Science Tokyo AIシステム医科学分野 (清水研) では医療や生命科学と数理情報科学の融合領域の研究を行っており、その領域における最新の科学技術動向を日本語で概説しています。今回は2025年8月にNature誌に発表された「One-shot design of functional protein binders with BindCraft」(BindCraft:機能性タンパク質を一発で設計する) という論文をご紹介します。スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)のBruno E. Correia教授を中心とするスイスのチームと、アメリカ、オランダの研究機関や企業が連携した国際共同研究です。
Figure 3: アレルゲンを標的としたバインダーの設計とアレルギー反応の抑制アレルギーの原因となるタンパク質(アレルゲン)の特定部位(エピトープ)に結合してアレルギー反応を抑制するバインダーの設計とその有効性を示しています。ダニアレルゲン(Der f 7, Der f 21)を標的としたバインダーの設計モデルは、X線結晶構造解析で得られた実際の立体構造と非常によく一致しており(b, d) 、BindCraftの設計精度が高いことを証明しています。特に注目すべきは、カバノキ花粉アレルゲン(Bet v 1)を標的としたバインダーであり、これが実際に花粉症患者の血清サンプル中で、アレルギー反応の主役であるIgEとアレルゲンの結合を最大50%阻害することに成功しました(i) 。これは、設計バインダーがアレルギー治療薬となりうる可能性を示す画期的な結果です。