東京医科歯科大学・AIシステム医科学分野独自の経済支援

大学院生の間はあくまで「学生」であり世間的には学部生と同じく給料等はありませんが、私たちはある一定の経済サポートは不可欠だと考えています。そこで大学の規定等を満たす範囲で希望される方はティーチング・アシスタント (TA) 、リサーチ・アシスタント (RA)、あるいは当分野の研究補助員のいずれかとして積極的に雇用したいと思います (以下、TA・RAという表記には職名としての研究補助員も含まれます)。これらはいずれも研究教育に関する仕事に月数十時間ほど有報酬で従事していただく制度で、職歴扱いになるため履歴書等にも書くことができます

一部の修士課程〜博士課程1年生の学生、博士課程2年以上の学生 (のうち希望者)は全員、何らかの収入があるようにします。また、より多くの給付を受けられる日本学術振興会の特別研究員DC (月20万円) やACT-Xなどの申請書作成も積極的に支援しています。

以下、当分野独自の支援制度についてのご紹介です。

1) 修士課程の方 (のうち希望者)

修士1年生でかつ筆頭著者としての英語学術論文がアクセプトされていない間は、研究について初学者ですので申し訳ありませんがTAとしては経験不足です。例外的に、修士1年であっても学部生時代などですでに筆頭著者としての実績がある場合、またはデータサイエンスのコンペティションであるKaggleでExpert以上の実績がある方は最初からTA雇用します。

修士2年生になれば1年分の実績があるわけですので、当分野の博士課程にそのまま進学する場合はTAとして雇用します。一方で、就職する場合や他のラボの博士課程へ進学する場合はそれらの準備のため当研究室での活動時間はどうしても減りがちですので、TA業務に従事していただく時間はないと思います。時間が少ない分、TAではなく修論や引き継ぎ等にご尽力ください。

※「英語学術論文」とは、査読付き原著論文でかつSJRに収録されている3万近い雑誌のいずれかに掲載された論文のことを指します。総説や学内に提出した卒論等はカウントしません。

2) 博士課程の方 (のうち希望者)

博士課程1, 2年生は修士での研究経験があるので原則的にTA雇用します。ただし、博士課程にストレートで入ってきた (よその修士を出て清水研究に入った場合も含む) 方で、筆頭著者としての論文実績が無い方は、申し訳ありませんが1から学ぶ立場ですので1年生の間は無給です (2年生になったら予算状況次第ですがTA雇用します)。

すでに筆頭著者として一定の評価を受けている雑誌 (目安としてインパクトファクター5以上) に英語学術論文を発表しているか、ICMLやNeurIPSといった機械学習関連の著名な国際学会での採択実績がある方、あるいは複数の (2本以上の) 英語学術論文を筆頭著者として発表している方、またはデータサイエンスのコンペティションであるKaggleでMaster以上の実績がある方はTAではなくRA雇用します。いずれにしてもよりステータスが高い学振DC等を獲得できるよう最大限のアシストを並行して行います。

当教室では受け入れ条件の1つに「少なくとも2年に1報の論文発表をする意気込みがある方」がありますが、博士課程入学後2年経過し、1 つ目の論文にまとめて英文学術誌に投稿した博士課程3, 4年生はRA雇用します (アクセプトはまだされていなくてもRA雇用しますが、まだ最初の論文投稿前の3,4年生はTA)。RAには研究テーマの立案から論文執筆までを自らが中心に研究を遂行するポスドクに準じたことを求めますし、大学院生を束ねるリーダーとしても活躍していただきます。同時に研究者としての最初の仕事ともいえる研究資金獲得に向けて大学院生でも応募できるリバネスやACT-X等の外部グラントにも積極的にチャレンジしつつ研究提案書の書き方を学びます。

※「英語学術論文」とは、査読付き原著論文でかつSJRに収録されている3万近い雑誌のいずれかに掲載された論文のことを指します。総説や学内に提出した卒論・修論等はカウントしません。

3) TA/RAの仕事内容等

当分野の大学院受け入れ必須条件の4にも記載した通り、「自ら貪欲に学び続け、また学んだことを仲間同士でシェアしさらに高め合っていけるような向上心と協調性のある方」を受け入れ必須条件にしているためそういった姿勢をTA/RA限らず全ての学生に求めますが、TA/RAに任命された方にはなお一層この点について尽力していただきます。具体的には、当研究室の大学院生による輪読会をTA・RAの方々には主導していただきます。分野はやや異なりますが東大・松尾豊 先生の研究室の学生さん達がやっているDLhacksのようなものです。日本語で書かれた数理や情報科学や機械学習の発展的な書籍を、これは清水が指定することもあれば大学院生の話し合いで決まることもありますが、それを学生達で資料を作り自ら輪読会を開いていただきます。これはTA・RAに共通する仕事内容です。

