考え方や性格的に当研究室に向かないと思われる方リスト

清水は学生さんの将来のことを非常に大事に考えており、学生を無償で働いてくれる労働力とみなす一般的なラボのように学生数をたくさん集めようとは思っていません。むしろ、当教室に性格的に向かないと思われる方を最初から提示することで、ご自身にフィットする他のラボを見つけていただきハッピーになってくれたらいいと考えています

大学院は高等教育の最終段階であり、あまたある大学院の中でも東京医科歯科大学にある清水研はトップクラスの研究・教育を期待されていると言えるでしょう。したがって私の使命はいわゆる大衆教育にはなく、それよりもごくごく一部の少数の方だけでよいから未来の医療を担う前途ある若者に非常に濃密な教育を施し、研究における次の世代の若手のホープ、そしてゆくゆくは日本のリーダーになっていただきたいと思っています。賢い読者はお分かりの通り、これは並大抵のことではありません。大学院における教育は講義のような一方通行ではありません。私達は日本一の教育システムと熱量を持っていますが、当然ながら教育される側にも相当のポテンシャルと意欲(努力)が必要です。

当教室を本気で検討している方は、もう一度しっかりご自身と向き合ってください。私達の考え方を提示しているわけですので、考え方や性格が合わないことを承知の上で入学して、やっぱり合わなくて体調やメンタルが不調になっても私達は何もできないし責任もとれません (自己責任だというのも承知の上でご検討ください)

Major points

このページに掲げている項目のうち、私たちが特に重要と考える3項目をまず強調して紹介します。

ストレスに弱い方 (あるいはストイックさにかける方)

私達のチームはいわゆるブラックラボのように週100時間など長時間拘束することはありませんが、それでもサラリーマンではありませんので1日8時間土日祝休みの週40時間というわけにはいきません。研究者を目指したい、その下積みをしたいという方のみ受け入れているわけですので、それなりの時間自主的に取り組む必要があります。また、野球選手は3割当たれば一流バッターと言われますが研究者も同じです。つまりやってもやってもうまくいかないことも多々あるでしょう。さらに、清水研に入ると毎週多数のプレゼンや人前で意見を述べる機会がありますが、人によってはこういった人前で話すことに強いストレスを感じることでしょう。そういった肉体的、あるいは精神的なストレスに耐久力がない方は清水研は不向きです。

同じ意味合いかもしれませんが、研究者を目指してストイックに自己投資をしたいというのでなければ、もっというとストイックさに欠ける方も清水研を避けた方がいいでしょう。少なくとも私は人並みの努力でスポーツや芸術や学術等のクリエイティビティーが求められる世界で大きな成果を出した方を知りません。大学院生という修行期間ですらストイックに打ち込むことができない、自己投資ができない方は、この業界ではなく他のフィールドに行くことをおすすめします。

当教室・分野への熱意のない方 (あるいはそれを上手にアピールできない方)

例えば就職のためなど、科学的探究心とは別の目的で大学院に入学したい方は清水研ではアンハッピーになるでしょう。普通のラボでは大学院生の大半は就職するのでそういった情報交換もできますが、清水研の大学院生達に修士で就職派はかなり少数だとお考えください。周りが研究をしたくて人生をかけてワクワクしながら取り組んでいる一方で、自分はそれほど興味のない研究に取り組まないといけないというのは苦痛以外の何物でもありません。そういった目的の方はそういった学生さんが多いラボに行った方がいいでしょう。

また、熱意があるならそれを私たち (複数形であることに注意。面談をする清水以外のラボメンバーも含む) にきちんと見せてください。大学院見学はお見合いのようなものとお考えください。学生さんは自分は選ぶ側だと勘違いしている方もいるかもしれませんが、私たちも学生を選んでいます。面談における私たちの選考基準は極めて明快で、「この学生さんと一緒に研究がしたいか」の1点です。もちろん新入生として入ってきたいという学生さんに何かの実績を求めているわけではありません。ただ情熱をみせてくれればいいのです。せめて面談の時間くらいは、私たちに色々質問したり (用意してきた質問を一方的に読み上げるようなものはNG、きちんと対話してください)、自分が出来ること・清水研でこれからやりたいこと・清水研を出た後の将来の目標を語ったりして、(理想的にはワクワクしている感じで)アピールしてほしいなと思います。熱意がなければ (またはあっても伝わってこなければ)、よっぽど知識や技術等で優れていない限り、一緒に研究したいとまでは思ってもらえないでしょう。ご参考までに、当研究室では面談に関わった全てのメンバーから意見を収集してラボとしての受け入れできるかの判断に使っています。

