024年度を振り返って特に大事なAI関連技術の紹介や、変化の激しい時代にどのようにキャッチアップしていくのかいくつかご紹介します。この1時間はバイオメディカルデータは全く出てきません。ここで紹介した技術や考え方をご自身の生命科学や医療データにどう適用できるのか、それを考えることを春休みの宿題とさせていただいて (笑)、「春の学校」を閉じさせていただきます 。

重要なご案内 (必ずご確認ください):

  • 本講習会は 公開講座としてはadvancedな内容を含みます。拙著「Pythonで実践 生命科学データの機械学習」のレベルのAIに関する知識はお持ちであることを前提とした構成になっています。
  • いただいたメールアドレスに春の学校2025参加者限定のslackへ招待しますので、メンバーになっておいてください。資料等の共有は全てそちらで行います。また質問事項は参加者全員が見えるチャンネル上でお願いいたします。ダイレクトメッセージ (DM) 等でのご質問は対応できません。
  • 欠席の方のための後日のオンデマンド配信の予定はございません。春の学校は当日限りです。
  • 資料の再配布、および知り得たconfidentialな情報 (学生talk等) の漏洩はお控えください。 
  • ご参加いただいた後に簡単なアンケートをお送りいたします。その回答、およびweb掲載用の感想文 (次年度受講者へのメッセージを含む) を4月末までにメール等で提出いただいた時点で春の学校の修了となります。

申し込み方法:

下記Googleフォームから3月9日までにご登録ください。1次募集 (2月末まで) 、および2次募集 (3/9まで) に分けて募集をします。他の方法 (メールなど) での応募はできません。応募受付のメールは差し上げませんが、登録フォームで「正常に受け付けました」と表示された方はエントリーできていますのでご安心ください。

うまくフォームが表示されていない方はこちらのリンクをお使いください。どちらからお申し込みいただいても同じです。