TAの仕事内容は他に当教室の1年次の勉強会 (pre-JC, CS, ML) の一種のチューターとして後輩たちと取り組むことであったり、いずれも清水が深く関わっている医療とAI・ビッグデータ入門 (学部1年生向け講義&演習)、 医療データ科学概論 (修士1年生向けの講義)、AIシステム医科学特論 (博士1年生向けの講義) 、オンライン勉強会BioMedicalDataScienceClub、医科歯科大学のオンラインslack communty DSC Community夏の学校の補助に加えて、自分が学んだこと・試行錯誤しながら解決したことや研究プロトコルなどを1年後の後輩が読んでも分かるように丁寧にラボのリソースページにまとめたり、読んだ論文を簡単な解説をつけてシェアしたり、同期や後輩・学部生等が困っていたら積極的に指導していただいたり、そういったことを自分の研究時間とは別にさらに毎日1時間ほど取り組んで頂くイメージです。入学後にお分かりいただけると思いますが、清水も大学院生向けにさまざまな教材を開発しましたし、教育も行います。TA・研究補助員には清水と同じレベル以上の教育リソースを作ったり後輩の学生がより研究をしやすくするための、いわば後輩のための環境整備が主務になります。ただ自分の研究・勉強をすればいいというのはTA・研究補助員の仕事ではありません。自分の時間を100%使える大学院生が、大学の事務的な管理運営業務や雑用でかなりの時間を持っていかれている清水よりも下の代への教育や情報共有や教材作成等ができない方はTA・研究補助員としては論外ですので採用できません

RAについては教育より研究活動そのものが仕事の大きな部分になりますので、TA・研究補助員と異なり後輩のための教育コンテンツ作成などを求めることはありません。その代わり、与えられたテーマをやるだけではなく後輩の研究に対しての大きな貢献や自らがプロジェクトを立案し必要に応じて自身で共同研究者を見つけ完遂できる卓越した研究遂行力も求めます。ポスドクに準じた研究遂行力がなければRAとしては採用しません

こうした活動について、TA/RAとも活動実績報告書を毎月作成し事務提出していただくことになります。

具体的なサポート金額は予算と該当者の人数等によって本学の規定の範囲で変わりうることですが、TAの時給は1415円、RAの時給は1515円、研究補助員の時給はTA以下で応相談となります。

「所得」扱いになりますので年度末にご自身で確定申告をしていただくことになります。

4) 免責事項

当分野におけるTA/RAは「収入源がないけどキャリアップのために大学院で自分に投資をしたい」という学生さんに少しでも支援をさせていただくことを目的としています。そのため、次のような場合にはTA/RA雇用はなりませんし、TA/RAであった場合にはその月までの雇用になります。

