大田 航平 (Kohei Ota)

東京科学大学 (Science Tokyo) 大学院 医歯学総合研究科 修士課程2年 (MS Candidate, 清水研1期生)

【自己紹介・ひとこと】

私のプロフィールに記載されている学士(経済学)という経歴をみて、驚いた方も多いのではないでしょうか。

学部時代、計量経済学という統計的手法を用いた実証分析を通した社会現象のメカニズム解明を目的とする学問に出会い、データサイエンスの魅力を知りました。当初は経済学の修士課程への進学を考えていたのですが、ふとしたきっかけで医学の分野においてもデータサイエンスを用いた研究がおこなわれていることを知り、清水研究室のホームページにたどり着きました。 元々医学への興味があったこと、そして清水研究室のホームページに記載されていた 「私でも研究できますか?」 という問いに対する 「すべて自分の努力次第」 という言葉に刺激を受け、進学を決意しました。

異分野出身の私にとっては文字通り、ゼロからのスタートになると思います。恥を恐れず貪欲に学び、清水研究室での日々が実りあるものになるよう一生懸命頑張ります

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在籍期間: 2023.4~
  • 神奈川県出身、オーストラリア Emmanuel College 卒
  • 2018.9  早稲田大学 政治経済学部 国際政治経済学科 入学
  • 2019.9  早稲田大学 政治経済学部 経済学科 転科
  • 2022.9  同 卒業
  • 2023-2024.9 東京医科歯科大学大学院・医歯学総合研究科・修士課程
  • 2024.10-現在 東京科学大学 大学院・医歯学総合研究科・修士課程 (大学統合)
  • 人工知能と数理統計モデルを活用した抗がん剤の最適レジメン (組み合わせ) の提案
  • 炎症性腸疾患の疾患特異的ゲノムワイド代謝モデル
  • [学会発表] 大田 航平, 古賀 大介, 麻生 啓文, 清水 秀幸. 抗がん剤の多剤併用療法の効果予測モデルの開発. 第46回日本分子生物学会年会, 2023
  • 卒業論文:Is Just Food Policy Enough? Impact of Clean Water Access on the Effectiveness of Food Subsidization in Improving Child Nutrition: The Case of India
  • 早稲田大学政治経済学部9月卒業生副総代
  • 東京医科歯科大学大学院修士課程 入学生代表
  • Waseda Economics and Finance Forumというサークルを設立し、1年で40人以上の学生が所属するサークルに規模を拡大させました。
  • 海外経験:小学校から高校卒業までの12年間をオーストラリアで過ごした帰国子女です。
  • バイオインフォマティクス認定技術者 (2023年, 日本バイオインフォマティクス学会)
  • Kaggle 銀メダリスト (2024年)

大学院最初の1年で成長できたこと, 2024.03.31掲載

修士課程に入学してから早くも一年が経とうとしている。濃密な清水研での1年間を通じて成長できたことについてまとめる。
集中勉強会が終わってからの9ヶ月間、二つの研究テーマを並行して進めてきた。「AIによる抗がん剤の効果予測」と「炎症性腸疾患の疾患特異的ゲノムワイド代謝モデル解析」という二つの全く異なるテーマに取り組むことで、技術と知識の両方において大きく成長できた。技術の面では、シングルセルRNA-seqデータ解析から化合物・がん細胞株の情報を用いたマルチモーダル学習モデルの構築まで、実践的なスキルを幅広く身につけることができた。研究を進める上で、解析に必要なツールを動かせなかったり、学習モデルの環境構築に苦戦をしたりと多くの失敗も経験した。正直、この1年間での研究の進捗は個人的には満足できる内容ではないが、一年目の失敗を通じて得た学びを活かしながら、2年目は論文のpublishを目指して研究に取り組みたい所存である。
この1年間で、清水研の目玉行事であるJournal Clubや大学院生用の勉強会を通じて、自身の研究テーマに直接関係のない分野や技術についても幅広く勉強をすることができた。私のJournal Clubの担当回では、「深層強化学習を用いたソートアルゴリズムの改善」や、「細胞特異的に働く合成エンハンサー配列の設計」などの論文を選択した。馴染みのない分野の論文を紹介することは決して容易ではないが、準備の過程を通じて短期間で多数の論文の要点を捉えながら読み解く力や、重要な部分を簡潔に伝える能力に磨きをかけることができたと感じている。また、勉強会では合成生物学からアルゴリズム論まで非常に多岐にわたる内容を学んだ。これらの取り組みの成果を最も感じることができたのは、冬に分子生物学会に参加した時であった。分子生物学会は生命科学における国内最大規模の学会であり、発表される演題は大多数がウェット実験の内容である。それでも、「口頭発表やポスター発表内容が全く理解できなかった」ということはほとんどなく、発表者の方々と良質な議論を交わすことができた。
清水研での研究活動の一環として、取り組んでいるそれぞれのテーマについて研究計画書と論文のドラフトを執筆する機会があった。私はこのようなアカデミックライティングの経験が乏しかったため、特に研究計画書を書き上げるのにはかなり苦労したが、その過程で多くのことを学ぶことができた。スタッフの先生方に多くの指摘を受けながら文章の修正を重ねることで、自身が取り組んでいる内容を論理的かつ簡潔に伝えるための作文の基礎を身につけることができた。今後どのような進路を歩むにしても、この能力は重要になると私は考えている。今後も積極的に成果をアウトプットづることで、磨きをかけていきたい。
最後に、当研究室を検討している未来の後輩たちへ。ホームページに書かれている様々な内容を熟読して、少し怖気づいてしまった方もいるのではないでしょうか。実際のところ、大学院で「生命科学xデータサイエンス」という極めて学際的な分野の研究に取り組むことは決して簡単なことではありません。私自身、全くの異分野から清水研の門をたたき、この1年間で研究が思うように進まず無力感に苛まれたことも、なかなか自分の成長を実感することができず目標を失いかけてしまうようなこともありました。それでも最初の1年目を走り切ることができたのは、清水研の教育プログラムを通じて身につけた多くのスキルと、スタッフの先生方や同期のサポートがあったからだと考えています。この分野に興味があって、本気で研究に取り組みたい学生にとって清水研はこの上ない研究環境だと思います。もし興味を持っているならば、ぜひ一度見学にきてみてください。みなさんとお会いできるのを楽しみにしています。

