「データサイエンスで未来の医療を創る」を合言葉にドライ (生命科学や医療データの解析) に主軸を置きつつもウェット (実験) と融合して今の医学では分からないことを解き明かし、病気の予防・診断・治療法を創出することを目指しています。
この目標のため、多岐にわたるバイオメディカル情報を「測る」、最新の数理・情報科学手法で「モデル化する」「予測する」、そして実験による検証という、三位一体研究を行っています。また、未来の医療を作り出すためロボットや光学・ナノテクノロジー、化学や合成生物学といった領域の先生方と連携し学際的なアプローチによりヘルスケアの革新を目指しています。
いろいろなアプローチやテーマをやっていますが、長期的に見ている場所がブレてなければ短期的に見たブレは研究の広がりになると信じています。本学の理念である「世代を超えた人類のトータル・ヘルスケアの実現」および当研究室の究極の目標である「データサイエンスで未来の医療を創る」に向け、短期的には変化し続けるチームでありたいと考えています。変化をすることはチャレンジングですが、その分新しいテクノロジーや知見をいち早く取り入れ革新的な医科学研究に取り組むチャンスが得られます。
我々は常に貪欲に学び続け、今の医学では解決できないとても難しい問題に前向きにチャレンジしていきます。
A dream you dream alone is only a dream. A dream you dream together is reality.
by John Lennon
Project 1: Bioinformatics for Healthcare
医師としての専門的な知見をベースにして、健康・疾患データならではの課題に対処するための解析手法・ツールの開発や、患者さんの層別化に関する研究を行っています。
バイオインフォマティクスと呼ばれる領域と医療の応用研究により、一例を挙げればTNMステージ分類以上にがん患者さんの予後を層別化する方法を開発し、個別化医療への実現を目指してきました。
がんだけでなく、例えば心電図のみから心臓以外の病気を発見するための方法の構築や、リウマチ・結核・ウイルス感染症等、さまざまな疾患データの解析も行っています。
Precision Medicine Comes of Age
References
- Hozumi H et al., Bayesian network enables interpretable and state-of-the-art prediction of immunotherapy responses in cancer patients. PNAS Nexus 2023
- Shimizu H, Nakayama KI. A universal molecular prognostic score for gastrointestinal tumors. NPJ Genom. Med. 2021
- Aso H et al. Multiomics investigation revealing comprehensive characteristics of HIV-1-infected cells in vivo. Cell Rep. 2020
- Shimizu H, Nakayama KI. A 23 gene-based molecular prognostic score precisely predicts overall survival of breast cancer patients. EBioMedicine 2019
- Shimizu H, Nakayama KI. Artificial intelligence in oncology. Cancer Sci. 2020
Project 2: AI DRUG Discovery
広大な化合物の「海」からほとんど手がかりなしに目的の化合物を「照らし出す」AI創薬システムLIGHTHOUSE (灯台)を開発し、新聞・テレビに大きく報道されました。
現在はLIGHTHOUSEをさらに拡張させ、物理化学法則を取り込んだ創薬基盤プラットフォームの開発をしています。そして、低分子化合物よりも高い特異性・親和性をもつ中分子医薬品のデザインにも挑戦しています。
並行して、投与した薬剤の体内における精密なシュミレーションや副作用の予測法、そしてその分子間相互作用についても解釈可能な方法の確立を目指しています。
QUEST for SMARTER THERAPEUTICS
References and media
- Sakuma T et al., High-Resolution Mapping of the Human E3-Substrate Interactome using Ubicon Uncovers Network Architecture and Cancer Vulnerabilities. bioRxiv 2025
- Otani H et al. , BaCNet: Deep Learning Accelerates Novel Antibiotic Discovery Against Resistant Pathogens. bioRxiv 2025
- Shimizu H et al. , LIGHTHOUSE illuminates therapeutics for a variety of diseases including COVID-19. iScience 2022
- NHK news
- RKB news
- Asahi newspaper
- Yomiuri newspaper
Project 3: Systems and mathematical Medicine
生体システムの破綻としての疾患に対し、大規模計測データの数理・情報学的解析によってその病態の理解に深く切り込んでいます。微分方程式やその他の応用数学的手法を駆使し、システム生物学的アプローチを指向しています。
