ラボ教育ポリシー
世界一素晴らしい大学院教育を目指して
私は、教育を非常に重視しています。そして、「世界一流を目指す科学者を養成」することを唯一無二の目的にしています。これは「一流の研究」をすることとは少し異なります。私が目指しているものは、研究業界ではよく知られている学術誌に掲載されるようなしっかりとしたサイエンスをしながら(現在)、かつ、次世代のスターを養成すること(未来)なのです。もちろん、 「世界一流の研究」をしている研究室はたくさんあります。しかし、真剣に「世界一流を目指す科学者を養成」している研究室はそれほど多くはありません。ボスが実は何もテーマや進捗を把握していない「放置系」ラボ、逆にボスのリーダーシップが強すぎてかなりの部分を指示される「テクニシャン系」ラボ、大型プロジェクトに取り組んでいて自分が担当するのはそのごく一部のみという「歯車系」ラボなど、これまで数多くの対外的には一流でも実態はブラックラボの話を見聞きしてきました。
私のラボでは、皆さんの必死さを全力でサポートします。そして、流した「汗」と「涙」が最大限報われるようにします。私は、真剣に世界一素晴らしい大学院教育を目指しています。大袈裟に聞こえるかも知れませんが、いたって真面目です。
2000年前から分かっている真実
もちろん知識だけでは科学はできませんが、知識なしでも科学はできません。科学は論理であり、“無”から創造するものではなく、“有”から組み立てるものです。その組み立てるパーツになるものが知識であり(=学ぶこと)、組み立て方が論理です(=考えること)。両方が必要なことは孔子の時代からわかっていた真理です。学而不思則罔。思而不学則殆。
「学んで考えなければ、すなわち愚かである。考えて学ばなければすなわち危険である」。
つまり勉強ばかりしても思考しなければ愚かであり、思考しても知識がなければ何にもならない、ということを孔子は言っています。
まずは最初の「思考」からいきましょう。思考とは、必要条件と十分条件、場合分けなどさまざまな論理を駆使して、物事を考えることを言います。科学者にとっては必須の頭脳テクニックですが、残念なことに、この思考訓練の重要性に気付いている学生はほとんどいません。
次に「学ぶ」です。近年では複数の領域にわたる融合的な研究が増え、さまざまなテクニックも大量に出現してきました。自分の研究に必要になることは特に貪欲に自ら情報収集する力がこれからの時代は求められています。アカデミアのポスドクには昔からよく知られている言葉に「Publish or Perish」(出版か死か、つまり論文を書かなければ生き残れない)という言葉がありますが、これをもじった言葉「Learn or die」(死ぬ気で学べ)を日本を代表するAI系のユニコーン企業Preferred Network社は社訓にしています。ビジネスが中心の会社ですらそうなのですから、世界初でなければ成果にならないアカデミア、しかも修行中の学生ならなおさら「Learn or die」でしょう。 また、エビングハウスの忘却曲線によれば最も定着率が高いのは人に教えるという勉強法です。自分が学んだことを仲間に教えることで知識をさらに定着させ、逆に仲間からも教えてもらうことで自分がフォローしきれていないことを学ぶチャンスです。
志の高いライバルとともに学び、頭を使って考えることで、大きな研究につながっていきます。
一人で魚が釣れるようにして世界へ
私の教育ポリシーは、釣った魚を与えるのではなく、自分で魚を釣る術を教える、というものです。他のラボを見ていると、指導者がとても親切なためか、学生のために魚を釣ってあげている光景をよく目にします。指導者が優秀で幸運に恵まれると、一流雑誌に論文が載ったりすることもあります。しかし、それは長い目で見れば、学生をダメにしていることは明白です。そういう学生にちょっとひねった質問をすると、たちまちしどろもどろになります。もちろん優秀なのは指導者であってその学生ではないので、次世代を育てたことにはなりません。私のラボでは、大学院卒業時には、一人で魚が釣れるようにして、世界へ送り出します。つまり、博士課程修了時には、一人前の科学者として、研究の企画・立案・実行・発表が一人でできるだけでなく、卓越したプレゼンテーション能力を兼ね備え、世界中のどこのラボに出しても恥ずかしくない人材にします。 清水研を卒業してアメリカに留学すれば、着いたその日からいきなりスターポスドクです。これは別に驚きではありません。もともと頭が良くて勤勉な日本人に、4年間 (または6年間) みっちり科学的トレーニングをして送り出すのですから、他国の研究者なんかに引けをとるわけがありません。
ボスではなくメンターでありたい
世間一般のラボにおいては、特に臨床系の医局においては、ボスは絶対の存在です。ボスの強い指示のもと、下の人達が作業を行うというのは一般的な会社も含めて日本のほとんどの組織のあり方でしょう。しかし私は、ボスではなくメンターでありたいと思っています。ボスとは違い、メンターに対しては主従関係はありません。指示を出して管理するボスとは違い、メンターの仕事は人を育てることです。もちろんPIとして論文を出すことやグラントを書くことも大事ですが、次世代の科学者を育てるというのは重要なミッションです。研究技術の取得のみならず、自分で考えプロジェクトを管理し、リーダーシップをとる経験をしてほしいと考えていますし、それ以外にも私のいいところは真似を真似をする、よくないところは反面教師にすることでみなさん自身のキャリアにつなげていってほしいと思っています学生時代の積極的発言習慣が国際標準をつくる
私が米国のハーバード大に留学した中で一番印象的だったのは、新人が全然ダメダメの意見をたくさんの人がいるミーティングでグイグイと言うことです。アメリカ人はもちろん、ヨーロッパ諸国からの留学生もみんなそうでした。彼らと渡り合うために唯一日本人に欠けているのは、積極的に発言するという習慣だけです。私は、「会議で発言しなかったらクビ。もっといいラボを紹介する」 というきびしいラボ (笑)で研究者としての下積みをしたおかげで、この海外標準は当然のことでした。どんな優れた人でも、初めは背中を押されないとなかなか前へ進めないのは事実です。ですから、私のラボでは恩師の方針を踏襲し、セミナーや学会で質問する、ミーティングで積極的にディスカッションする、等は「must」です。最初は強制されて負担に感じることもあると思いますが、ある程度の時間が経つと、背中を押さなくてもどんどん前へ歩いていけるようになります。今、これを読んで「エッ」と思った貴方も、きっとできるようになります。
科学者にとって最高のパラダイスであり、次世代を担う研究者のインキュベーターでありたい
賢明な読者は既におわかりのように、世界一流を目指すことは甘いことではありません。必死で立ち向かわなければ、成功は得られないでしょう。私たちのラボが他に比べて少々厳しいことは当然のことです。しかし、科学者人生の成功を渇望する人には、最高のパラダイスであり、インキュベーターでありたい、というのが私のラボポリシーです。
自分に足りないものや新しいことを自ら積極的にかつ貪欲に吸収する、自分の頭で論理的に考える、真剣に科学に向き合う、楽しんで質問・討論する、学んだ知識や情報を喜んで仲間にシェアする。これが清水研の姿です。
若い頃の苦労は買ってでもせよといいます。私も「苦労」(笑) した結果、大学院入学から10年も経たない34歳のときに独立して研究室を立ち上げる機会に恵まれました。 自己実現のために、自分に負荷をかけた自己投資をしてみませんか?
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