  • 当分野専属ではない方 (他の研究室から派遣研究指導委託の形で当分野へ出向されている方) → 研究内容そのもの以外のことは当分野ではなく派遣元の先生にご相談ください。
  • 週5日しか研究室に来ない方: 当研究室は土日祝はオフィシャルにはお休みです。確かに日曜日には本当に休んでいただきたいですが、もし週5日しか研究室に来ない場合、土曜日には家庭教師などアルバイトをする時間がとれますよね。当教室からの支援は「収入源がないけど」というのが前提ですので、週5日しか来ない方は当教室のグラントからの経済支援はできません。ご自分の力で返済不要の奨学金などを勝ち取ってください。申請書の添削等はします。一方でcuriosity-drivenで土曜日も自主的に来て研究している方はアルバイトをする時間がないと思いますので研究室のグラントからサポートします。また、実験もしたいという方は、相手が生物である以上、土日祝休みというわけにはいかないでしょう。定期的なアルバイトがコンピューター特化型の人と比べて難しいので、微力ながらラボからも支援したいと思っています。いずれにせよ、直近半年ほどの研究への取り組みの実績次第で、「週5日型」なのか「週6日型」なのかを判断します。
  • 月20時間を超える外勤や月10万円を超える収入がある方 (大学独自の給付型奨学金制度、学振、大学に届け出をしているアルバイト・副業、社会人大学院生など)。→ TA/RAとも20-30時間程度の仕事をする対価として支払われる制度になっているため、外勤等でいない時間が多ければさらに追加でTA/RAをしていただく時間はありません。また、他の収入とTA/RAをあわせた収入が学振特別研究員DCより多くなってしまうとこれに挑戦しようというモチベーションが下がってしまいますが、DCは研究者を目指す上の登竜門でありステータスでもあるので長期的なキャリアを考えるとマイナスです。なお、将来的に返さなければならない奨学金は「収入」としてカウントしません。
  • 自分で考案したマイプロジェクトをしたい方: 当研究室が雇用する場合、それは教員らが獲得した研究費から支出することを意味します。つまり、お金をもらうということはそのプロジェクトに君たちが関わるということ。それが仮に自分にとって興味のないことであったとしても、お金をもらうのであれば拒否権はありません。コンピューターに特化したいとか、実験もしたいとか、君たちの個人的な希望も考慮できませんので、(あまりしたくありませんが研究室の戦略上必要な時には) コンピューターに特化したい人に実験を命じることもあれば、その逆もあるでしょう。また、それに加えて自分で立案したマイプロジェクトをするのは時間的に難しいでしょう (君たちが猛烈なハードワーカーなら別ですが)。その場合、雇用元のプロジェクトを進めるのが優先です。つまり、私達の研究費を、君たちを雇用するために使うのか、それとも給料はいらないから自分のマイプロジェクトにかかるお金に使ってほしい (コンピューターのプロジェクトであっても、論文1本の掲載費だけで50万円ちょっとかかります) のか、どちらかを選んでください。TA/RAとしてのお給料をもらって、かつ自分のマイプロジェクトにかかるお金もほしいというのは難しいです。ちなみに清水だったら、大学院時代は自己投資期間ですから、自分の給料ではなくマイプロジェクトに使ってほしいと思います。実際、大学院時代は恩師から1円もいただいていませんしむしろ奨学金を借りていましたが、こちらのPDFの3ページ目下から2段落目にもあるようにかなり自由にさまざまな研究経験をさせてもらいましたし、おかげで大学院時代に10報以上の論文を出したことが博士号取得後の飛躍につながりました。
  • 企業等への就職活動を行う方 → 企業の就活はとても大変です。1年以上も前から準備をはじめ、数十社に応募する必要があります。それぞれの会社へ書類を準備し、筆記試験があり、幾度にもわたる面接選考があるわけです。したがって、修士課程・博士課程在学中の期間にかなりのエフォートを割かないと内定を勝ち取るのは難しいでしょう。本業である研究に加えてTA/RAとして活動していただく時間はありませんので、民間企業や公務員などの就活をはじめる場合にはTA/RAは打ち切りになります。

また、本制度はあくまで当分野の予算から支払われます。そのため予算獲得状況によって変更がありうるものであり、在学中全ての年度にわたって現時点でTA/RAを保証することはできないことはご理解ください。さらに、分野としてサポートできるのは「TA/RAとしての雇用を強く推薦する。財源は当分野が負担する」と大学に申請するところまでであり、大学が実施する審査の結果、「候補者の経験・実績が本学のTA/RAになるためにはまだ不十分」だと判断されると採用にはならず次の機会に再挑戦することになるのはあらかじめお含みください。

5) その他の支援

東京に一人暮らしをして授業料も払うことを考えると、月25万くらいはもらえないと厳しいと要望されたことが何回かあります。学生全員にラボとして年300万円も支援することはできませんので、そういった方には次のような制度をご紹介しています。いずれも選抜があるため最終的にはご自身の力量と実績等が問われますが、清水研ではできる範囲でのサポートをしています。

  1. 日本学術振興会特別研究員: 優秀な博士課程の大学院生が月20万円を支給してもらえる制度です。これまでの研究実績・今後の研究提案・自己PR文などについて選考があり、採択率は20%程度です。
  2. 東京医科歯科大学卓越大学院生:東京医科歯科大学の博士課程の大学院新入生(およそ200名) の希望者の中から30名ほどを選抜し月16万円を与える制度です。これまでの研究実績・今後の研究提案・自己PR文・大学院入試の成績などについて選考があります。ここで選ばれた30名ほどの中からさらに選考があり、8名の中に入ると本学から追加で年間250万ほど支給 + 授業料全学免除、合わせて300万ほどの支援を受けられます。月16万だと年間200万になり、さらに追加支援を受ければ年収500万相当になります。
  3. 学生支援機構第一種奨学金: 第一種奨学金は無利子で借りることができる奨学金です。将来的に返す必要がありますが、大学院時代の学業成績が優秀だと返還免除される制度があります。「学業成績」というのはつまり研究実績ということでもありますので、清水研で集中的に自己投資をして実績を出せば奨学金返済免除 & 次のポスドクポストゲットという一挙両得が狙えます。

ご覧のようにしかるべき支援を受けるためには、その前段階としてある程度の研究実績が必要になります。したがって大学院に入学する前からの研究への姿勢が問われます。

清水は研究へのearly exposureの重要性を国内の誰よりも深く理解しており、Biomedical Data Science Clubオンライン研究指導といった所属を問わず意欲的な学生さんに早いうちから研究に触れて実績を作る機会を提供しています。こうした制度を今のうちから利用して自己投資をすれば、大学院でどこに行くにせよ手厚い経済支援を受けて研究に専念できる可能性が飛躍的に高まります。