一例として、いわばがんの「アキレス腱」とも言える弱点を探しよりよい併用療法の提案を行っています。また、免疫系が持つ精緻でロバストなシステムを制御工学視点も踏まえ解読に取り組んでいます。
さらに、疾患/細胞ごとの全細胞シミュレーション系の構築を行っています。iPhoneが電話を変革したのと同じく、将来は私達が作ったiHepatocyte等がsingle cellデータ解析等の疾患研究に欠かせないものになるでしょう。
artificial Cell for biomedicine
References
- Ito T et al., MetDeeCINE: Deciphering Metabolic Regulation through Deep Learning and Multi-Omics. bioRxiv 2025
- Hishinuma H et al., Data-driven discovery and parameter estimation of mathematical models in biological pattern formation. PLoS Comput. Biol. 2025
- Kodama, Oshikawa, Shimizu H et al., A shift in glutamine nitrogen metabolism contributes to malignant progression of cancer. Nature Commun. 2020
PROJECT 4: Biologically Inspired computation
広い意味のライフサイエンス研究は、遺伝子クローニング、シークエンス、PCR、RNAi、iPS、ゲノム編集、オプトジェネティクス、次世代シークエンス、シングルセル解析等、新しいテクノロジーが台頭するたびに急速に進展してきました。そして今後も、生命科学に、そして最終的には医療に還元するためには、バイオテクノロジーへの投資が不可欠だと考えています。
東京医科歯科大学で独立後に新たに始めたのが、次世代のバイオテクノロジーとしてのDNAを使った計算科学です。一例をあげれば、パソコンではなく細胞内で行われるパターン認識・畳み込みニューラルネットワークの研究です。これらを拡張し、 (今はSFにしか聞こえませんが) 体内をパトロールし病気を識別してくれる細胞療法の確立や、ゆくゆくはより複雑な回路をインストールし薬を量産してくれる細胞の樹立を目指していきます。
Any sufficiently advanced technology is indistinguishable from magic
Project Green
私たちはこれをProject GREENと呼んでいますが、その理由はDNAコンピューターは普通のコンピューターに比べて必要なエネルギーがずっと少ないからです。今はゼロカーボンやSDGsの重要性が叫ばれています。バイオの力を活かした地球に優しい未来の計算手法の確立を目指してProject GREENと名付けました。もちろん、私達の本当のゴールはGreenのその先にある医療イノベーションです。千里の道も一歩から。SFのような大きなストーリーに地道に取り組んでいます。
Project 5: HARNESSING THE NATURE FOR FUTURE THERAPEUTICS
自然界、特に微生物がもつ性質をデータマイニングし、自然界の設計法則を探求しています。
そしてその法則を活用して、有用な化合物を効率よく作り出すいわば「デザイナーバクテリア」を創出し、感染症やさまざまな疾患治療につなげたいという、野心的なテーマに取り組み始めました。
情報科学と合成生物学の可能性を信じています。
Biology by design
References
- Ito T et al. A Functional Atlas of the Tardigrade Resistome Reveals a Diverse Molecular Toolkit for Extremotolerance. bioRxiv 2025
- Otani Y et al. AMP-Atlas: Comprehensive Atlas of Antimicrobial Peptides to Combat Multidrug-resistant Bacteria. bioRxiv 2025
PROJECT 6: Quantum Computing for Biomedicine
Project 2に関連して、AI創薬やその他のバイオメディカル領域の次世代のキラーテクノロジーになると考えているのが量子情報科学です。例えば量子化学は創薬を大きく加速してくれますが、量子計算は量子コンピューターと非常に相性がいいです。
ハードウェア以外の量子コンピューター領域 (アルゴリズム開発など) の研究を行っており、AIと合わせた量子機械学習という分野もあります。
現状の量子コンピューターはまだ真の意味の量子コンピューターではありませんが、生命科学や医学で、従来のスパコンでは太刀打ちできないタスクに量子情報科学でイノベーションを起こしたいと考えています。
Quantum informatics coupled with AI accerates biomedical innovation
量子 x AI領域に切り込みたい挑戦者募集
量子コンピューターはまだまだ黎明期にありますが確実に開発が進んでいます。ハードウェアとしての量子コンピューター開発は大規模な資金と優れたチームがなければなしえませんが、ソフトとしてのアルゴリズムはアイデア次第でさまざまなチャンスがあります。医科歯科大学に着任後に始めたのでまだ業績はありませんが、医学やバイオのバックグランドを背景に、将来性が非常に注目されている量子情報科学に一緒に貢献しませんか?
政府が重視する領域は「バイオ、量子技術、AI(人工知能)、次世代医療」ですが、清水研では全てを学ぶことができます。