AIと実験で、まだ世界にない薬を創る。
創薬研究者を目指す人のための大学院、東京科学大学 AIシステム医科学分野(清水研)
AI創薬・計算化学から、分子生物学実験、そして医療の現場まで。創薬研究者に必要な力を一つの研究室で、体系的に身につけられます。薬学・化学・生命科学・情報・物理など、出身学部は問いません。
数字で見る、創薬の清水研
「薬を作る仕事」を知っていますか?
製薬企業で「薬に関わる仕事」と一口に言っても、その中身は大きく異なります。一つの薬は、研究で候補となる物質を見つけ、臨床試験で効果と安全性を確かめ、国の承認を得て、ようやく患者さんのもとに届きます。それぞれの段階を、異なる専門職が担っています。
- 研究職: 病気の原因となる標的を見つけ、薬の候補となる化合物・ペプチド・抗体などを設計し、効果や安全性、体内での動きを調べる
- 開発職: 臨床試験(治験)を計画・運営し、得られたデータをまとめて国の承認申請につなげる
- MR職: 医療機関に薬の情報を届け、現場からの情報を集める
- 生産技術職: 薬を安定した品質で製造するための工程や設備を整える
「自分のアイデアで新しい薬を生み出したい」と考えているなら、目指すのは研究職です。
創薬研究者になるために、なぜ博士号なのか
製薬企業の研究職は、修士課程を修了して就く人もいますが、最先端の創薬ほど、博士号を持つ人や、それに準ずる研究実績(在学中に筆頭著者として英語の学術論文を発表しているなど)を持つ人が有利になり、求められる場面も増えています。アカデミアで創薬研究をするなら、博士号は前提です。詳しくは(多くの方にとって) 修士卒で大手製薬会社の研究職というのは難しい理由にまとめました。
理由はシンプルです。世界の誰も知らない問いに挑み、試行錯誤して結果をまとめ、論文として発表する。これは、創薬研究者の仕事そのものです。博士号は、その力を身につけたことの証明なのです。
博士号だけでは足りない。創薬研究者に「幅」が必要な理由
ただし、博士号はあくまでスタートラインです。創薬の世界では新しい技術が次々に登場していて、一つの専門分野だけで30年、40年と第一線に立ち続けるのは簡単ではありません。
今の創薬研究者が関わる領域は、生命科学と化学を中心に、分子シミュレーションなどの物理、医療の知識、そして標的分子を見つけるためのバイオインフォマティクスやAI創薬まで、とても幅広くなっています。もちろん、そのすべての第一人者になれる人はいません。だからこそ創薬はチームで進めます。そのとき大切になるのが、自分の専門分野では世界の最先端を切り拓きながら、ほかの分野の専門家とも議論できる「のりしろ」です。のりしろがあるからこそ、異なる専門を持つ人同士がつながり、一緒に新しい薬を生み出せるのです。
大学院の研究室では、自分の研究テーマを深めることが中心になるのが一般的です。創薬研究者を目指すなら、それに加えて、ほかの分野への土台を意識的に作っておくことが、将来の大きな武器になります。清水研は、この「深い専門性」と「幅広い土台」の両方を、大学院のうちに身につけられるように設計された研究室です。
清水研で身につく、創薬研究者の3つの武器
1. AI・計算創薬 — ドライ
清水研の主軸です。AIによる分子設計、分子シミュレーション、量子化学計算、そしてAIエージェントによる創薬まで、計算から薬を生み出す方法を学びます。バイオ系に特化した国内最高レベルのスーパーコンピューターSHIROKANEと、東京科学大学のTSUBAME 4.0が使え、最先端のGPUを使った大規模なAIの学習も可能です。創薬計算化学ソフトのMOEをはじめとする有償ソフトも揃っており、量子コンピューターにもアクセスできます。
2. 実験と測定 — ウェット
AIの予測は、実験で確かめてはじめて意味を持ちます。研究室に併設された生命科学・創薬実験室では、分子や細胞を扱う一通りの実験ができ、化合物と標的タンパク質の結合定数・解離定数を測定する専門的な機器や実験自動化ロボットも備えています。徒歩圏内の共同研究者とともに、有機合成、オルガノイド、マウス実験なども進めています。希望すれば、ドライとウェットの両方のプロジェクトに関わることができます。
3. 医療と生命科学 — メディカル
薬は、最終的に患者さんに届いてはじめて価値を持ちます。PIの清水は現役の医師で、大学病院もすぐそばにあります。医師以外の出身の方も、医学科4年生(病院実習前の座学修了)相当の医療の基本を身につけられるよう、週3回の「朝活」を開いています。分子細胞生物学の定番書『The Cell』の輪読会などで、生命科学の土台も固めます。
2年間で「創薬の共通言語」を身につけるカリキュラム
清水研の教育は、大学院の合格直後から始まります。
- 合格〜入学まで: 自宅でできるオリジナルのプログラミング教材と、オンラインの事前勉強会で、バイオインフォマティクスとAIプログラミングの基礎を身につけて入学します
