魅力的な治療標的タンパクが数多く報告されてきましたが、それらのほとんどは依然として薬にはなっていません。多くのタンパクには立体構造がない上、仮に立体構造が分かっていたとしても創薬に重要な部位を見つけることなどに大きな課題があるからです。

そこで私たちは、立体構造を全く使わない新しいAIアプローチを開発し、長い正式名をもじってLIGHTHOUSE (‘灯台’の意味) と命名しました。タンパクの1次配列 (アミノ酸配列) と化合物の1次配列 (SMILES表記) から、「薬とタンパクの関係になっているか」「どれほどの効果が見込まれるか」を推定することができるアプローチで、既存の他のAI手法よりも性能が向上しています。

さらに実験検証として、私たちが以前見つけた小細胞肺がん治療に重要なPPAT (解説記事はこちら) に対する阻害剤を世界で初めて同定し、またさまざまな変異種にも有効なSARS-CoV-2 (新型コロナCOVID-19を引き起こすウイルス) 感染阻害薬についてもLIGHTHOUSEの予測通り実験で見つけることができました。

データ科学を基盤とした創薬を加速させることで、より早く基礎研究の成果を患者さんに還元できるようになっていくと期待されます。

本研究成果はNHKニュース朝日放送朝日新聞読売新聞日経デジタルヘルス、その他webサイトなど多数のメディア様に大々的に取り上げられました。