ダブルメンターとして博士課程大学院生に機械学習や統計科学、高度なインフォマティクス解析を伝授します

東京医科歯科大学M&Dデータ科学センターAIシステム医科学分野では生命科学・医療領域のデータ科学 (バイオインフォマティクス・数理モデル・機械学習等) に取り組んでおり、「実験医学別冊・Pythonで実践 生命科学データの機械学習」という書籍の企画・執筆を通して実験系・医療系の方へのデータサイエンス知見の普及にも取り組んで参りました。

これをさらに発展させ、臨床系の先生方や基礎医学・生命科学系の先生方のもとで学んでいる博士課程の大学院生に高度な情報解析をみっちりと伝授するダブルメンター制度についてご案内します。外部への派遣とは違って、先生方の研究室に籍を置きながら大学院生に情報科学も身につけさせることができます

東京医科歯科大学の先生はもちろん、その他の研究機関の先生方も募集しています。オンラインなので全国どこの研究機関にご所属でも可能です

なぜこのような制度を始めたのか

日本の医局や研究室では1人のPIが責任を持って大学院生に博士号をとらせるよう指導するというのが普通ですが、アメリカHarvard Medical Schoolで見た光景はそれとは対極でした。もちろん主で指導する研究者はいるのですが、それ以外にも複数のPIがco-mentorとしてそれぞれの学生を指導しているのです。学生は複数の先生方のそれぞれが得意とすることを吸収し、昨今のハイインパクトジャーナルで要求される分野融合型のリサーチにつながっていくのです。東京医科歯科大学にも「副指導」という制度はありますが、Harvardの制度は「副指導」よりはるかに大きなcontributionが求められる仕組みになっていました。

そこで日本においてもHarvard Medical Schoolの博士課程学生に提供されていたような制度を用意しました。医局の先生方や実験系の先生方のもとで博士号取得を目指している学生さんに高度なインフォマティクスを伝授し、学生さんがそれぞれの研究室に要素技術を持ち帰ることでこれまで以上に高度なAIや数理統計学、情報学を駆使した基礎研究・臨床研究を遂行していただけます

まだ日が浅いのですが、数名の学生さんがこの制度で精力的に学んでいます。参考までに、学生さんの生の声はこちらのページに原文のまま掲載しております。

私たちが提供できるValue

ある特定のプロジェクトに関することをサポートする共同研究や副指導とは一線を画し、ダブルメンター制度では先生方の大学院生に高度なプログラミングスキルやAI・インフォマティクス解析、そして将来どんな新しい解析手法が登場してもその原著論文に記されている数理を読み解く力そのものを伝授します。具体的に、私たちが提供する具体的な内容はこちらの学生向けページをご覧ください。

自分たちの研究室にないものを吸収したい時にはその要素技術を持つ研究室に大学院生を派遣することが一般的かと思いますが、ダブルメンター制度では先生方の研究室に在籍したまま指導しますので、現在の研究や医局duty等をほとんど維持したまま院生に専門的な教育を受けさせることが可能です

先生方がお持ちのデータ (診療データや実験データ等) 解析はもちろん、それだけにとどまらない指導を行いますので、その学生を通して先生方の研究室に新たなノウハウを提供できます

このダブルメンター制度の意図は「人を育てる」ことにありますので、「釣った魚」を与えること、具体的には私たちでデータ解析をして結果だけお渡しするようなことは行いません。いやむしろデータの解析そのものを行うのは先生方の学生であり、私たちが行うのは建設的な助言やリソースの提供にとどまります。さまざまな学びの機会を提供しますが、実際のデータに主体的に向き合い解析をするのは先生方の学生さんであり、自らコンピューター解析を行うことでたくさんのことを取得していただきたいと考えております。

私たちからの希望事項

  • 広範な数理情報科学を武器として身につけていただくために、ダブルメンター期間は2年以上必要です (3年, 4年なども可能です)。
  • 学生さんのご希望があれば、月曜日の午後に2時間ほど私たちの研究室の論文抄読会およびテクノロジーセミナーに先生方の学生がオンライン参加することをお認めください。
  • 最初は月に1回、そのうち隔月に1回、水曜日の午前か金曜日の午後 (日程・曜日は相談可) に先生方の学生が私たちに進捗を報告した上でデータについて討論させていただくことをお認めください。
  • 年に2回、清水研在籍者合同のオンライン研究会に学生が出席・発表するのをお許しください。そこでは先生方の学生さんに国際学会に準じて半年間の研究成果を英語で発表・討論していただきます。もちろん当方のラボメンバーには先生方の未発表データを口外しないよう厳しく指導します。
  • こちらはもし学生が希望すればということなのですが、火曜・金曜の午前に非常に高度な大学院生向けの勉強会を開催しております (オンラインではなく東京医科歯科大学 神田駿河台キャンパスでの開催です)。もし学生さんが希望すれば参加をお認めいただければ幸いです。
  • 特定のプロジェクトのための手法にとらわれない広範な知見を伝授しますが、表向きは先生方の学生さんと取り組むプロジェクトを設定する必要があります。すでに動き始めているものでも、新たに始めるものを私たちと相談しながらという形でも構いません。そのプロジェクトについて、最も適任だと思われる清水以外の当教室メンバーを1~2名選定させていただき、一緒に取り組ませていただきます。当分野の誰を選定するかは清水にご一任ください。
  • ダブルメンター制度は名前にも現れている通り対等の関係で共同で先生方の学生の指導をさせていただくものです。そのためその学生が博士論文を発表する際には、清水をco-corresponding author (の1人) にしていただけますと幸いです。さらに、プロジェクトの内容が実験よりもデータ解析に重きをおいたものである場合には、主で取り組むことになる当分野の教員 (講師 or 特任助教) 1名もco-correspondingに最初から加えていただけると若手教員が先生の学生さんに指導する際の熱の入り方が変わってくると思います。
  • 学生さんが博士号をとった後も、また別の機会に共同研究の可能性を今度は当分野からご相談させていただくことも出てくるかと存じます。もしご縁がありましたら引き続きご指導いただけますと幸甚です

ダブルメンター制度についてお問い合わせのある先生へ

まず最初に、先生の学生さんにこの制度が本当に必要かを今一度ご確認ください。私たちははじめての解析コースという3ヶ月以内でベーシックな解析ができるようになることを目指すコースも提供しております。

そのうえで上記希望事項をお認めいただきダブルメンター制を依頼したいという場合には、学生さんの履歴書などをつけて清水 (h_shimizu.dsc@tmd.ac.jp) にメールでご連絡ください。

当研究室では正規の大学院生として所属を希望する人であってもさまざまな理由から全員を受け入れているわけではありませんので、学生さん向けのページで作成するように依頼しているCV (curriculum vitae) および研究プロジェクトの概要等によっては当分野ではダブルメンターが難しいケースもあることはあらかじめご了承ください。

通常の共同研究よりさらに踏み込んだ形の素晴らしいコラボレーションが始まるのを楽しみにしております。