- 入学後の2か月: オリエンテーションで、データサイエンスと生命科学実験の両方の基礎を学びます
- 2年間の内部勉強会: 最先端の機械学習を体系的に学ぶ「ML特論」と、生命科学・化学・物理を横断的に学ぶ「CS特論」の2本立てです。CS特論では、『The Cell』の輪読、論文図表の読み方、統計科学、アルゴリズム、システム生物学、有機化学、生物物理化学、分子動力学(MD)シミュレーション、量子化学の創薬応用など、創薬研究者に必要なトピックを幅広く扱います
- 論文輪読会(Journal Club): 研究室全体で、生命科学・医療・数理情報科学の論文をジャンルを問わず読み、討論します
- 清水との1対1の論文共同執筆: 研究の早い段階から月2回ほど、清水と一緒に原稿を書き上げ、論文を書く力と論理的思考力を鍛えます
- マイプロジェクト: 自分で研究テーマを考え、研究費の申請書の形式で提案し、フィードバックを受けて磨き上げます。創薬研究者として独り立ちするための企画力が身につきます
先輩たちは、もう創薬の最前線にいます
清水研では、大学院生が主役となって、さまざまな創薬プロジェクトを進めています。その一部をご紹介します。
AIエージェントが創薬を進める「OrchestRA」 博士課程の学生3名が、複数のAIが連携して創薬のプロセスを進める創薬AIエージェントを開発しました。同じメンバーは、業界誌『月刊BIOINDUSTRY』の特集「AI創薬の最前線」に、AIエージェントによる生命科学・創薬科学の革新についての解説記事も執筆しています。 → 論文(arXiv)
抗体医薬をデザインする 博士課程の学生が、1本鎖の抗体(scFv)をデザインする方法を開発しました。抗体医薬の設計に、計算科学から迫る研究です。 → 論文(bioRxiv)
「リガンドが分からない受容体」の相手を探す 多くの薬の標的であるGPCRの中には、体内で結合する相手(内在性リガンド)が分かっていないものがあります。博士課程の学生2名が、その相手をAIで探し出し、創薬への応用も見据えた手法を開発しました。 → 論文(bioRxiv)
タンパク質分解創薬への足がかり「Ubicon」 ユビキチンE3リガーゼによって分解されるタンパク質を予測するAIを開発し、システム生物学的に解析しました。PROTACなどのタンパク質分解創薬への展開も視野に入れています。 → 論文(bioRxiv)
感染症に挑む、抗菌中分子の探索 修士課程の学生(当時)が、抗菌活性を持つ中分子を予測する方法と、それを使ったシステムワイドな探索、そして感染症のAI創薬に取り組みました。修士課程の間に2本の論文をまとめています。 → 論文1(bioRxiv)・論文2(bioRxiv)
文系学部から、がんの併用療法の研究へ 経済学部を卒業して清水研の修士課程に進んだ1期生が、がんの併用療法に関する研究を修士課程の間に論文にまとめました。出身学部に関係なく、創薬研究者への道は開けます。 → 論文(bioRxiv)
このほかにも、天然物からの創薬、中分子・ペプチド創薬、ロボットとAIによる分子創成の自動化、量子コンピューターを使った結合自由エネルギーの予測など、チームとしてさまざまな創薬研究に取り組んでいます。
創薬の学会で、評価されています
- 情報計算化学生物学会(CBI学会)2026: 博士課程の学生が口頭発表賞、修士1年の学生がポスター賞、博士課程の学生2名が学生発表奨励賞を受賞
- CBI学会 2025: 大学院生2名が学生奨励発表賞を受賞
- 日本分子生物学会 2025: 1,599演題のエントリーから選ばれるポスター賞を、博士課程の学生2名が受賞
- 書籍・解説記事: 大学院生と清水で書籍『AIとバイオの融合最前線』を分担執筆。『医学のあゆみ』にも、人工知能を活用した創薬研究の解説記事を執筆
学会賞・論文発表の喜びの声は、こちらでも紹介しています。
医療・生命科学・情報科学のすべてを知るPIのもとで
研究室を主宰する清水は、医師であり、疾患の分子生物学で博士号を取得した基礎医学研究者であり、AIの実践者でもあります。創薬研究者に必要な領域を、自分自身の経験として横断してきました。
- 臨床から: 内科医として診療に携わるほか、治験分担医師として多数の臨床治験に関わってきました
- 基礎医学から: 九州大学の中山敬一教授のもとで疾患の分子生物学を研究し、博士号を取得
- 世界の最前線から: 米国Harvard Medical Schoolのシステム生物学部門や、合成生物学の研究機関で、創薬にもつながる研究に従事
- AIの実践者として: データ分析コンペティションKaggleのMaster。著書『Pythonで実践 生命科学データの機械学習』では、AI創薬や中分子まで扱っています
- 創薬の研究拠点で: 東京科学大学の核酸・ペプチド創薬治療研究センター(TIDEセンター)の構成メンバーとして、中分子創薬と中分子のin silicoデザインに取り組んでいます。JST創発研究者として「次世代創薬分子設計」の研究も進めています
