メディカルAI学会2026参加報告
2026年6月6日、メディカルAI学会に参加したため、下記の通り報告する。学部生時代から会員として定期的に参加している学会であるが、昨年の参加時に「次回は口頭発表を目指す」という目標を立てていた。今年は無事にその目標を達成し、口頭発表の演者として登壇することができた。
学会全体の所感として、医療分野におけるAI(特に生成AIおよび大規模言語モデル)の実装が急速に進むなか、「人間が担うべき役割とは何か」という点についての議論が、シンポジウム等の企画で複数見られたことが印象的であった。
中でも記憶に残ったのは、ランチョンセミナー(LW)で聴講した株式会社スタージェンの鎌谷 直之先生のお話であった。このセッションではAIに対する人間の思考の特徴として「概念の整理力」というものが取り上げられていた。既存知識を組み合わせてもっともらしい仮説を生成する能力はAIにも備わっているが、異なる領域の構造的類似性を見出す「クロス思考」や、思考の枠組みそのものを再構成する「メタ思考」については、なお人間のもつ重要な役割であるということである。実際に先生がとり組まれてきたMTAPという酵素に関する研究事例を通して、いかにこの概念的な思考力が新たな知の発見に繋がるかを具体的に学ぶこともできた。自分自身も日進月歩の医療AIの研究を追う中で、この時代における人間の役割について日々考えることが多かったので、非常に興味深く拝聴した。
午後には「エキスパートと語る生成AIによる診断推論の現在地」という、臨床現場でAIの利活用を推進する立場の先生方のお話を聴講した。旭中央病院救急科坂本先生の講演では、AI診断に過度に依存することで人間のもつ「直観力」が低下していくことの危険性についての指摘が印象的であった。自分自身も肌感覚として抱いていた懸念であり、特に臨床のようなpracticalな場面ではこの問題は今後さらに顕在化していくように感じられた。自分自身もAIの活用はしていきながらも、これらの「直感力」「概念整理力」の修練には意識的に取り組んでいきたいと考えさせられた。
夕方のセッションでは自分も口頭発表の機会をいただいた。arXivに既に投稿済みのOrchestRA (Suzuki et al., arXiv, 2025)の内容を7分の制限時間の中でわかりやすく伝えるというのは想像以上に難しかったが、清水先生をはじめとする研究室のメンバーに多くの助言をいただき、納得のいく形で本番に臨むことができた。登壇した「AIエージェント」というセッションの中で自分以外の演題はほぼ臨床のテーマであったため、聴衆の関心を惹けるかは不安があったが、座長を務められた榊原記念病院の中山敦子先生をはじめ、フロアから多く質問をいただくことができ、非常に有意義な発表とすることができた。
以上メディカルAI学会の参加報告とさせていただく。来年以降も機会を捉え、継続的に研究成果を発表していきたい所存である。
