大学生にバイトやサークルより「研究部」をオススメする理由

大学に入ると、サークルや部活の勧誘の嵐ですよね。また、アルバイトを始める人もいるでしょう。そういう活動を否定はしませんが、今しかない非常に素晴らしい時間の使い方としてとてももったいないと私は思います。

みなさんの親御さんが学生の頃は高度経済成長時代でした。学生時代にたくさん遊んで、そして社会人になってからは「普通」にしているだけでもどんどん豊かになる時代だったのです。ところがみなさんが生きる時代は、間違いなく「普通」では国際的にジリ貧になるでしょう。みなさんの兄・姉、あるいは先輩などで、「結婚しない」「結婚しても子供は作らない」といった価値観の方もいらっしゃるでしょう。実際、出生数は今後も減り続けます。人口が増加から減少に転じている以上、これまでの価値観は通じないのです。それに今は生成AIはじめ非常に変化の速い時代。「普通ではない」こと、「自分ならでの視点」を持って、他の人とは (良い意味で) 差別化ポイントがないと、これからの時代をやっていくのは困難です。

例えば部活やサークルですが、これはみなさんがその領域で生計を立てたいというのでなければいらないのではないかと思います。中学や高校の部活は、まさに体が作られる時期に適切な運動をするとか、多感な時期に友情を育むとか、いろいろなメリットがありました。しかし大学生は中高生と違ってもう大人です。そういう意味で部活やサークルが必要になることはありません。もちろん、趣味の仲間と集まる機会もあってもいいと思いますが、週に3回もやっているとか、もっとひどい場合には毎日 (それも自主練と称して昼間から) 活動しているとか、そういうのは時間の使い方としてとてももったいないです。特に最悪なのは例えば「医学部サッカー部」のような参加できる人がかなり限定されているサークルです。若い頃に自分と似たもの同士しか接点がないと視野が非常に狭くなります。せめてその大学の人なら専攻によらず誰でも参加できるサークルにして、同世代の他の学部の方たちとも交流してください。

バイトについてですが、私の意見としては授業料や家賃等を捻出するためのアルバイトは仕方ないですが、それ以外の例えば自分のお小遣いのためのアルバイトなどはもったいない。大学生ができるアルバイトの時給なんてたかが知れています。非常に貴重な今の時間を、そんな少ない金額と交換するのは時間の無駄遣いといっても過言ではないでしょう。20才前後は何でも吸収できるほとんど最後の年代ですが、それを (正直なところ君でなくても他の人でもできる) ルーチンワークに使ってしまうのは愚かなことです。お金が必要なら、ある程度は奨学金を借りることができます (し、私も昔借りていました)。20才前後の貴重な時間をしっかり自己投資すれば、社会人になってからいくらでも返済できます。

それではサークルやバイトを控えることでできた時間は何に使えばよいのでしょうか? これはみなさんが考えるべき課題ですが、1つの案として「研究部」はどうでしょう? これはもしかしたら理系の学生さんに限られるのかもしれませんが、大学入学時点では大学で専門的なことを学んでそれを活かして将来は研究者になりたいと考えている人は多いと思います。「将来自分は研究者になりたい」あるいは「〇〇と研究の両方をやりたい」というのであれば、その道に少しでも近づけるよう、学部1年生の頃から研究に携わるのです。あるいは最近の学生さんは「データサイエンティストとしてGAFAなどビッグIT企業で働きたい」という人も増えています。何も実績がない学生が採用される可能性はほぼ皆無ですが、例えば情報系の研究をして実績を出すなどポートフォリオが充実していれば夢では全然ありません。こういう方にも「研究部」をオススメします。少なくとも、「テニス部」「塾の個別指導」等で時間を使うよりは自分の夢に近づけることは間違いありません

もちろん、「研究」ですので、本当の部活と同じくらい研究室の活動に熱心に取り組まなければあまり得られるものはないかもしれません。しかし、もともと「研究者になりたい」「データサイエンティストになりたい」等の自分の夢があって、その実現に向けて通っているのですから、非常にワクワクするでしょう。私自身も、学部生時代は朝は6時から夜は22時すぎまで (授業や実習がある9-18時くらいの時間帯を除いて) 毎日のように学部1年の頃から研究室に入り浸っていました。

各大学にはいろいろな研究室がありますので、勇気を出してメールをすればわりと受け入れてもらえると思いますよ。少なくともAIシステム医科学分野は学部1年生から複数名が在籍していますし、ずっと入り浸っている学生さんもいます。またオンライン研究制度で学外の学生さんたちもたくさん在籍しています。