- 創薬の現場に向けて: 国際医薬品開発展(CPHI Japan)、MOEフォーラム、日本化学会の化学フェスタ、CBI学会、環太平洋国際化学会議(Pacifichem)など、製薬・化学・創薬の場で招待講演を重ねています
創薬研究に打ち込める環境
- 東京の中心で: JR御茶ノ水駅から徒歩5分。東京駅からも電車で10分ほどで、学会、研究会、企業のセミナーにすぐ足を運べます。大学院生は毎年のようにCBI学会で研究を発表し、最新の創薬の知見に触れています
- 計算環境: スーパーコンピューターSHIROKANE・TSUBAME 4.0、最先端のGPU、MOEなどの創薬計算ソフト、量子コンピューターへのアクセス
- 実験環境: 研究室併設の生命科学・創薬実験室、結合定数・解離定数の測定機器、実験自動化ロボット、学内で清水研だけが持つ創薬機器
- ロボットとAIの融合: 徒歩10分の場所に、生命科学・医学研究のためのロボット科学センターがあり、共同研究を進めています
- 医療との近さ: 大学病院がすぐそばにあり、医療現場との連携もしやすい環境です
産業界とのつながり
清水研は、国内外のアカデミア、企業、医療機関と、50を超える共同研究を進めています。新産業創成研究院にも所属し、研究成果を社会に届けることにも力を入れていて、独自の国際特許も複数持っています。在学中から産業界の研究者と議論する機会があり、研究で実績を出した方には、共同研究先の企業でのインターンの機会を紹介することもあります。アカデミアで創薬研究を続けたい方にも、製薬企業の研究職を目指す方にも、広い視野で進路を考えられる環境です。
研究に専念できる経済支援
博士課程では、研究に専念するための経済支援を受けられる制度がたくさんあります。
- 日本学術振興会 特別研究員(DC): 月20万円
- 東京科学大学 BOOST: 年360万円 × 3年間
- 東京科学大学 CS: 年250万円(+授業料50万円)× 4年間
- 東京科学大学 SPRING: 年200万円 × 4年間
清水研は、これらの採択率が東京科学大学で最も高い研究室の1つで、アカデミアを志望する博士課程の学生は全員が何らかの経済支援を受けています。採択された先輩たちのノウハウを生かした申請書の指導に加え、清水研独自の大学院生への経済支援として、TA・RAとしての採用も積極的に行っています。
こんな方を待っています
- 自分のアイデアで、まだ世界にない薬を生み出したい方
- 製薬企業やアカデミアで、創薬研究者として活躍したい方
- AIや計算科学を武器に、創薬に新しい風を吹き込みたい方
- 薬学・化学・生命科学で学んだことに、データサイエンスを掛け合わせたい方
- 情報科学・物理・数学で学んだことを、医療と創薬に生かしたい方
清水研は研究者の育成を重視しているため、博士課程までの進学を考えている方を特に歓迎しています。今の時点で特別な才能や経験に自信がなくても大丈夫です。創薬研究者になりたいという本気の思いがあれば、そのための力は清水研で身につけられます。
よくある質問
Q. 薬学部の出身でなくても大丈夫ですか? はい。清水研のメンバーは、医・歯・薬・理・工・農と、理系のほぼすべての学部から来ています。文系学部の出身で、修士課程の間に創薬に関わる研究を論文にまとめた先輩もいます。
Q. プログラミングの経験がありません。 大丈夫です。合格後、入学までに自宅でできるオリジナルのプログラミング教材とオンラインの事前勉強会で、基礎から学べます。入学後も、2年間の内部勉強会で体系的に身につけられます。
Q. AIだけでなく、実験もできますか? はい。研究室に併設された実験室で、一通りの分子細胞生物学実験や、化合物と標的タンパク質の結合の測定などができます。希望すれば、ドライとウェットの両方のプロジェクトに関わることができます。
Q. 修士課程と博士課程、どちらから入ればよいですか? 4年制の学部を卒業する方は、修士課程(2年)から博士課程(4年、成果次第で3年での早期修了も可能)へ進みます。薬学部(6年制)や医学部・歯学部を卒業する方、すでに修士課程を修了している方は、博士課程から入学できます。取得できる学位は、修士(医科学)、博士(医学・学術・数理医科学から選択)です。
そのほかのご質問は、よくある質問とその回答をご覧ください。
まずは、見に来てください
- 気軽に雰囲気を知りたい方 → 月1回のLab Tour、1日体験型のOpen Lab
- AI創薬の最前線に触れてみたい方 → バイオメディカルAI 夏の学校・春の学校(学生・社会人とも無償。AI創薬も扱います)
- 大学院への進学を考えている方 → 大学院お問い合わせのページから、個別面談をお申し込みください
AIと実験で、まだ世界にない薬を創る。その最初の一歩を、清水研で踏み出しませんか。
