この博士課程の科目では、バイオメディカル領域の研究論文にデータサイエンスがどのように使われているのかを、論文を一種のケーススタディーとして学びます。博士課程に入ってご自身のプロジェクトにデータサイエンスを持ち込むためには、どうしても先行研究を調べて理解し討論することが不可欠です。この特論では、1年生のうちにそのような力を身につけることで、学位論文化を目指す上での最初の土台を築きます。

このような理由から、一種の講義のようにデータサイエンスを網羅的に学ぶコースではありません。網羅的に学びたい方は、入門書としては分析モデル入門ディープラーニングを支える技術、初級者向けの本としては深層学習改訂第2版などの成書をお読みください。

※ ご希望があれば、12~1月にかけて「分析モデル入門」という本を輪読する学部生向けの事前勉強会に参加しベーシックな機械学習や統計科学の勉強をしていただけます (日程のご都合を合わせていただく必要がありますが)

特論においては、年間に2回、ご自身が論文を選び、資料を使ってご説明していただきます。参考までに以前の学生さんが作成した資料を2つ提示します (基礎系の研究臨床系の研究)。成績評価は、ご自身が担当するときはもちろん、それ以外の方が発表する際にどれだけ主体的に討論に参加したか、で行います。普段の出席はとりませんが、自分の担当回で発表できないなどは論外ですからそのおつもりでお願いします。

また、本コースはあくまで最初のきっかけづくりの機会であり、月に1, 2回の開催です。よりたくさんのことを学びたいという意見もいただきましたが、そのような意欲的な方には副指導、そしてさらにずっと踏み込んだダブルメンター制度での教育を提供しています。「AIシステム医科学特論」で物足りない方は、これらの制度もご活用ください。

AIシステム医科学特論の受講生の声

東京医科歯科大学の博士課程の選択科目「AIシステム医科学特論」について受講生の声を原文のまま掲載します。この科目を選択しようか考えている方の参考になれば幸いです。

2024年度

基礎的な部分からAIや機械学習について学ぶことができ、とても勉強になりました。

一方通行型の講義形式ではなく、自分で論文を探し、それを発表しながらディスカッションする、という形式が自分にとっては非常に良かったです。

それに先立って、序盤にあった清水先生の講義がとても分かりやすく、レジュメは今見返しても基本的な内容がスラスラと頭に入る素晴らしいクオリティでした。論文の読み込みをしている時も何度も先生のレジュメを参照させていただき、今でも困った時は参考にしております。

AIや機械学習の分野は、単に理屈を理解するだけではあまりしっくりと分かった気になれず、実際にモデルを動かしたり、シミュレーションすることが大切だと思います。今回自分は眼科分野での論文を発表しましたが、普段慣れ親しんでいる眼科の知識と、AIがどのように応用され新しい診断に繋がっているかを、論文を通して納得することができたことで、より理解が深まりました。加齢黄斑変性の視力予測などはオーダーメイド医療にも確実に応用できる分野であり、機械学習との親和性の高さを実感いたしました。

正直に申し上げると、履修前はやや敬遠しがちな分野だったのですが、今では基本的な知識が身についたので、論文やその他の場面で機械学習の話が登場しても、一通り概略を把握することができると思います。履修を迷っている学生の方は、是非受講をして自分の苦手意識を払拭して下さい!必ず取ってよかったと思えるはずです。

本講義は、最初の3回にわたる機械学習の基礎講義と論文の輪読会で構成されています。基礎講義では、機械学習の数理的な理論から実践的な応用まで、わかりやすく学ぶことができました。特に、AIや機械学習に馴染みの薄い受講者にとっても理解しやすい丁寧な解説は、非常に価値のあるものでした。

続く論文輪読会では、最新の研究動向を知るだけでなく、様々な立場の医療従事者との議論を通じて、多角的な視点を得ることができました。特筆すべきは、参加者の多様性です。各臨床医、研究者など、異なるバックグラウンドを持つ方々が参加しており、AIの医療応用について、理論と実践の両面から議論を深めることができました。