また、研究者になると10-20分の発表で評価されてしまいます。清水以外のメンバーとの面談時間はちょうどそのくらいですが、その限られた時間で自分を最大限アピールをできないと、研究者になるのは難しいでしょう。米国Harvard大の研究室で、ボスが研究室志望の学生にImpress me your way! と言っていたのを何度も聞いています。情熱がない、熱意が伝わらないとNGなのは日本もアメリカも同じです。

叱られるのが屈辱な方 & 自分を変えるのができない方

インターネットで調べるとホワイトラボの要件に何をしても怒らない教授というのがあるようですが、清水研ではそういうわけにはいきません。正確には、私は「怒る」と「叱る」は全然違うものだと思っていて、前者はただの感情吐露ですが後者は成長を促すためのものです。教育上の配慮からみなさんを叱ることもあるでしょう

そして叱られたらしっかりと反省してそれを次に活かす。つまり自分が変わらないといけないのです。私達は理不尽なことを言うつもりはありませんが、科学者としてみなさんが将来飛び立ち人様の前に出た時に笑われないようにスライドのスペース1つレベルから科学者なら当然のことについて厳しく注意します。それに、才能のない人には才能がないことをはっきり言います。才能がないならお手本を細心の注意を払って完璧に真似をするところからで、人並み外れた努力も必要になるでしょう。才能のない学生なのに甘やかすことはしません。才能がないのに相応の努力もしない学生を「褒めて育てる」ということは清水研ではありません。
そういうのがお望みなら自分の実力で「スター」になれる研究室に入るといいでしょう。ルーキーで4番打者、先生方からチヤホヤしてもらえるでしょう。力はまるでつかないでしょうが。

私は教育者として言いにくいこともはっきり言いますから、指摘されたら自分で自覚して行動変容をしてください。私自身も大学院生時代には恩師から何度「才能ない」と言われたことか分かりません。そこで腐っては終了です。大丈夫、この業界は天賦の才がなくても自分の心がけ次第でカバーできます。でも幼少期と違ってみなさんはもう大人、変なプライドがあって性格的になかなか従えない方もいるでしょう。そういう方も清水研には不向きです。私は科学研究の進め方や見せ方や態度に対して叱るのであって、決して学生さんの人格攻撃をしているわけではありません。そのあたりを混同し、逆に叱られたことに対してこちらに逆恨みをするような方には二度と指導しませんので清水研は向きません。

マザー・テレサはこう言いました:「愛の反対は憎しみではない、無関心だ」と。みなさんからしたらうるさい小言を何も言わない一見ホワイトなボスは、ただの無関心です。私も本当は何も言わないのが一番楽でいいのですが、それだと教育になりません。言ってもらえるうち、叱ってもらえるうちが華だと思ってください。どうでもよいと思われたら周りから何も言われなくなります。叱られるのが屈辱な方 & 自分は自分スタンスの方は一見ホワイトな先生のところに行かれてください。卒業時にほぼ何も身についていなくても知りませんが。

Other points

修士卒で企業に研究職として就職したい方 (修士課程希望者のみ)

当教室はかなり学際的な領域を扱っておりますので、これまでの専攻とは違うという方が大半でしょう。上の項目とも連携しますが、専攻を変えるのに修士卒で研究職として採用されるなど (少なくともこの業界では) ありえません。世の大半の修士卒の方は研究とは違う形で企業に就職しているわけですが、特に医療や創薬やAI界隈の研究職という場合には博士号 (あるいはそれに匹敵する輝かしい実績) がほぼマストとお考えください (上層部に指示された通りの商品・製品を作る「開発」がメインの「研究開発職」なら修士卒でも可能かもしれませんが)。もちろん企業ではなくアカデミアの研究者になりたい方は博士号は「ほぼ」ではなくマストで、「博士号はパスポート」と言われている世界です。修士卒で研究者として就職したい方は、研究室を変えて清水研に来るのではなく今の研究室で専門性を深めることをオススメします。清水研の修士を出て例えば営業とか事務とか研究とは違う形で就職したいという方は好きにしてもらって大丈夫ですが、修士卒で就職というのはそうなる可能性が高いことをあらかじめご理解ください。

主体性のない方

私達は大学院生は「プロ」だと言い聞かせています。なぜならば学生の研究活動にかかる費用はほとんど全て税金から賄われており、それは納税者からみたら「プロ」でなくてはならないからです。同じ学生ですが、学部生はお客さんでOKですが大学院生は新入社員と同じ位置付け、社外の人から見たらプロなわけです。学部生のように何かを教えてもらえるのを待っている受け身の方は清水研はむきません。むしろ、教員のスタンスは研究環境を提供することと折に触れて建設的なフィードバックをすることであり、普段の研究活動は自らが主体的にリードしなければなりません。私達はgeneralな生命科学や数理情報科学の教育を行い、みなさんに基礎体力をつけます。そのうえで、やりたい研究があるならご自身でその世界をしっかりと学び教員にproposalしてください。そういったことができない、つまり主体性がないか基礎学力がない学生さんは清水研は向きません。教員に手とり足取り教えてほしい方は他のラボをお探しください。