ご参考までに、当研究室で1年間熱心に取り組んだ学部生さんが感想文を書いてくれたので、学部生の間に本気で研究に取り組むことで得たものを本人のご厚意に甘えて原文のままご紹介します。当研究室固有の事情等も含まれていますが、みなさんと同世代の人の1つの意見としてご覧ください。

この1年間を振り返っての感想文を書くにあたって2023年度を思い返してみると、実に多くのことがありながらもあっという間に過ぎたというのが率直な感想です。そして清水研での活動がその中心と言っても過言ではないほど多くのことをラボで勉強・経験させていただきました。

4月になるとそれまで1人で学ぶことが主だったのが、1期生の方々とラボ内の勉強会やJournal Clubで一緒に勉強するようになりました。皆で何時間も教え合っても読めているのかよくわからないような状態だった初回のJournal Clubの準備会と比べるとこの1年間で随分と多分野の論文読解力が身に付いたと感じます。平均して毎週2回の勉強会は大変ながらも大学院生の方々と何とかコンプリートし、バイオロジーや実験のプロトコルなどの生命科学から数学、情報学、機械学習の深い理論など多彩な分野に触れることが出来ました。来年度は今年学んだ内容を必要に応じて復習しつつ2年次の勉強会も引き続き参加しながら、自分が幹事を務める学部生の勉強会も頑張っていきたいと思います。

そして5月末からのプロジェクトセメスターが始まると勉強会に加えて研究も本格的に行っていくこととなりました。目の前の作業・実験に没頭するだけでなく行っている研究はどのようなインパクトがあるのか・あるべきなのかを考えることや、それを適切にアピールするための発表の仕方・論文の書き方に試行錯誤しながらも、それらについての手厚いご指導のおかげで12月の分子生物学会での発表も無事行うことが出来、基本的なサイエンスのリテラシーを身に着けながら研究を進めることが出来たと感じています。来年度は今行っている研究の成果をより形にしながら新しいテーマやウェット実験等に挑戦していきます。

清水先生をはじめとするスタッフの方々や大学院生には勉強会や研究をはじめとしてそれ以外の部分でも非常にお世話になりました。清水研の皆さんとの交流があったからこそ清水研の一番ハードな時期や学部との両立が難しい時期も続けられたと思っています。来年度は2期生の方々や他の学部生にとって自分がその様な存在になれる様心がけていきます。

清水研は研究を軸としながらもそれ以外にも非常に多くのことが勉強でき身に付くあまり他にないであろう環境だと思います。本文を寄せるにあたり、清水研での今後も楽しみつつ自分がよりよい場所に出来る様尽力することを決意するに至りました。

もちろん、「研究部」というのは1つの案です。例えば将来の目標が「日本とインドの架け橋となる医療者になりたい」ということであれば、部活やバイトのかわりに (英語はもちろん) ヒンディー語の習得、そして実際のインドに何度も足を運ぶなどが、活動の主となることでしょう (実際、そのような医学生さんを知っています)。大事なのは、「みんなが部活やバイトをしているから」ということだけで自分も部活やバイトをするのではなく、卒業後を見据えて自分は何をしたいのかを考え、もし決まっているものがあるならそれを今から取り組むということです。

みなさんの可能性は無限大、なかなか決められないという方も少なくないでしょう。そういう方には、やはり「研究部」をオススメします。どのような進路であっても、プロジェクトを決め、それに必要なものを自ら学び、プロジェクトをすすめて周りのメンバーと討論し、そして最終的にプロジェクトの成果をまとめて発表する (しかも英語で)というのは、きっと大いに役に立つはず。学会発表・論文発表は君たちの履歴書にも大いにプラスになりますよ。学生の本分は部活でもバイトでもなく学問です

学生時代から (みんなと同じではなく)自分は何をしたいのか、もっというと差別化ポイントをしっかりと考えてください。そして当たり前の話ですが、自分の夢を実現するためには自分が行動しなければなりません。それも圧倒的に。世間の学生は大学への入学が一種のゴールで学生時代はモラトリアム期間だと思っている人も少なくないですが、そういう見識違いも甚だしい時流を読めない凡人こそ今から時間をかけて着実に取り組まないと何者にもなり得ないですよ、というちょっと厳しいメッセージも、エールに替えてお伝えしておきます。前途洋々たるみなさんの活躍が今から楽しみです。