私自身、これまで臨床におけるAI研究の実例に触れる機会が限られていたため、この講義は新たな知見を得る絶好の機会となりました。特に、実際の医療現場でのAI導入事例や、その過程で直面した課題、解決策などについて学べたことは、今後の研究活動に大いに参考になると感じています。

このように、基礎知識の習得から最新の研究動向の把握、さらには実践的な応用まで、包括的に学べる構成となっており、医療分野におけるAI活用の可能性と課題について、より深い理解を得ることができました。講義をしてくださった清水先生に深く感謝申し上げます。

多くの学びがある充実した講座であり、清水先生をはじめ、一緒に履修してくれた皆さんに感謝したいと思います。初学者であっても、初回3回の入門体験会を通して機械学習の基礎から体系的に学ぶことができ、AI技術の基本を理解することができました。自身の研究にどう応用できるかを考える良いきっかけとなったと思います。また、輪読会では他の履修者が取り上げる多様なトピックに触れることで、自分では選ばないような分野の知識を深めることができました。本科目を通じて、AIやデータサイエンスを活用した研究の可能性を広げることができました。これから履修される皆さんには、ぜひ積極的に発表やディスカッションに参加し、楽しみながら学んで頂ければと思います。特に、論文選びの段階で自分の興味や研究テーマに直結するものを選ぶと、学びの効果が倍増するはずです。最後に改めて、清水先生の丁寧な指導と他の履修者の皆さんとの交流に感謝します。この1年間で得た知識と経験を活かし、研究に取り組んでいきたいと思います。

本講義の最初の3回は清水先生による講義と演習、それ以降の回は文献紹介が行われた。

講義と演習では配布資料を用いて実際にコードを動かしながら、ロジスティック回帰などの機械学習アルゴリズムの仕組みを学んだ。特に、ハンドアウトのjupyter notebookの資料を用いた実装を通じて、モデルの学習プロセスや評価指標について実践的に理解を深めることができた。

論文紹介では前半に各担当者が1年以内に発表された最新の論文を、数式を交えながら紹介した。例えば、倫理的な問題を回避するためにGAN(敵対的生成ネットワーク)を用いて生成した画像を解析する手法や、予測の根拠を提示するGrad-CAMを活用して結果の解釈性を高める方法など、医療画像解析に関する論文が取り上げられた。後半では、参加者同士の活発なディスカッションが行われ、モデルの実用性や倫理的課題について多角的な議論が交わされた。

参加者には、臨床の医療従事者から基礎研究者まで幅広いバックグラウンドの方が含まれており、それぞれの専門的な視点からのコメントがあった。特に、医療従事者の視点から「どのようなモデルが臨床現場で求められているのか」や「どのような指標が実用化の鍵となるのか」といった新たな視点を得ることができた点が印象的だった。これにより、実際の医療現場への応用を意識して学ぶ重要性を再認識した。

また、履修者が所属するSlackのDSCコミュニティでは、最新のデータサイエンスの論文が定期的に共有され、各自が主体的に学ぶ機会が設けられていた。例えば、医療分野での深層学習の最新トレンドや、解釈性の高いAIモデルに関する論文が共有され、講義外でも学びを深める環境が整っていた。

2022年度にAIシステム医科学特論を履修し、2023年度、2024年度ではオブザーバーとして参加させていただきました。本講座ではさまざまな医療分野の院生が参加するので、臨床的な観点からAIシステムを議論することが出来ます。昨今の医療技術の発展において、AIは避けて通れないものになりつつあります。本講座では、初学者からでも参加可能で、AIシステムを勉強する良いきっかけになると思いますし、日進月歩のAI領域で、新たなAI技術の話題に触れるのも勉強になります。本講座でAIの勉強をするほど、ますますAIの重要性を認識しました。