先生は、研究室は何をしてくれるの、という方

「主体性のない方」と重なりますが、私達に向かって「あなたは何をしてくれるの」という学生が一定数います。未成年のうちは、学校の先生や塾や周りの大人達があれこれしてくれたでしょう。でも18になったらもう成人、ましてやみなさんはいくつですか? なぜ自分で道を切り開こうとしない? もちろんさまざまなサポートや教育はしますが、プロジェクトを考案して研究して論文にまとめて等々、研究の大部分は自分でやらなければなりません。いや「やらなければならない」というのは変ですね、楽しくて自分でやってしまう、といった方がいいでしょう (私達がやって、それを学生さんの手柄にする、いわば「釣った魚を与える」ことはしません。私達がサポートするのは「魚の釣り方を教える」ことです。これは教育ポリシーにも書いています)。みなさんはとても若く、(研究経験はなくともそれを補いうる) 熱意や体力は満ち溢れているはずです。適宜フィードバックを受けつつも、主体的に自分でどんどんやっていきたい、そういう人でないと私達のところで一緒に研究をするのは難しいでしょう。料理番組のように、最初はこれを入れて、次にこれを混ぜて、3分たったら… のようなきめ細やかな指示をお望みであればよそに行ってください。私からすれば、そんな「 (自称) 研究」などクリエイティブとは対極のただの「作業」だと思いまが、需要は人それぞれ、否定はしません。

いつも自分に自信のない方

人間ですから、自信のないときもありますよね。しかし、研究者になりたいのにいつも自分に自信がないというのはNGです。自信がない人の話は聞けばすぐ分かるものですが、そういう姿勢ではどの学会で発表しても聴衆は誰も聞いてくれません。ミーティングでははっきりと自信を持ってお考えを述べていただきます。また、少なくとも自分にはこれが/こういう見方ができる、というのを私達に提供してください。私は大学院生に「テイカー」になるなと言っています。貰いっぱなしではそのうち誰もついてこなくなります。Give & giveくらいの精神で、自分は何をチームにしてあげられるかを常に考えてください。自分では些細なことと思っているようなことでも構いません。私達の研究室ではメンバーの専門性/多様性を非常に重視していますのでどんなことでも歓迎です。自分がチームに何をギブできるのか観察できないのに、より複雑な真理の探求をするのは難しいと思います。また、自信は「自分を信じる」と書きます清水研を希望するというのは、自分を信じて自分に最大限の投資をすることに他なりません。自信を持って門を叩いてください。

不平・不満を持ちやすい方

何かあった時に環境のせいにして不平・不満をいだきやすい方は清水研には向きません。過去と他人は変えられません。しかし未来と自分は変えられます。自分が変わらずして他人や環境に不満を持つのは横柄です。私は学生たちに研究は全て1st author (自分) の責任だと言っていますし、私自身もそう教えられてきました。何か不満があるならそれを自ら動いて解決してください。

気分傾向、悲観傾向の強い方

気分傾向 (気分の浮き沈みでムラが出る)が強いというのはプロとしてあるまじきことです。プロは常に一定のパフォーマンスが求められます。感情を自分でコントロールできない精神的に未熟なお子様には清水研は向きません。また、悲観傾向 (建設的に捉えたり考えたりできない) の強い方も不向きです。なぜなら研究というのは一見ネガティブに見えるデータを建設的に考え、成功のためのヒントを得るという行為の繰り返しだからです。

協調性のない方

人とコミュニケーションが取れない方は清水研には不向きです。同期・先輩後輩みんなで助け合ってやっていく、チームへの貢献ができずに自分だけの世界で完結したい方はよそのラボに行ってください。

人を見下す傾向のある方

上の項目と関係しますが、変なプライドがあって自分の心の中に勝手に序列を作りその中で自分より下の方を見下す傾向のある方は清水研には向きません。チームでwin & winを目指すというのはそれぞれの得意不得意を補い合うということでもありますがそういった人間関係を築く上で、メンバーを見下す人が一人でもいるとうまくいきません。

研究者に性格的に向いている方

逆に、どういう人が研究者に向くでしょうか。ちょっと長くなるので研究者に向く人向かない人【7つの違い】という記事にまとめました。

謝辞

このページは当研究室を短期間で辞めてしまった学生さんからのフィードバック (詳細はこちら) も踏まえて作成しています。