大学院最初の3ヶ月で成長できたこと, 2023.07.31掲載

清水研究室に入学してから最初の3か月で成長できたことについてまとめる。当研究室への進学を検討している方々の参考になればと思う。

清水研究室に入って最初の3か月間は、清水研の教育プログラムの一環である集中勉強会を通して研究に必要な基礎知識とスキルを徹底的に身に着けることを目指す。4月は基礎的なバイオインフォマティクスの知識を学ぶ事前勉強会「概論編」に加え、生命科学分野の学部の出身でない大学院生のための、生命科学と解剖学の基礎的な知識を学ぶための集中勉強会が行われる。私自身バックグラウンドは経済学であるため、入学時点では生命科学の知識はほとんどなかったが、これらの勉強会を通して研究に必要な基礎的な知識が身につけることができた。

5月と6月の2か月間は、Bioinformatics誌の最新号に掲載された論文を週に一本選び、内容をスライドにまとめて紹介する事前勉強会「実践編」が行われる。紹介する論文は自由に選べるため、バイオインフォマティクス分野の様々な領域の研究に触れ、最新の研究で使われている手法の知識を深めることができる。短期間で数多くの論文を紹介することによって、論文を読み込む力、建設的に批判する力、そして何より重要な、論文の内容を伝える力を身に着けることができると感じた。論文に書かれていることをただ理解するだけでなく、どの部分がキモなのか、そしてどの部分が最も弱いのかを見極めるスキルは先行研究のサーベイを行う上で必要不可欠となる。また、週一回のプレゼンのフィードバックを通して、スライドの作り方や、難解な論文中の手法の要点を簡潔に、わかりやすく伝える力が徐々に身についたと感じた。いくら素晴らしい研究を行っても、その内容を伝える力がなければ価値が落ちる。事前勉強会「実践編」は研究者に求められる様々なスキルの土台を築いてくれる。

清水研究室に大学院生として入学することを希望している方には、入学までに最低限の数学と統計学の素養を身に着けておくことをおすすめする。具体的には多変数関数の微積分、線形代数、統計検定2級レベルの知識を備えていることが望ましい。これらの知識があれば、集中勉強会やJournal Clubの論文などで目にするバイオインフォマティクスの手法のほとんどを本質的に理解することができ、より効果的な学習期間となるだろう。

最初の3か月で行われる集中勉強会の膨大な内容を大学院の授業や、Journal Clubなどの他の清水研の行事の準備と平行して学ぶことは決して容易ではない。振り返ってみると、清水研での最初の3か月間はこれまでの人生で一番忙しかったと言っても過言ではないと思う。決して楽ではないが、清水研には経済学部出身の私でも、3か月で新しい分野の研究のスタートラインに立てるような教育プログラムが用意されている。本気で研究者を目指すなら、ぜひ当研究室を検討してほしい。