2023年度

2022年度にAIシステム医科学特論を履修し、2023年度にもオブザーバーとして参加させていただきました。本講座は医療の機械学習に関する論文を中心にAIシステムの理解を深めていく内容となっています。まず本講座の良い点として、さまざまな医療分野の院生が参加しているので、自分の専門外の機械学習を勉強する機会があることが挙げられます。次に、本講座は単に機械学習の構造や内容を理解するだけでなく、医療現場でどのように実装するべきかなど、幅広い視野に基づいて、より実践的な議論ができる機会になると思います。これから医療現場にAIシステムが導入される流れは、ますます活発になってくると思いますが、初学者からでも参加可能な本講座はAIシステムを勉強する良いきっかけになると思います。

個人的には、AI技術の発展が将来、医療の研究と応用を根底から変革すると考えています。正直に言うと、医学の背景を持つ学生として、AI技術を学び理解しようとする試みは最初の段階で非常に難しいものでした。この講義では、医療AIの論文を実際に共有することが、非常に良いスタート地点でした。特に先生が専門的な視点から論文に含まれている自分が気づかなかった知識を説明してくれるのが素晴らしかったです。基礎知識がなくても心配する必要はありません。積極的に参加してください。

2022年度

講義参加前は、臨床のバックグラウンドと少しの Wet/Dry の知識がある状態でした。データ集計のために Rの定型解析と 最低限の Linux インターフェース は使ったことがあるけれど、もし論文中に数式があってもまず目を通すことをしない、そんな感じです。今回の講義での文献紹介を通して、論文の中の数式をとりあえず見てみるようになったのが、一番の大きな変化と感じています。短期留学で英語の知識はあまり変わらないけど英語を使おうとする姿勢が身につく、みたいな変化と似ているかもしれません。

(私のような)ほぼ初学の方にとっては、自分の知識と論文のレベルのギャップを見定めることができず、論文紹介で苦労することもあると思います。ただ、清水先生自身が幅広い経験をお持ちで、いろんな論文に対応してくださるので、その点大変心強いです。

抄読会における2回の論文発表とシラバスで提示されていた教科書「ディープラーニングを支える技術」を勉強することによって、機械学習に用いられている技術についての理解が深まりました。抄読会では、最終的に清水先生も論文で用いられているディープラーニングの技術について、分かりやすく解説してくださるので、初学者でも十分、参加可能だと思います。

これまで「データサイエンス」という言葉は聞いたことがあるもののその実際の中身を知らなかったため本講義を受講した。医療の研究の場においても画像処理などを用いた論文は多数投稿されており、今後の医療現場においては必ず必要な知識になるものと思われる。2週に1度担当者が自身の領域あるいは興味のある題材を取り上げその論文の内容及び前提知識を解説し清水先生よりコメントをいただくというスタイルの授業であった。学生の多くが初学者であるため、内容としては基礎的なことが多く含まれ非常にわかりやすい講義スタイルであった。眼科領域は画像診断によるところが大きく、これまでにも数多くの論文が投稿されている。しかし、データサイエンスの専門家の視点にたつと、一昔前のプログラムを使用した論文が多いなど、知識レベルの解離がみられることがわかった。本講義はデータサイエンスの詳細を学ぶというものではないが、初学者にとっては大きく全体概要を把握することができるため大変有意義なものであった。今回の講義の受講で得られた知識を基盤としてデータサイエンス領域の知識を深め、自身の領域と合わせた研究もいずれできるようになりたいと考えている。

進歩したところについて、4月と比べたら、今世の中にはAI技術により、各領域にどんな研究が進んでいることをわかりました。イメージになった知識は決定木と畳み込みなどの概念です。理解がまだ浅いですが、これから勉強した知識を利用し、自分のハプロタイプのジェノタイピングに使えばと思います。このコースは、初心者でも外国人でも、気楽に参加できるコースだと思います。各分野の先生たちが集まって議論し、「AIはそんなこともできるなー」の感想があり、自分の研究しているテーマにどう使えるかのことを、もう一度検討が可能だと思います。